きのう紹介した北海道小樽の皇太子迎賓施設の内部です。
玄関には「車寄せ」が用意されていて、
そこでクルマを降りられて、玄関に入る。
正面には奥の建屋、プライベート居室3室に至る廊下がまっすぐにある。
その廊下左右に、謁見のためと目される「広間」が2室ある。
その様子が1枚目の写真ですね。
この空間で開拓時代のこの地の貴顕紳士たちが参集し皇太子殿下をお迎えし、
オール北海道として日本国家に対して奉伺したことでしょう。
屏風には鶴が描かれている様子がわかります。
金屏風を背にして、皇太子がお言葉を賜られたのかどうか、
そういった臨場感が迫ってくる。
執拗に天井の格式表現が設計図面には記されていましたが、
格天井がごらんのような作られようで、装置されていた。
2層分に近い天井高さが作られていて、高窓が周囲に巡らされている。
簡易な旅宿ではあっても、皇太子の尊厳を示すような空間性に配慮されている。
一方で玄関の天井の作られ方は下の写真のようです。
なだらかな唐破風屋根の構造の様子はすばらしい。
この優美な曲面美を生み出すために費やされた労苦が垣間見える。
「迎賓」という意味合いをこの構造美で表現しようと、
施主、施工者は考えたに違いありませんね。
北海道が開拓から40-50年の時間を経ていかほどの進捗を見せているか、
そういった思いも重ねたに違いないと思います。
天井の仕上げはここでは2段階に分かれています。
曲線的な唐破風部分と、手前は格天井になっている。
ある心理的結界意識を表現したものに違いないと思います。
一方下の写真2枚は皇太子が休息される私的空間の方。
凜としている中にも、やすらぎを作り出そうとしている様子がうかがえる。
全面畳敷きで床の間などがしつらえられ、
障子や襖、木製引き戸建具、さらには布製カーテンなどの調度。
開放的な和風住宅のしつらいであり、
ごく少ない壁面は、塗り壁、たぶん漆喰で仕上げられている。
畳の縁もみごとな刺繍仕事が見えています。
職人としての仕事の端部で、使う人への思いを表現しているかのようです。
明治北海道の人々の、ここまでの開拓の現在状況を表現したような
そんな空間性を感じさせてくれる建築だと思いました。
かれらの思い、仕事に、はるかにリスペクトします。