飛耳長目 「一灯照隅」「行雲流水」「万里一空」「雲外蒼天」

「一隅を照らすもので 私はありたい」
「雲が行くが如く、水が流れる如く」

審判にみる教育的共通性

2005年04月24日 23時07分54秒 | バスケットボール
ミニバスの指導をするようになり、必然的に審判をするようになった。
ルールを知り、プレイヤーとして試合ができることと審判とはまったく別の次元だと感じる。
選手に要求される資質と審判が要求される資質は根本的にことなる。

今日も、一日笛を吹いてきた。
審判をしていて感じることは非常に的確な状況判断力を必要とする立場であるということである。
また、その適正な判断を瞬時に行う必要がある。
バスケットボールはテニスやバレーボールと違い、身体接触を伴うスポーツだけに判定には非常に難しい点がある。
完璧に笛をふいて当たり前、一つでもミスがあれば非難の声が聞こえる。
そういった状況のなかでも、だれかが引き受けなければ、ゲームはなりたたない。
重要な役割ではあるが、責任は重い。

バスケットボールの審判には三つの原則がある。
一つめは、スペースウオッチ。
ミスジャッジや見落としのほとんどの原因はこれである。
オフェンスとディフェンスが重なるよう位置に審判がいては、ブラインドが多すぎてプレーそのものがみえない。
当然そうなれば正確に判定はできない。
二人の間にあるスペースをみるような位置をとる必要がある。
人間関係をみるときにも、二人の様子がみえる位置できちんと把握することが大事だろう。

二つめは、オールウェイズ・ムービング。
審判はゲーム中、動きをとめることなくベストポジションをとる必要がある。

三つ目は、ボクシング・イン・
通常審判はリードとトレイルと呼ばれる二人で行う。
この二人でコート内にいるプレイーヤー10人を挟み込むようにして、全体を把握する必要がある。

四つ目は、ペネトレイト。
判定を下すときには一歩前に踏み出して、自信をもって判定する。

これらの原則を学級担任にあてはめると重要点がかさなってみえる。

他にも何点か、重要なポイントがある。

一番重要なことは、判定の一貫性を保ち続けること。
先入観をもってゲームに臨んではいけない。
ボールのないところのプレーに注目し、あるいはプレーを予測する。

審判の印象は、その審判の評価につながる大切なものである。
それぞれの審判の人格、性格が笛に表れる。
では、印象の悪い審判について国際審判員の方々はどのように考えているのだろう。
以下の18項目をあげている。

 1 服装にしまりがない。
 2 プレーのスピードについていけない。
 3 コートの端から端まで走ろうとしない。
 4 重箱のすみをつつくような判定をする。
 5 自分のカンだけで笛を鳴らす。
 6 一生懸命さがでていない。
 7 笛の鳴らし方が弱々しい。
 8 発声が小さく、よく聞こえない。
 9 判定に対して不服をとなえ手も、少しも注意しない。
10 テクニカル・ファウルを堂々と取り上げられない。
11 横柄な態度をとる。
12 誤った判定を下したとき、はっきりと「いまのは審判のミス」と謙虚に訂正しない。
13 「穴埋め」的な判定をする。
14 一方のコーチとだけ親しげに話をする。
15 ユーモアに欠ける。
16 問題があってもきちと報告せずにうやむやのうちに試合を再開してしまう。
17 得点が競り合ってきたとき、平静さを失ってしまう。
18 不正に対して、心から怒る「勇気」がない。

バスケットボールにおける審判と教師、似ている点が多くある。

できれば公認もとりたいが仕事とのかねあいもあり難しい。(saitani)


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神様がくれた8秒

2005年04月21日 21時26分35秒 | バスケットボール
私は子どもたちに「努力は報われないこともある」と教える。
なぜ、一件矛盾したようなことを教えるのか。
それは、努力しても思うような結果がでるとは限らないだ。
「努力は報われる」という言葉の「報われる」イコール「目標は達成できる」と考えたらどうだろう。
思うような結果でなかったときに、「努力は無駄だ。報われない。」とマイナス思考にならないだろうか。
物事は結果がすべてではない。
本気で努力すれば、目標達成よりももっと素晴らしいプレゼントが手に入る。
いろんなことを犠牲にしても、それでも前にと努力をすれば必ず、自分の成長につながる。
そんな風に考えてほしいからだ。
成功することは素晴らしいことだ。
でも、努力することはもっと素晴らしいことだと子どもたちには考えてもらいたい。

でも、子どもたちには「努力は報われる」という経験もしてもらいたい。
そんなエピソード。

2004年7月18日(日)。
中学校体育館。
中体連バスケットボール男子予選リーグ。
こちらも相手も一勝一敗同士で迎えた第3戦。
この試合に勝った方が、決勝トーナメントに進むことができる。
そんな大事な一戦だった。

両者互角に戦いで、前半終了した時点でこちらが2点のリードだった。
最終第4クウォーター、一時は9点リードしていたが相手のプレスにより徐々に追いつかれ、逆転を許してしまった。
そして、ゲームはクライマックスへ……

体育館全体が揺れるような歓声につつまれた。
体育館にいる誰もがゴールに釘付けになった。
「神様はいるんだなぁ。
 ちゃんと努力した人間を見ていて、最後に背中を押してくれる。」
そんなことを感じさせる一瞬だった。

第4ピリオド残り35秒を残しボールは相手チームがコントロールしていた。
得点は59対60、こちらの1点ビハインドである。
1点リードしている相手は24秒一杯をつかってシュートを決める作戦に出た。
もしそのシュートが決まれば万事休す。
ストーリングでパスをまわす。
ゾーンで守っているこちらはボールに行くことができない。
冷静さを失っているし、どうしていいかわからないからだ。
今まで、こんな場面で試合をしたこともないし、おそらく練習でもシミュレーションしていない。
なぜなら、試合をしても一方的な展開ばかりだったからだ。

私やベンチが叫ぶ。
「ボールにいけ!」
ようやくボールにプレッシャーをかける選手達。
チームファールは5個でファールをすれば相手にツースローが与えられ、これも終わりだ。
そんな切羽つまった状態だった。

時計は刻々と時を刻んでいく。
24秒ぎりぎりで相手チームがシュートを放つ。
そのプレイヤーは逆転を含め土壇場でスリーポイントを2本決めている選手だった。
ボールは弧をえがき、ゴールに向かう。
それまで機械のように正確にシュートを決めていたシューターのボールはリングにもふれず、ボードに直接あたり落ちた。
今回の試合にはいくつかの奇跡と思える出来事が重なった。

相手が放ったボールはスクリーンアウトしている味方選手の手の中に落ちてきた。
これが一つめの奇跡。
この時点で残り8秒。
相手チームはリバウンダーにプレッシャーをかける。
ボールをガードにパスを渡す。
マークマンは二人ついている。
ドリブルでフロントコートへボールを運ぶ。
ガードのプレースタイルはカットインを得意としている。
ときに強引と思えるほど切れ込んでいくプレーをする。
当然、シュートファールをもらうためにいつもようにドリブルカットインねらうと思った。
しかし、この時だけは中にはいかずに、右コーナースリーポイントラインの外側で待っていたシューターにパスを出した。
これが二つめの奇跡。

パスをもらったシューターに3人のディフェンスがついた。
のこり4秒。
ここは絶対にシュートである。
だれがみても99%シュートである。
彼はスリーポイントシューターで今大会も絶好調であった。
3人に囲まれボールを構えた瞬間、1人のディフェンスがシュートチェックにきた。
そのプレーヤーは前に跳んだため、バランスを崩し倒れた。
そして一瞬パスコースがあいた。
彼はシュートを打たなかった。
咄嗟に判断した。
「自分にマークが3人いるということは誰かがノーマークになっているはずだ。
 逆サイドを味方プレイヤーが走ってきているはずだ。」
この子たちには、いやというほどスリーメンの速攻練習をやらせてきた。
時には、10往復連続なんてこともあった。
それが少しは役にたったのかもしれない。
これが3つ目の奇跡。

残り1%の出来事。
彼はゴール下に矢のようなパスを出した。
「誰にパスしたんだ。」
会場の誰もの目がボールをもっていた彼に注がれていた。
逆サイドを風のような速さで走っていた選手がいたことに誰も気がついていなかった。
気がついていたのは彼1人だったかもしれない。

ゴール下に入り込んだ選手。
ボールをキャッチした彼は、ノーマークでゴール下シュート。
残り1秒。
手から離れたボールは右リングにのって一瞬止まった。
ここで試合終了のブザーが鳴った。
しかし、その音は悲鳴もにた歓声でかき消された。
次の瞬間、会場の時が止まったように静まりかえった。
ボールはリングの中へ落ちた。
審判がオフィシャル席へ駆け寄り、タイマーに何度も終了前かどうかを確認する。
「バスケットカウント!!バスケットカウント!!」
体育館に声が響いた。
地響きのような悲鳴と歓声が起こった。
選手達は万歳をしながらベンチに向かって走ってくる。
その傍らには、体育館に膝をおとし、頭を抱えてうずくまる相手の選手達がいた。
勝者と敗者とはこういうものだと思った。
勝負というのはつくづく冷酷だと思った。

選手の目には涙があふれていた。
これまで一度も見たことのない感激の涙だった。
応援に来ていた保護者も泣いていた。
「努力は報われる」そう思えた。
公式戦一度も勝利したことのないチームが2勝1敗で決勝トーナメントに進む。
そんなことを誰が予想しただろう。

ある子が言った。
「放ったボールが、リング上で止まったとき神様がきっとちょっとゴールの方へ押してくれたんだね。」
ミニバス経験もなく、ずばぬけた能力をもった選手もいない。
通常ならばリバウンドさえとれないような身長。
いわば「雑草チーム」。
ミニバスの経験がないというのは致命的な遅れである。
その遅れを3年間の猛練習で追いつき、追い越した。
その子ども達が「努力」だけでつかんだ勝利である。

最初は自分のことだけしか考えない選手ばかりだった。
ミスを相手のせいにし、ファールをされるとそれだけで集中力を切らし、ゲームにならなかった。
友達と言い争いになって練習を途中で投げ出し、帰ってしまう子もいた。
何時になっても練習を始めない子ども達にあきれて私が帰ってしまったこともあった。
その子ども達が3年間でみごとなプレーヤーに成長した。
技術的な面はもちろんのこと、心の成長、チームとしての成長が今回の結果の要因だと思う。

「スラムダンク」の湘北対山王線を思わせる激闘であった。
その試合を見せてくれた子ども達に感謝したい。
一生に一度あるかないかのナイスゲームだった。
子ども達も一生忘れない試合だと思うがこれまでずっと彼らを見守ってきた監督、コーチ、保護者の方にとっても宝となる出来事だったと思う。
人生で一番熱く燃えた中体連だった。(saitani)
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