写真は青森市の工務店・林工務店さんの現場でのもの。
北海道と青森は隣県だけれど、
その仕事ぶりの大きな違いに気付かされた。
というのは、北海道の住宅を取材しているときには
まずこういった「手仕事」ぶりに出会うことは少ないからです。
1枚目の写真はこれはてっきり
手の込んだ建具屋さんの仕事だと思って見ていました。
繊細な木組み格子をもった和室の引き戸なのですが、
その上、夏の涼やかな風通しのために、
葦を編んだすだれのような造作が全面に施されている。
こういった夏の暮らしへの繊細な配慮に満ちた建具文化自体、
北海道の現代住宅ではほとんど見られなくなっている。
そもそも「建具屋さん」という職種自体も既製品に置き換わっている。
そういった手仕事を見る機会も少なくなっている。
という感覚を持ったので、優秀な建具屋さんですね、と
印象をお話ししたら、いや、これは造作大工の仕事ですと言われた。
2枚目の写真の手の込んだ階段手すりも示されて、
こういった手仕事の専門職大工さんを自社スタッフで持っているという。
北海道の工務店との彼我の距離感にあらためて気付かされた次第。
こういった木造住宅のディテールでの技術力が
工務店の大きなベンチマークであるという感覚の世界。
さすがに和の伝統継承の職人集団としての工務店とは、
こうしたディテールの仕事をさりげなくこなしきる技術力が
大きな「差別化」に繋がってくるという木造文化が感じられた。
そこには、木を造作する技術という部分での誇らしい文化性がある。
そのことは大いに気付きになったのですが、
現代の生活文化の中で、こうした技術はストレートに
いまのユーザーに訴求するのだろうかという感覚に襲われた。
こうした技術力は、繊細な「数寄屋建築」的な世界では
大いに競争力を持った技術には違いがないけれど、
より切実な木造技術と言える「高断熱化」という部分とは志向性が違う。
ただ、林工務店さんは高断熱高気密技術では最先端の工務店。
その木造技術の異なる志向性のなかで努力されているのだと
改めて気付かされたと言うことなのです。
たぶん、1枚目の建具仕事などは、当然のように夏冬で
建具のしつらいを入れ替える生活文化がその基底にあるのだと思います。
わたしの子どもの頃、もう50〜60年前のことですが、北海道でも
たとえば「畳の表替え」ということが、行われてもいた、
そういったきわめて「日本在来」的な生活文化を追想させられました。
言ってみれば、数寄屋と高断熱高気密という異なる技術評価軸。
本州以南の工務店さん、作り手のみなさんには
こういった技術伝承的な部分が随伴していることに静かな驚きと、
やや距離感はありながらも、リスペクトも感じた次第です。