大橋むつおのブログ

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高校演劇の基礎練習・へたくそなウィンク

2011-08-03 16:22:22 | 高校演劇基礎練習

                       へたくそなウィンク

 あるアイドルユニットの曲で『へたくそなウィンク』という内容の曲があることに気づき、PVを見てみました。ある子がウィンクできずに困っている様子が背景にあり、その間に他のメンバーは次々と出来て、その子一人が取り残され、とうとう撮影はテイク48までいってしまいます。メンバー、スタッフみんながため息ついて「こりゃ、だめだ……」の雰囲気。そこにディレクターらしきオジサンが、「これ可愛くっていいんじゃない……!」ということでOKが出て、メデタシメデタシとなる6分ほどのものでした。

 ここに、高校演劇が抱える問題が二つ隠れていることに気づきました。

 一つは、表情をつくるという演技の問題。日本人は顔の表情筋が弱く、一般的に欧米人よりも表情の変化に乏しく、ウィンクのできない人がかなりいます。以前、大阪府高等学校演劇連盟の演技の講師をやったとき「さあ、みんなでウィンクをしてみよう!」と、ぶちかましました。すぐにウィンクのできた人は一割ほどでした。

 基礎練習で鍛えなくてはならない筋肉がいくつかありますが、わたしは二つに絞り込んでいます。一つは横隔膜。笑ったり、泣いたりするときにこの半随意筋(訓練しだいで意識的に動かせる筋肉)が役にたちます。このことは、わたしの他の基礎練習のブログにあるので見て下さい。 もう一つが表情筋です。豊かな表情が作れなければ役者はつとまりません。まずウィンクしてみましょう。両目をつぶってしまうか、まるで目にゴミがはいったようにギュっと顔半分しかめっ面になってしまいませんか? 鏡を見て一時間も練習すれば、たいていの人はできるようになります。タレントさんやアイドルの子達はみんなできますから、むつかしくはありません。ただ生活習慣にウィンクがないもので笑ってしまったり、とまどってしまう自分を発見するでしょう。そう、いつもの自分とは違う感覚を体験することは大事なことです。

 話が少し横道に入りますが、これを読んでいるあなたが男なら、一度スカートを穿いてみることを勧めます。スカートは内股が直接触れあいます。女性というのは、ささいなことですが、こうやって「自分というものを感じながら生きているんだなあ」ということを実感できます。衣装や道具で、感覚が変わることを実感することは大事なことです。それと同様に、普段やらない表情をすることで自分の感覚が変わることを実感しておくことも大事です。

 ウィンクリレーをやってみましょう。メンバーを半分に分けて向かい合い、最初の人がウィンクして、前の人に伝えます。受け取った人は筋向かいの人に伝え、次々にリレーしていきます。気持ちがのったら「ウッフン」くらいカマシてもかまいません。なにか、今までの自分には無かった感覚やエモーション(感情、情緒)が感じられたら成功です。

【顔のストレッチ】顔のパーツである、眉、目、鼻、口を「ギュッ!」てな感じで、できるだけ顔の真ん中に寄せます。これ以上できないと思った瞬間、「パッ!」てな感じで、これ以上は広げられません! というぐらいに広げます。次に、顔のパーツを出来るだけ下に向けます。物真似のタレントさんがときどきこんな顔をしています。これができたら次に、顔のパーツを上に向けます。次に左へ、右へと寄せていきます。一人でやると、なかなかできません。人についてもらって点検してもらいましょう。みんなで「アハハ」と笑いながらやればいいと思います。

 さあ、次のステップです。顔のパーツを左右逆に上げ下げしてみましょう。たいていのパーツは上下逆にできますが、目だけはできません。目は、両方いっぺんに同じ方向しか向けません。ただ目を真ん中に寄せることはできますので試してください。気を付けてほしいのは、コンタクトをしている人です。目を大きく動かすとズレることがありますので、コンタクトは外してやったほうがいいでしょう。

【顔のネオンサイン】顔の表情で色を表現してみましょう。最初は、赤とか黒とか白とかはっきりした色がいいでしょう。 え、顔で色なんか表現出来ないって? そんなことはありません。「顔を真っ赤にして怒った」とか「青ざめた顔」とかいうじゃないですか。がんばってください。それができたら、点滅するように顔の色を変えてみてください。ネオンサインのようになったら成功です。

【顔で唄ってみよう】好きな曲を流して、それに表情を合わせてみてください。カラオケなんかいくと、みんな普段だったらやらない表情したりしていませんか? もちろん歌は声に出してやってもかまいません。慣れたら、歌詞のついていないクラシックなどに挑戦してみてください。むろんスキャット(意味のない言葉、ラララ~とか)つけてもかまいません。動画サイトでオペラなどの歌手が、唄いながらどれだけ色(表情)をつけているか見れば、良い勉強になります。

【応用、発展編】今までは顔だけでしたが、今度は体全体でやってみます。要領は顔と同じです。

【こ曲の演出への応用】PVでは、その子がテイク48でもできなくて、ディレクターのおじさんが「これもいいんじゃない」でメデタシメデタシになります。これは演出の重要な素養を現しています。 演出は、戯曲が要求している表現と、役者の表現、技量の釣り合いを探す仕事です。役者ができないと思ったら(むろんできるための努力は必要ですが)できる表現に置き換える、柔らかい頭が必要です。その子がウィンクができない。でも、できずに困った顔、表情がいいと、ディレクターは判断します。どうやらマスカラのCMを撮っているという設定のようです。マスカラを使ったカワイラシサが表現できればいいのです。みなさんも演出するときは、この見極めと、置き換えを頭に置いておくといいとおもいます。 わたしが以前「引きこもり」の子の役を演出したとき、友だちがやってきたので、その気配だけでソワソワするというシーンがありました。いくらやってもリアリティーが出ません。役者がヘコミかけました。そこで台本に書かれているソワソワするというト書きを無視し、その場でフリ-ズさせてみました。みごとに、友だちがやってきた緊張感が出てきました。                                    演出は柔らか頭で、稽古場の空気をポジティブにしておかなければならないというお話でした。

   大橋 むつお

『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』          青雲書房より発売中。大橋むつおの最新小説!  お申込は、最寄書店などでお取り寄せいただくか、下記の出版社に直接ご連絡いただくのが、一番早いようです。ネット通販ではアマゾンや楽天があります。青雲に直接ご注文頂ければ下記の定価でお求めいただけます。 青雲書房直接お申し込みは、定価本体1200円+税=1260円。送料無料。 送金は着荷後、同封の〒振替え用紙をご利用ください。 大橋むつお戯曲集『わたし 今日から魔女!?』  高校演劇に適した少人数戯曲集です。神奈川など関東の高校で人気があります。  60分劇5編入り 定価1365円(本体1300円+税)送料無料。 お申込の際は住所・お名前・電話番号をお忘れなく。 青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp ℡:03-6677-4351 大橋むつお戯曲集『自由の翼』戯曲5本入り 1050円(税込み)  門土社 横浜市南区宮元町3-44 ℡045-714-1471   
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