A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記117 「フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展」

2007-10-20 00:18:46 | 書物
タイトル:アムステルダム国立美術館所蔵 フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展
監修:中村俊春
デザイン:梯耕治デザイン室
発行:東京新聞NHKNHKプロモーション
発行日:2007年9月26日
金額:2300円
内容:
2007年9月26日-12月17日に東京・国立新美術館において開催された<アムステルダム国立美術館所蔵 フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展>の展覧会図録。

論考
「メッセージ」ロナルト・デ・レーウ(アムステルダム国立美術館長)
「≪牛乳を注ぐ女≫」ターコ・ディビッツ(アムステルダム国立美術館絵画部長)
「家庭を描いた17世紀オランダ風俗画の中の主婦と女の使用人」中村俊春(京都大学教授)
「台所の情景と台所をめぐる情景-フェルメールの影響としてのオランダ風俗画」エステー・ディールチェス(美術史家)
「オランダ風俗画に描かれたレリーフをめぐって-ウィレム・ファン・ミーリスの「窓枠絵」とフランソワ・デュケノワのレリーフ」宮島綾子(国立新美術館研究員)

購入日:2007年10月8日
購入店:国立新美術館 Souvenir From Tokyo
購入理由:
仕事で出かけ参考資料として購入。
とは言え、フェルメールの「牛乳を注ぐ女」は見ておくべき名作だった。この1点のためだけにひとつの展覧会が組織されたようなもので、その他の作品選定、展示構成には苦心の後が窺える。正直、他の作品は付属物みたいなものでいいものは少ない。だが、前日読み終わった前田英樹の「倫理という力」という本の中で強く響いた「在るものを愛せよ」というフレーズがリフレインし、数多の風俗画を「在るもの愛する」という視点からこれらオランダ風俗画を見ていた。
そんな言葉が響きながら足を止めたのは19世紀に描かれたヘンドリック・ヨハネス・ウェイセンブルッフの≪ハーグの画家の家の地階≫(1888)という作品だった。タイトル通り家の地階を描いたものだが、その絵の雰囲気は「静物画としての室内画」なのである。壁にかかったフライパン、床に置かれた樽、鍋、壁に取り付けられた一枚の木の板の上には白い皿があり、左側の床には空き瓶らしいものが見える。画面中央後景には台所にいる女性が見えるが、あきらかに画家の関心はこの地階にある「もの」に向けられている。なにもない壁や床の汚れ、絵画的には「余白」になる部分が湿気を含んで、こちらにまでひんやりとした空気感を伝える。なんにもないように見えながら、この絵にはなにかがある。この地階に漂う気配、雰囲気こそこがこの絵画に「あるもの」なのだ。