A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記111 「TAMA VIVANT Ⅱ 2007」

2007-10-10 23:53:35 | 書物
タイトル:TAMA VIVANT Ⅱ 2007 潜在する糸
発行:多摩美術大学美術学部芸術学科構想計画設計 
   TAMA VIVANT Ⅱ 2007企画室
発行日:2007年9月20日
内容:
多摩美術大学美術学部芸術学科の海老塚耕一教授のゼミによって運営される現代美術のアニュアル展。第24回目の今回から「TAMA VIVANT Ⅱ」として内容を新たにして開催される。

東京展:2007年9月21日(金)-10月6日(土)
多摩美術大学八王子キャンパス絵画東棟ギャラリー
情報デザイン学科・芸術学科棟ギャラリー
みなとみらい展:2007年10月14日(日)-10月21日(日)
みなとみらい線みなとみらい駅地下3階コンコース

出品作家:榎倉康二、高山登、海老塚耕一、その他学生たち
テキスト
「語りえぬ予兆への眼差し」辻井潤一
「方面の上における-Xの反響-」大塚真理子
「形と記憶」高山登
「境界、端、限界、記憶の潜在」李静雅
「異界からのメッセージ-「潜在する糸」に寄せて」海老塚耕一
「制作」安西奈々、大塚真理子、小池唯徳、後閑久昌、西原明彩陽、羽根田充弘、升田慶太、三井彩紗
「あそびじゅつ」杉山哲司、勝田明子、小山晋平、下垣正裕、中原かおり、西原明彩陽、吉原隆之
「おわりに」海老塚耕一


ホームページ: TAMA VIVANT Ⅱ 2007

入手日:2007年9月29日
入手場所:多摩美術大学八王子キャンパス 情報デザイン学科・芸術学科棟ギャラリー
現代美術のアニュアル展として、24回を数えた「TAMA VIVANT」が内容を新たに開催された。かつての経験者としてどのように変わったのか興味があり、行ってみた。
まず、今回の出品者は榎倉康二、高山登、海老塚耕一の3人。他に学生の安西奈々、大塚真理子、小池唯徳、後閑久昌、西原明彩陽、羽田充弘、升田慶太、三井彩紗が出品。若手の現代美術作家を取り上げてきたこのアニュアル展において、作品発表が豊富な3人の美術家が出品し(内一人は物故作家)、他に学生作品が並ぶという不思議な展覧会となった。
「不思議」と感じた理由をまとめると2つになる。

①なぜ、「Ⅱ」になったのか展覧会を見てもよくわからない。
②なぜ、榎倉、高山、海老塚の3人の作家の作品とともに学生作品が展示されるのかその関係がよくわからない。

①の点はこれほど長く続いたアニュアル展なのだから、よく説明するべきだろう。
②の点に関しては、展覧会構成の思考の浅さだろう。
では、なぜこのような形になったのかを考えてみよう。
その理由を私なりにまとめてみた。

①アニュアル展に対して、よりフレキシブルにその時々の学生の興味・関心を反映させるため。
②若手アーティストでいい作家がいない。あるいは、美術館・ギャラリーに学生が展覧会を見に行かないので、若手アーティストを選ぶことができない。
③プロデュースだけではなく、作家として制作するアーティストを育てたい。

どれもあてはまることだろう。③をしたいなら②を満たしていないことには、どの道無理なのではあるまいか。
思えば2002年に戸谷茂雄が出品した時点で、このアニュアル展の転向は予期されていたのかもしれない。その後の北澤ビッキ、遠藤利克らのベテランの出品は、現代美術のアニュアル展としての崩壊をより確信させる内容だっただろう。作品が悪いのではない。彼らの作品が孤立して見えてしまったからだ。よいグループ展というのは互いの作品が響きあい、反響する空間を作ることではないだろうか。しかし、今回の新生TAMA VIVANTⅡからそのような響きを聞くことは残念ながらできなかった。断っておくが作品が悪いのではない。榎倉康二の写真などは、昔から好きな作品だ。だが、作品の放つその響きをかき消すように学生作品が展示されていたりすることに一抹の不安を感じるのだ。