三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

家と屋根の有無:隈研吾審査・学生コンペ

2016年04月04日 06時03分55秒 | Weblog


昨年12月2日に、十勝管内大樹町にある、
LIXILさんの実験住宅群・メムメドゥスで昨年の学生住宅コンペ作品を
取材しましたが、そのときには実は工事が完成していなくて
屋根がかかっていない状態でした。
その上、この建物には壁もないということで、
コンペ趣旨も、その主導者である建築家・隈研吾さんの受賞理由説明も、
わたしども凡百には、想像力を抱きにくいものでした。
以下が、昨年のコンペのテーマ「趣旨」。

「厳しい寒さを楽しむ家」
北海道大樹町は冬は寒く、閉ざされます。そうした自然の寒さや煩わしさも、
建築やライフスタイルを考えることでポジティブにすることができます。
寒い中でコートを着て星空を眺めたり、サウナから極寒の湖に飛び込む
フィンランドのもてなしや、日本のお風呂など、各地には機器に頼らない
サステナブルな楽しみ方があります。
大樹町には美しい水や、美しい緑が、厳しさとともにあります。
それを人工素材を使って実現してはどうだろうか。
素材のローカリティにとらわれず、今考えられる建築を考えてください。
断熱は否定しませんが、原始時代から人類が親しんできた焚き火や、
スチームに蒸気が通る音などのわくわくした要素を取込むなど、
短期間でよいので、大樹町の環境を楽しむための施設を考えてください。

どうもこういったテーマ性も、昨年は十分に把握はできなかった。
写真の「家」がグランプリであった北欧・ノルウェイの学生の作品。
「短期間でよい」ことをよりどころにして、「厳しい寒さを楽しむ」のに、
建物から「壁も無くして」しまっていた次第。
しかし、下の写真のように「屋根もない」骨だけのコンクリートからは、
なかなか想像力も羽ばたいてくれなかった(笑)。
家に壁はないのはまだしも、屋根がないのは、果たして
「家」という概念規定の十分条件になるのかどうか?
というか、夫婦での休日の遠出のついでではあるけれど、
わたしが今回、もう一回行って見たくなったのは、
この「建物」がその後、めでたく完成した様子を見たかったのです。
「ところで屋根はかかったのだろうか、そうすると印象はどうなるか」
そんな「取材動機」であります(笑)。
やはり「屋根の有る無し」というのは、住宅にとって決定的だということを
この「前後写真」は明瞭に語ってくれていますね。
屋根の美しさで、家らしい佇まいが醸し出されていた。




上の写真2点は、左側が「リビングルーム」で、右側はエントランスと
その「中庭空間」、そして右端は「ベッドルーム」。
下の写真は、ベッドルームの裏側に位置する「バスルーム」。
習作ではなく、本当にお湯が出るように設備も設置されているようです。
審査委員長の隈研吾さんは、
「このお風呂に入ってみたい」と語っていましたが、
一昨日には、土の面に氷が張っていました(笑)。
暖房装置見立てとして、ファイアプレースと「煙突」がコンクリートで造作され
一部に火を熾したであろう痕跡が確認できましたが、
床面には燃焼痕跡がなく壁面だけだったので、
たぶん「煙道」は機能成立しなかったことが推測できました。
4カ月の時間経過後、
気になっていた「取材し残し」感をなんとか、解消できた次第です。
さてこの住宅、「居住実験」は行われるのでしょうか?






コメント
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