飛耳長目 「一灯照隅」「行雲流水」

「一隅を照らすもので 私はありたい」
「雲が行くが如く、水が流れる如く」

帰納法・演繹法・アブダクション

2024年06月30日 05時00分00秒 | 授業論
論理的思考を育てることは教育現場では昔から言われていることである。
では、どうすれば論理的思考が身につくのだろうか。
そのあたりが明確になっている論文をみたことがない。
自分の勉強不足もあると思うが。

論理的思考を語るときに最低限知らなければならない考え方がある。
それは、三つの思考法だ。
帰納法、演繹法、アブダクションの三つ。

まず第一に帰納法。
帰納法とは、複数の事象をもとに1つの結論を導き出す手法である。
イギリスの哲学者であるフランシス=ベーコンが唱えた論理展開法で、経験論的思考から学問や科学を正しく認知する方法として唱えた。

よくある例文。

①ソクラテスは死んだ。
②アリストテレスも死んだ。
③織田信長も死んだ。
④だから人間は死ぬ。

この文章を帰納法に沿って分解する。

①ソクラテスは死んだ→事象1
②アリストテレスも死んだ→事象2
③織田信長も死んだ→事象3
④だから人間は死ぬ→結論

要するに、「帰納法」というと難しく考えがちだが、様々な事象を先に述べ、最後に結論を述べるものと考えればいい。

第二の方法、演繹法。
これは、「一般的に正しいとされること」+「ある事象」から、妥当と考えられる「結論」を導き出す手法。
フランスの哲学者であるルネ・デカルトが唱えた論理展開法で、人間の持つ普遍的な理性を原点とし、様々な事象を懐疑的に見ながら論理的に結論を導き出す方法として唱えた。

例文を見てみる。

①人間は皆死ぬ。
②ソクラテスは人間だ。
③よってソクラテスは死ぬ。

この文章を演繹法に沿って分解すると、以下のようになる。

①人間は皆死ぬ→大前提(普遍的事象)
②ソクラテスは人間だ→小前提(理由)
③よってソクラテスは死ぬ→結論

前の帰納法とは、論理展開の順番が逆になる。
普遍的原理に従って論理を展開するため、ある提案に対して反論したい際などにも使用する。

第三の方法は、アブダクション。
これは仮説形成とも訳されるもので「結果」から「原因」を推測し、観測事実に対して「説明」を見つける手法。
アメリカの哲学者であるチャールズ・パースが、アリストテレスの論理学を基にして提唱した論理展開法で、起きた現象に対して仮説を構築して論理的に説明していく論法として唱えた。

例文を見てみる。

①朝起きると庭の芝生が濡れていた。
②雨が降ると芝生は濡れる。
③だから昨晩は雨が降ったのだろう。

この文章をアブダクションに沿って分解する。

①朝起きると庭の芝生が濡れていた→目の前の現象
②雨が降ると芝生は濡れる→普遍的事象
③だから昨晩は雨が降ったのだろう→仮説

芝生が濡れていた理由は、雨が降ったこと以外にも「朝早くに誰かが水をまいた」「夜露で濡れた」など複数考えられる。
そのため「普遍的事象」が正しくても「仮説」に何を当てはめるのかは推論者自身の閃きにかかっている。

先の帰納法・演繹法とは異なり想像力が必要となる論法である。

低学年では難しいかもしれないが高学年であれば、論理的思考を指導する上で欠かせない三つの思考である。

saitani

   

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