三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

【2.5間寸法の人間工学〜長沼のうどん店】

2017年07月10日 05時35分05秒 | Weblog


きのうは建築家・井端明男さんの設計した札幌近郊、長沼のうどん屋さんへ。
井端さんはずっと、公共などの設計畑を歩んだ設計者。
アトリエアクで活躍されている建築家です。
今後は若い世代の工務店との交流をしたいという希望を持たれ、
一昨日、当社事務所にて打ち合わせしておりました。
公共建築中心とはいえ、数軒の住宅を本誌Replanで取材したこともあり、
ざっくばらんにお話ししておりました。
また、わたしは氏が友人の店舗を設計したケースを数軒、体験しており、
その志向性に共感する部分が多い設計者でもあります。

で、きのうはそのなかの1軒である長沼町のこのうどん屋さんへ。
カミさんははじめてだったので、体験したいという希望。
わたしはわたしで、最近鎌田紀彦先生と北海道の作り手との間で
最小限プロトタイプ住宅プラン策定が盛り上がっていることもあり、
ひとつのカタチとして、この井端さんの作品の感覚が近いのではと思っている。
わたしは数回来ていますが、2間半で細長い間取り寸法感覚が好ましい。
上の写真が手打ちうどん店「ほくほく庵」店内の様子です。
敷地はうどんの原料・小麦畑に向かって横長に眺望が開かれていて、
そちら側に向かってメインの食卓が置かれている。
窓側は配膳のための細長い通路が確保されている。
小麦畑からそのままうどんが出来上がってくるような楽しい「空間デザイン」。
で、そのテーブルへの椅子の列が確保されその背面はメインの「動線空間」。
ここにはなんの仕切りもありませんが、
店員スタッフ・お客さんが行き交ってもなんとなく収まっている。
一方、その画面左側に個室的なテーブル席が確保されている。(2枚目写真)
こっちの方は、1間四方にグリッドが区切られた空間。
ですから2畳スペースですが、ここで4〜5、6名のテーブル席が確保される。
窓はこのスペースの半分が割り当てられ、壁と開口のバランスも合理的。
こっち側への配膳は、さきほどの「メイン動線」からされて不都合はない。
っていうような空間仕分けが2.5間寸法のなかで処理されている。
ちょうど天井の仕上げが3×6合板張りで仕上げられているので、
非常にわかりやすく空間把握ができる(笑)。
お互い他人同士でも、この小さな空間で店舗が成立しているのですね。
上の写真では奥に厨房がある様子もわかると思いますが、
左右2.5間寸法があれば、作業スペースもかなり広く確保される。
要するに、1間と1間半の空間仕分けで人間工学的には不都合はない。
最小限空間合理性志向から、この2.5間寸法には魅力がある。



北海道の場合、周辺環境に魅力が多く存在することもあり、
一方に対して開放的な眺望を確保する「幅2.5間の細長い」プランは
かなり有効なのではないか。
また細長いプランは長屋や町家といった伝統的間取りプランでもあり、
日本人にはきわめて馴染みやすい寸法・空間感覚でもある。
住宅としても面白いのではないかと、妄想しておりました。
鎌田先生からは、「2.75間」という案も出ているようですが・・・。
コメント
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