ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

必ず見に来る男

2008年01月24日 | 歴史の革袋
昔お世話になったところは、あるとき社員600人と契約社員が200人である。
ここに6人の取締役がいて、我々の取締りにO氏がいた。チラッと現れる男、血液C型。
配属された係のチーフは教育熱心で、日曜にもかかわらず、高額なドイツの機械を分解し構造をマスターしようと召集される。シーンとした会社に我々だけとは。
昼食は近所の食堂でいただいて、なんとビールまで取ってくださった。誰も飲まなかったのでチーフがしかたなく飲んで顔が赤い。
講義の続きをやっているところに、ふらりと現れたのがそのO氏で、まさか“と驚いたチーフは、飲んだものが逆流しどっと赤くなって、必ず見に来る男は、首をかしげつつ帰った。
それが手始めで、この人物、どこにもチラリと現れる、と気が付いた。
或る真夜中、隣りのドラム行程の歯車が壊れ、いつも威張ってこちらを煽っていたA氏が青くなって引き攣った顔で飛んできた。「どうしましょう」って、あんた。
初めての事故に、翌日の東京中の6営業所の大騒ぎが浮かんでぞっとした。
そこで思いついたのが、この必ず見に来る役員のことである。
ここは大胆に、上司を二階級飛ばし、寝ている取締役の家に電話してみた。
「はい、Oです」夜中に平静の声で、出来るところまで仕事を進めて、あとは明日手配しましょう、とのことである。
やれやれと片付けていると、なんとその必ず見に来る男は現れて、やにわに机の電話を握ると、壊れた機械を製造した会社の社長を起こし、深夜にもかかわらずガミガミとクレームを言っている。本当は、修理にすぐ来てもらいたかったのか。
翌朝現場に立ち寄ってみると、工具と部品を握って派遣された3人の男が、大勢の社員に物珍しそうに取り囲まれて、肩身を狭く恐縮しながら大型ドラムを分解している姿が有った。
しばらくのち、当方が郊外の某社にいて、屋根裏に作られた薬品溶解室で一人のんびりポリタンクのクサい薬品を撹拌しているとき、床に四角く切り取られた梯子の穴からにゅっと顔を出した男に驚いた。遠路はるばるあらわれてサッと帰ったのは、その『必ず見に来る男』であった。
D・エリントンは1956年にクラーク・テリー、ジョン・サンダース、ジョニー・ホッジス。リック・ヘンダースンなど22名のジャズ・オーケストラにボーカルの編成で、この『ドラム・イズ・ウーマン』はいっぷう変わった音楽だ。

☆敬称略で、さらに付け加えると、
偶然、先輩諸兄に誘われて、この近寄り難い役員のご自宅を訪問したことがある。
見ると、自宅と塀の間に、ゲンコツ1個の微妙な隙間を残し乗用車が納まっており、人間業ではないな、と感じた。
落ち着いた旧家に、二人の麗人がご家族としておられ「女の子は、その日が来るまでお預かりしているという存在かな」、と申されて、またいわく、「どこのどなたと縁組みになるかこればかりはね、世間のどなたとも仲よく行かねばなりません」と。
当方は、ジュージューいう焼き肉をいただきながら、まったく世間音痴のため場違いな発言をして顰蹙を買ったのであるが、同じ買うならワインの1本も持参したかったものである。
あるとき、このO氏の書く通達の字が綺麗で感心していると、あれはね、と先輩が言った。
「むかし社長に、もうちょっと字を何とかしなさい、といわれて、子供に混じって寺子屋かよいをしたらしい」
赤坂見附の某社を訪問の帰り、「御茶でも飲んでいこう」と引率のO氏が言い、7人ゾロゾロ中華飯店に入った。
1杯の中国茶と1個の肉饅頭をいただいたが、満足した気分でテーブルを良く見ると、当方の皿にだけ饅頭の底に付いている紙が、残って無い”。
他の人の皿には残っているのに、その謎はいまもって謎だ。






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