三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

DNA的ノスタルジーの農家住宅

2007年11月03日 07時04分12秒 | 古民家シリーズ

写真は山形県酒田市近郊の農家住宅です。
肝煎り、というクラスと言うことですから、上級農家。
茅葺き屋根のおおらかな佇まいが、訪れるものを柔らかく迎えてくれます。

このお宅では、入り口を入ってすぐに馬の小屋がありました。
ちょうど写真左手前側、主屋から突き出すような位置。
左右には農作業のための道具の収納場所があり、
まさにいま、田や畑から帰ってきて、
馬に飼い葉をやり、水を飲ませ、農機具を片付けるというような光景が、
まざまざと脳裏に浮かんできます。
その空間を抜けると、なんとも頃合いの良い土間のなかの囲炉裏がありました。
「とりあえず」空腹を満たしたり、渇きを癒したり、
暖を取ったりする、そういう空間です。
ちょうど、この建物のオーナーの方がいらして、
囲炉裏に火を入れてくださったりして、なんとも遠赤外線的なもてなし。
その薪の燃えるさまに、こころが吸い寄せられます。
十分に先人たちが踏み固めた土間、自然の素材を工夫して使っている内装。
近隣の山から切り出してきて造作された構造の、やわらかで力強い質感。
そういった農家住宅の基本要素が、迎えてくれるような感覚を持ちます。

里山に接して建てられていて、伏流水なども豊かなようで、
池が作られてもいました。
暮らしを支える暖房の薪も、ちょっと外に行ってくれば
里山から豊富に入手することが出来る。
すべての生活要素が、過不足なくいろいろに満たされている。
いろいろな地方を訪れる機会が多いのですが、
やはりその地域を知るためには、伝統的な農家住宅を見るのが一番良い。
その地域での暮らしよう、というか生き方が
見るものに直接的に感受できます。

この時期、一年の農作業がだいたい片付いて、
冬を越す準備をしながら過ごすわけでしょうね。
いろいろな想像力がわき上がってきて、
いつも、こういう土地での暮らしもいいかなぁ、と
思い至ることが多いものです。
コメント
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