先日の秋田取材での1軒の家です。
人口減少が確実に進行し、また、そういうなかでも
経済社会的に活力を維持し続けながら
日本社会が存続していくためには、
賢く閉じていく、スマートシュリンクの考え方が重要だと思っています。
いまの30代くらいの年代の人にとっては、
こういう考え方は、たぶん無意識のうちに前提されているように思われます。
そのような方向ですまい方を考えていけばおのずと、
都市居住、それもなるべくコンパクトに、
という志向性が高まるという巨視的な視点が見えてくる。
人類史的に考えれば、いっとき人類は
エネルギーの爆使いの「快適感」に酔ってしまったけれど、
それはけっして持続可能性の高い選択ではなく、
よりパッシブなエネルギーを開発し、
自然体系と共存可能な生き方を選択すべきだという
いわば、自然回帰的ルネッサンス時代を、いまわれわれは生き、
そしてそれをより大きく開花させて行こうとしているのかも知れません。
必然的に、住宅もより高度に都市機能が集中した地域に
密集的に住んだ方が、エネルギー効率が高い。
しかし、一度、爆エネルギー使いによる「快適」を経験してしまった以上、
知恵を働かせて、快適を犠牲にすることなく
密集居住のいごこちの良さを開発しなければならない。
そんなイメージを常に持ち続けています。
この秋田の家では、
都市機能高度集積地域で、小さい敷地で
どうしたら、ふつうに考えられる快適環境が実現できるか、
いくつかの工夫が集約されていました。
都市環境では他者からの視線への意識が高まらざるを得ない。
けれど、採光、眺望などの快適性は犠牲にしたくない。
そういう要件に対して2階リビングの逆転プランを採用しています。
こうすることで写真のように、
3面採光の明るいのびやかな空間が可能になった。
けれど、窓の大きさ自体は、それぞれ小ぶりにして、
一番大きく開けたい南側でも腰高の壁を確保して開口しています。
2階リビングにして確保した1階スペースには
総敷地面積44坪にしては驚異的なほどの5台分の駐車スペースを作っている。
夫婦それぞれ1台分のほかに軽だと3台停められると言うこと。
そしてそのように中空にすると、
断熱的には不利に働くけれど、十分にカバーするように
2階床下、1階天井部分の断熱はたっぷりとしてある。
さらに上下階の役割分担を明確にして、
日常的な内外での行動切り替えゾーンを1階に集中させて
2階での「開放感」をより際だたせるように工夫してある。
コンパクト、という意味合いが非常に明瞭に伝わってくる。
若い世代の価値観が表現されていると実感いたしました。
知恵を働かせて、人口減少社会を乗り切る工夫を
わたしたちは、次世代に向けて作って行かなければならないと思わされますね。