飛耳長目 「一灯照隅」「行雲流水」

「一隅を照らすもので 私はありたい」
「雲が行くが如く、水が流れる如く」

その人と知らんと欲せば、まずその友をみよ 尚友

2024年08月11日 05時00分00秒 | 教師論
若い先生を指導する立場になって、常々心配していることがある。
それは、教師として人間として揺るがぬ基盤となる考えや志が明確になっているのかということだ。
もちろん20代の教師に、明確な志をもとめることは酷なことだと思う。
今ははっきりしていなくても、なくてもいい。
しかし、自分はなにものなのか、今後どんな生き方をしていきたいのか、どんな教育をしていきたいのかということを模索、探求する姿勢をもつことは必須のことだ。
しかし、あまりに目先のことやその場だけをなんとか乗り切ることに追われすぎて、遠くを見る目を失っていないだろうか。

様々な研修会がある。
年度初めはとくに、学級経営や授業技術に関する講座がたくさんある。
そして、その講師も若手の教員がしていることが多い。
もちろん若い先生が、新採の先生や学生に自分が身につけた有効な手段や方法を伝えてあげることは大切であり、本人も勉強になるだろう。
しかし、教育公務員には研究と修養が義務付けられているように、自分を磨き、人間性を高める修養するという考えを常に忘れてはならない。
教育技術を身に着け、授業が上手になっていく。
それは本人にとっても、子どもたちにとても幸せなことだ。
教育という仕事は本来は楽しいものであり、人が人に教えるという行為が好きだから、多くの教師は教壇に立つ。
教壇に立ったときには、だれしも、学び続けるものだけが子どもたちの前に立ち続けることができるいう謙虚な気持ちをもつ。
その気持を今も持ち続けているだろうか。
いつしか、自分を鍛錬することを忘れていはいないだろうか。
人間が人間を教育するという崇高な行為には、自分の人間性を高めることも絶対に必要だということをいつしか忘れていないだろうか。

授業は上手になり、それなりに責任ある立場になっていく先生方の成長をみてきた。
しかし、何か大切なことが抜け落ちていると感じるのは私だけだろうか。
それは、人間としての礼儀、謙虚に自分を振り返る素直さ、自分を支えてくれた人々への感謝の気持ち、当たり前が当たり前ではないことに気づく繊細さ、そういったものが欠落しているように思う。

夏季休業中も前半は研修が入っていて、時間がとれないかもしれないが、来週辺りからは少し時間も取れると思う。
ぜひ、自分の収容のために時間を使いたい。

ここに一冊の本がある。
これまでにも、何度も飛耳長目で紹介した本だ。
「修身教授録」森信三
これは戦前の現大阪教育大での森信三先生の講義を筆記した記録である。
私がこの本を知ったのは、20代の頃だった。
自分がすごいと思った先生方は全員この修身教授録をよんでいらっしゃった。
自分もわけもわからないまま本屋に行き、すぐに購入したことを覚えている。
しかし、その内容を理解できたどうかというと自信がない。
なぜか、それから事あることに読み返す本になった。
そこには、教師として人間として大切にしなければならいことや人生の指針となる揺るぎない普遍的な真理が書かれているように思えたからだ。
だれでも教壇にたっている先生方なら一度は読んだことがあると思う。

もちろん教師は教育技術のあれこれを学ぶことは必要なことだし、大切なことだ。
なぜなら、教師の思いや考えを伝える術は教育技術にほかならないから。
この教育技術がない教師は、暴力的な行為をしたり、声を荒らげたりする。
教育技術をもっている教師は冷静に、本質を伝えようとする。
ハウツー本も役に立つし、自分もたくさん学んでいる。
しかし、その本を読む前にこの修身教授録は必ず読むべきだと考える。
とくに若い先生は。

修身教授録の一節。

以下引用。

したがって昔から、「その人を知らんと欲せば、まずその友を見よ」と言われているのも、大いなる真理があると思うのです。
ついてながら、人を知る標準としては、第一には、それがいかなる人を師匠としているか、ということであり、第二には、その人がいかなることをもって、自分の一生の目標としているかということであり、第三には、その人が今日までいかなる事をしてきたかということ、すなわちその人の今日までの経歴であります。
そして、第四には、その人の愛読書がいかなるものかということであり、そして最後がその人の友人いかんということであります。
大よそ以上五つの点を調べたならば、その人がいかなる人間であり、将来いかなる方向に向かって進むかということも、大体の見当はつくと言えましょう。

引用終わり。

今年の夏、4回の修身教授録を読んでいる。

saitani

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