となりの宇宙人・2
『宇宙人の聖也』
聖也は、お腹に包丁が刺さったまま、ゆっくりと崩折れていった。
ドウっと地面に倒れる……寸前、地面と30度くらいの角度になったところで、マジックのように停まってしまった!
気づくと、聖也を刺したサラリーマン風も静止して、逃げ惑う通行人たちも、逃げる姿のままフリーズしている。
こんなこと、前にもあった……何気に買った本を二三ページ読んで「読んだことがある」と感じたようなデジャブ(既視感)だ。 以前にも、こうやって助けてもらったような気がする。
数秒あって、三十度に傾斜したままの聖也は、ゆっくりとお腹に刺さった包丁を抜いた。
「よいしょっと……あれ、愛華停まってないんだ……てか、その顔はデジャブなの?」
聖也は、バツが悪そうに、体を起こしながら言った。
「あの時もそうだったよね……聖也、突然現れて、変だと思ったら時間が停まって、あたし一人動けるのに驚いていた」
「愛華は特別だからな……仕方ない、あの時言ったみたいに記憶消すよ」
「え……あ、うん。でも、この通り魔のおじさん、どうするの?」
「まかしとけって、包丁取り上げて、三十秒前にもどす。時間をもどすから、愛華も三十秒間の記憶も消えるけど、ごめんな」
そう言うと、聖也は指で空中に30となぞった。
再起動のような間があって、目の前の景色が三十秒前にもどった。
バス停に、あの通り魔のサラリーマン風の姿は無かった。
――聖也、通り魔サラリーマンの存在そのものを消してしまったんだ――
愛華は、全部思い出した。
……聖也は幼馴染なんかじゃない。
ほんの七か月前、聖也は突然現れた。
『宇宙人の聖也』
聖也は、お腹に包丁が刺さったまま、ゆっくりと崩折れていった。
ドウっと地面に倒れる……寸前、地面と30度くらいの角度になったところで、マジックのように停まってしまった!
気づくと、聖也を刺したサラリーマン風も静止して、逃げ惑う通行人たちも、逃げる姿のままフリーズしている。
こんなこと、前にもあった……何気に買った本を二三ページ読んで「読んだことがある」と感じたようなデジャブ(既視感)だ。 以前にも、こうやって助けてもらったような気がする。
数秒あって、三十度に傾斜したままの聖也は、ゆっくりとお腹に刺さった包丁を抜いた。
「よいしょっと……あれ、愛華停まってないんだ……てか、その顔はデジャブなの?」
聖也は、バツが悪そうに、体を起こしながら言った。
「あの時もそうだったよね……聖也、突然現れて、変だと思ったら時間が停まって、あたし一人動けるのに驚いていた」
「愛華は特別だからな……仕方ない、あの時言ったみたいに記憶消すよ」
「え……あ、うん。でも、この通り魔のおじさん、どうするの?」
「まかしとけって、包丁取り上げて、三十秒前にもどす。時間をもどすから、愛華も三十秒間の記憶も消えるけど、ごめんな」
そう言うと、聖也は指で空中に30となぞった。
再起動のような間があって、目の前の景色が三十秒前にもどった。
バス停に、あの通り魔のサラリーマン風の姿は無かった。
――聖也、通り魔サラリーマンの存在そのものを消してしまったんだ――
愛華は、全部思い出した。
……聖也は幼馴染なんかじゃない。
ほんの七か月前、聖也は突然現れた。
「いってきまーす」
そう言って、鈴木さんの玄関から出てきたんで「あれ?」って思った。だって鈴木さんちはご夫婦だけで子どもなんていないんだもん。 親類の子だろうか……そう思って「おはよう」という聖也の言葉にも適当に合わせていた。
「ほんのこの前、いっしょに、ここ卒業したばかりなのにな」
小学校の前を通った時も、聖也はそう言った。
「え、あ……うん」
人間て、突然へんなことに出会っても、すぐに反発とかの反応はしないんだ。
それに入学式の朝って特別な状況だった。あたし自身、背伸びして仁科高校に入ったんで環境がガラリと変わって、合格発表以来新しいことばっかで、毎日が新鮮。
その日の朝、初めて袖を通した仁科の制服も、役者さんが新番組で新しい衣装着たみたいに身に合わなかった。
だから余計に、全然知らないあいつが馴れ馴れしく駅までの道を付いてきても「変だ」とは口に出せなかった。
「いっしょに仁科高校にいけなくてごめんな。おれ、いろいろ思うところがあってさ、急きょ帝都国際に……でも通う学校は変わっても幼馴染、おたがいがんばっていこうや」
そう言って、聖也は手を差出したんだよ。
「握手して、お互いの入学式にいこうや」
「あ、あの……あたし、あなたのことなんか知らないよ」
聖也、鳩が豆鉄砲を食ったような顔になったんだ。
そして時間が停まった。
「インストールできてないんだ、愛華の記憶……もう一度、おれの記憶を転送するよ」
そう言って、聖也、あたしの額に手をかざそうとしたんだよ。
「待って、あ、あ、あなた、いったい何者なのよ!?」
震える声で、やっと聞いた。
「その……宇宙人……でも、けして悪い宇宙人じゃないから、信じて」
「信じろって言われても……」
「ごめん、長いことは停めていられないんだ時間。いくよ……」
クラっときたら、時間が動き出して、聖也は幼馴染になっていた。
そして今……三十秒時間が巻き戻ったけど、あたしの記憶は消えなかった。
宇宙人の聖也と、どうつきあっていけばいいんだろう……。
そう言って、鈴木さんの玄関から出てきたんで「あれ?」って思った。だって鈴木さんちはご夫婦だけで子どもなんていないんだもん。 親類の子だろうか……そう思って「おはよう」という聖也の言葉にも適当に合わせていた。
「ほんのこの前、いっしょに、ここ卒業したばかりなのにな」
小学校の前を通った時も、聖也はそう言った。
「え、あ……うん」
人間て、突然へんなことに出会っても、すぐに反発とかの反応はしないんだ。
それに入学式の朝って特別な状況だった。あたし自身、背伸びして仁科高校に入ったんで環境がガラリと変わって、合格発表以来新しいことばっかで、毎日が新鮮。
その日の朝、初めて袖を通した仁科の制服も、役者さんが新番組で新しい衣装着たみたいに身に合わなかった。
だから余計に、全然知らないあいつが馴れ馴れしく駅までの道を付いてきても「変だ」とは口に出せなかった。
「いっしょに仁科高校にいけなくてごめんな。おれ、いろいろ思うところがあってさ、急きょ帝都国際に……でも通う学校は変わっても幼馴染、おたがいがんばっていこうや」
そう言って、聖也は手を差出したんだよ。
「握手して、お互いの入学式にいこうや」
「あ、あの……あたし、あなたのことなんか知らないよ」
聖也、鳩が豆鉄砲を食ったような顔になったんだ。
そして時間が停まった。
「インストールできてないんだ、愛華の記憶……もう一度、おれの記憶を転送するよ」
そう言って、聖也、あたしの額に手をかざそうとしたんだよ。
「待って、あ、あ、あなた、いったい何者なのよ!?」
震える声で、やっと聞いた。
「その……宇宙人……でも、けして悪い宇宙人じゃないから、信じて」
「信じろって言われても……」
「ごめん、長いことは停めていられないんだ時間。いくよ……」
クラっときたら、時間が動き出して、聖也は幼馴染になっていた。
そして今……三十秒時間が巻き戻ったけど、あたしの記憶は消えなかった。
宇宙人の聖也と、どうつきあっていけばいいんだろう……。