長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

突然炎のごとく……!!  総力特集 「せかいのサメ」 第9集

2013年11月16日 23時31分22秒 | 日記
ここでは、世界に400種生存していると言われるサメのうち、代表的な種を紹介します。

 めくるめくサメたちの饗宴も、ついに今回でおしまいとあいなります。ここまでおつきあいくださったみなさま、本当にありがとうございました! もしいたら!!
 おらぁもう、サメ好きとして思い残すことはねぇだ……いや、まだ生きてくけどね。


ツノザメ目(つづき オンデンザメ・ニシオンデンザメ)

オンデンザメ(隠田鮫) Somniosus pacificus
オンデンザメ科オンデンザメ属

英名 …… Pacific Sleeper Shark (パシフィック・スリーパー・シャーク)
体長 …… 3.7~7.0メートル

形態
 ツノザメ目では近似種のニシオンデンザメと並ぶ最大種であり、成熟サイズは雌雄ともに体長3.7メートルほどであると考えられる。
 姿形はニシオンデンザメとほとんど変わらず、体型は流線形で太く重量感があり、鼻先は丸くなっている。2枚の背ビレはほぼ同じ大きさで、やや後方に位置する。尻ビレはない。他のツノザメ目のサメ類と違い、身体に比べて目が小さく、鼻孔穴は大きい。口は大きく、上アゴの歯は下アゴの歯よりも長く、下アゴの歯は中央を境に左右対称のノコギリ状になっている。胸ビレや背ビレも、体長に比べてやや小さい。皮膚は鮫肌特有のザラザラ感があるが、その身体は深海魚らしくぷよぷよとしており、柔らかい。

体色
 全体的にピンクがかった黒っぽい灰色で、ヒレは暗い青色をしている。このサメはたいてい、海底の暗い茶色の泥におおわれている。

分布
 北太平洋の温帯から寒帯海域、日本列島、ベーリング海からアメリカ・カリフォルニア州、メキシコに沿った北太平洋の海域に生息する。寒い海域では海面近くにまで上がってくるが、暖かい海域では表層面に姿を現すことはない。水深200メートルの深海までに生息する。もっぱら深海の海底付近で生活し、日本の駿河湾ではしばしば確認、観察されていることでも有名である。

生態
 肉食性で、表層から大陸棚付近の海底に生息する動物を捕食する。貪欲で口に入るものは何でも食べ、魚類やイカ、タコなどの頭足類、甲殻類、海産哺乳類に加え、生物の死骸も食する。その性質と身体の大きさから、深海生態系の頂点に立つと思われ、人間以外にはほとんど天敵もいない。体内からアザラシが発見されたこともあるが、生きたものを捕食したのかは不明である。オンデンザメ属のサメ類は肉に毒素 (トリメチルアミン-N-オキシド) を有するといわれ、食べると酔っぱらったような感覚に襲われるという。

 繁殖様式は不明であるが、おそらく卵黄依存型の胎卵生である。
 体表には寄生性のプランクトンがよく付いている。同じツノザメ目のダルマザメの攻撃も受けており、ダルマザメに体表を傷つけられた跡が見られる場合もある。

人との関わり
 さまざまな漁業で混獲されるが、普通はその場で捨てられる。肉は食用には適さないが、肝臓は肝油の原料となる。しかし、深海性であるために漁獲高は低く、大型種とはいえ、日本では産業的にはそれほど重要な種ではない。

 人間の泳げない深海性であるために直接人と関わることはなく、大きさの割には筋肉構造から泳ぐ速度が遅いことなどから、人を襲うサメではない。身体の大きさとその食性から、潜在的に危険な可能性もあるが、浅い海に引き揚げられた際には体の重みと身体組織の関係から、ほとんど暴れることもなく漁獲される。


ニシオンデンザメ(西隠田鮫) Somuniosus microcephalus
オンデンザメ科オンデンザメ属

英名 …… Greenland Shark (グリーンランド・シャーク)
体長 …… 6.0~7.3メートル

体型
 ツノザメ目の最大種である。近縁種のオンデンザメと同様に深海性だが、エサを求めて浅い海に上がってくることもある。
 上アゴの歯が突き出ており、下アゴの歯はやや小さくなっている。短く丸い頭部は前方に突き出る。体型はずんぐりとしたシリンダー状で、横幅がある。
 身体の大きさに比べて、各ヒレと目は小さい。目には寄生性のプランクトンが付着していることがよくある。

体色
 全身が黒っぽい灰色で統一されている。

分布
 英名が示すように、グリーンランド近辺の北極海域に生息する唯一のサメ類と思われる。しかも水深1200メートルまでの深海に生息しているため、その遊泳する姿はほとんど記録されていない。緯度が北の低水温の海水であれば、海面付近に現れることもある。北極海の他には、北大西洋の全域と沿岸沖の大陸棚地帯に生息している。
 通常は、主に北極海の水深540メートルの海域に多く生息するが、水深2100メートルという非常に深い海域でも発見されたことがある。

生態
 ジンベエザメ(第3集参照)、ウバザメ(第2集参照)に次ぎ、ホホジロザメ(第1集参照)とほぼ同じ大きさを誇るサメ類である。20世紀初頭には、ニシオンデンザメは商業目的で捕獲されていた。深海にすむニシオンデンザメが自然界で映像に撮影されたり、潜水艇乗組員によって目撃されることはめったにない。これまでに撮影された人間とニシオンデンザメの遭遇はすべて、エサに引き寄せられてくるか、海面まで浮上したときのみだった。

 ニシオンデンザメについては、やる気なさそうに泳ぎ回ったり、その割にはかなり広範囲な食性を持つこと以外はほとんど知られていない。カイアシ類として知られる小さな甲殻プランクトン類がニシオンデンザメの目の部分に付着しており、これによっておそらくサメは目が見えないが、この甲殻類の発光によって獲物をおびき寄せていると考えられる。

 低温の海域に生息しているために筋肉の収縮速度が遅く、泳ぐ速さは時速1キロメートル程度と、サメ類に限らず大型魚類の中でも極端に遅いため、「世界一のろい魚」と呼ばれている。一方、その食性は非常に多彩で、サケ、マスなどの魚類やイカ、海底に棲む動物を主に捕食するが、大型の個体になると、アザラシやクジラも襲うようになることが胃の内容物から判明している。動きが遅いため、積極的に獲物を追うのではなく、待ち伏せや不意討ちといった手段を使うと見られる。
 貪欲で、エサになりそうなものであれば、何でも口に入れるようで、胃の中からトナカイの全身やホッキョクグマの骨が見つかったこともある。しかし、死亡して漂流していた個体を食べた可能性も指摘される。人間の長靴や、人間そのものの遺体まで胃の中から発見された例もある。

 この鈍重なサメがいったいどうやって、速く泳ぐことのできる魚類やイカを食べることができるのかはよくわかっていない。一部の研究者は、このサメが瞬間的に猛スピードでダッシュすることができるのではないかという仮説を立てている。またこのサメは、魚を吸い込むこともできるという。

人間との関わり
 身体が大きく、その貪欲な食性のため潜在的に危険なサメとされているが、人間の泳げない低温の海水域に分布しているので、直接害が及ぶことは無いとされる。

 本種は肉に毒 (トリメチルアミン-N-オキシド) があり、焼いて毒抜きしないと食べられないと言われるが、肝臓は肝油などに利用され、アイスランドでは肉を熟成発酵させた伝統食品「ハウカットル」(ウバザメの肉も利用される)の素材にもなるため、北極海近辺では年間およそ3万尾が捕獲されている。
 北方系原住民の人々は古くから本種を利用しており、疑似餌を丈夫なロープにくくりつけ、氷の下に巻き、そこで誘い出された本種を捕獲していた。



ネコザメ目(ネコザメ・シマネコザメ・ポートジャクソンネコザメ)
 「生きた化石」ともいうべき種族で、古代のサメの特徴をよく残している。それが特に強く出ているのは歯である。ネコザメ目の学名「 Heterodontiformes 」の「 heterodon 」とは「異なった歯」の意味で、固い殻をもった貝やウニを噛みつぶすために丸く発達していて、何列にも並んでいる。この種族はすべて2枚ある背ビレの前方にトゲを持っていて、これによって捕食者から身を守る。また、ネコザメの仲間は水族館での飼育が容易である。


ネコザメ(猫鮫) Heterodontus japonicus
ネコザメ科ネコザメ属

別名 …… サザエワリ
英名 …… Japanese Bullhead Shark (ジャパニーズ・ブルヘッド・シャーク)
体長 …… 0.7~1.2メートル

体型
 ほぼ円筒形の体つきで、目の下と後ろに排水口がある。2枚の背ビレには前方に鋭いトゲがあり、これは特に幼魚が大型魚の捕食から逃れるために役立っている。尻ビレを持つ。風変わりな頭部はずんぐりしていて尖っておらず、平べったい口と、目の上の突起が特徴的である。この突起を和名ではネコの耳に、英名ではウシの角に見立てている。歯は他のネコザメ属と同様に前歯がトゲ状で、奥歯が臼歯状である。循鱗(鮫肌)は大きく頑丈である。

体色
 明るい茶色で、エッジが不明瞭なおよそ11~14本の濃い茶色の横帯が全身に入っている。

分布
 太平洋の北西に棲む。英名「 Japanese 」のとおりに、日本の北海道以南の沿岸に最も多く生息するネコザメ科の代表種である。日本には他に同属のシマネコザメが分布するが、こちらは比較的珍しい。その他にも朝鮮半島や東シナ海の沿岸海域に分布する。

生態
 大陸棚で頻繁に見かける種で、海表面から水深40メートルまでの浅い海域に生息する。特に岩場や海中林(海藻類の群生地帯)のある海底付近を好む。さらに本種は、遊泳力は弱いが、胸ビレを使って海底を歩くように移動することもできる。
 主に硬い殻を持つサザエなどの貝類やウニ、甲殻類などを好んで食べる。臼歯状の奥歯で殻を噛み砕いて食べるため、別名「サザエワリ(栄螺割り)」とも呼ばれる。日中は海藻や岩の陰に隠れ、夜間に餌を求めて動き回る夜行性である。

 卵生で、3周ほどのらせんにおおわれた殻を持つ卵を産みつける。卵は短い角状の糸が頂点から伸びており、岩の隙間や海藻の間に産み落とされた卵を固定する役割がある。日本では3~9月に産卵が行われ(春が最盛期)、メスはたいてい1回に2個ほどの卵を1ヶ所に産みつけ、1シーズンに合計で6~12個産卵する。幼魚は卵の中で約1年かけて成長し、体長18センチメートルくらいになると孵化する。体長70センチメートルほどで成熟する。性格はおとなしい。

人との関わり
 刺し網などで混獲されるが、水産上は重要でない。日本の和歌山県などでは食べられる。
 日本では水族館でよく飼育、展示される定番種である。丈夫で、10年以上生きることも多い。一般家庭での水槽飼育も可能で、小さな個体は観賞用に販売されることもある。
 人間には危害を加えない。


シマネコザメ(縞猫鮫) Heterodontus zebra
ネコザメ科ネコザメ属

英名 …… Zebra bullhead shark (ゼブラ・ブルヘッド・シャーク)
体長 …… 65~125センチメートル

分布
 西太平洋、日本から朝鮮半島、中国、東南アジア、オーストラリア北西部までの温暖な沿岸海域に分布する。水深50メートルより浅い海域で見られるが、西オーストラリアでは水深150~200メートルで確認されている。日本では和歌山県以南に分布しているが、比較的珍しい。

形態
 2枚の背ビレの前方にトゲがあり、尻ビレをもつ。目の上の隆起はあまり顕著でない。幼魚では背ビレは高いが、成長すると低くなる。尾ビレは上葉、下葉ともにやや長く伸びる。

体色
 体表面には独特な縞模様があり、白色地に22~36本の暗い色の横帯が入ることで、他のネコザメ類と区別できる。

生態
 分布域では普通に見られる底生性のサメだが、生態に関する情報は極めて乏しい。
 卵生。幼体は少なくとも体長15センチメートルで孵化する。成熟サイズは体長65~85センチメートル。

人との関わり
 水産上重要ではなく、混獲される程度である。個体数は少ないが、水族館や博物館などで飼育、展示されている。


ポートジャクソンネコザメ Heterodontus portusjacksoni
ネコザメ科ネコザメ属

英名 …… Port Jackson Shark (ポートジャクソン・シャーク)、Oystercrusher (オイスタークラッシャー)
体長 …… 0.5~1.7メートル

形態
 ネコザメ科に共通した特徴として、背ビレ前方のトゲ、目の上の隆起、尻ビレを持つことが挙げられる。
 前歯は尖ってトゲ状であり、奥歯は臼歯状で物を噛み砕くために使われる。体表は大きな循鱗(鮫肌)に覆われ、非常に荒く頑丈である。

体型
 シリンダー状の体つきで、目の下と後ろに排水口がある。目の上の突起は低く、目の後ろで突然終わらない。

体色
 時には白くさえ見えるほどの明るい灰色か茶色に、頭から頬にかけて垂直に濃い色の縞が入っている。胴体にも独特な鞍状の濃い色の縞が第1背ビレの開始部分と腹ビレと胸ビレからはじまり、身体の側面と背中でつながる。水平な黒い線が尾ビレから第1背ビレの付け根までのびる。

分布
 太平洋の南西、特にオーストラリアとニュージーランドの沿岸海域にのみ生息している。その名前は、本種がよく見られるオーストラリアの湾「 Port Jackson 」に由来する。

生態
 大陸棚の、潮間帯から水深280メートルまでの海底で生活し、夜行性である。底生の無脊椎動物を捕食し、特にウニを好むが、貝類、甲殻類、小型の魚類も捕食する。アゴは頑丈で、「オイスタークラッシャー(牡蠣割り)」の異名をとる。休息場所として岩穴や砂底、もしくは平たいリーフの開けた水路を好む。1ヶ所に集まってくることもあり、16尾ほどの群れも発見されている。昼間はあまり活発でなく、岩の隙間などに身を潜めて休んでいることが多い。

 卵生である。卵は4~5周のらせん状の殻に覆われ、短い角状の糸が頂点からのびて、岩の割れ目などに産みつけられた卵を固定する働きをしている。産卵期は毎年の8~9月が最盛期で、メスは1回に2個ずつ卵を産み、1シーズンに合計10~16個の卵を自分の隠れ場所に産みつける。幼魚は産卵後9~12ヶ月で体長18~23センチメートル程度になってから孵化する。オスは体長50~80センチメートル・8~10歳、メスは70~90センチメートル・11~14歳で成熟する。

人との関わり
 水産上は重要ではなく、混獲される程度で食用にはならない。スポーツ・フィッシングの対象になることもほとんどない。
 ただし、観賞用としては需要があり、世界の水族館や個人の間で取引される。丈夫でおとなしく、飼育に向いている人気者である。
 人に危害を加えることはないが、刺激すると反撃して咬まれる危険はある。



カグラザメ目(カグラザメ・シロカグラ・エビスザメ・エドアブラザメ・ラブカ)
 エラが他のサメ類の5対と違って6~7対あるため、古代のサメ類からほとんど変わっていないといわれている種族である。この仲間には最近つとに有名なラブカも属する。主に深海性で、口の位置が頭部の先端に寄っている。


カグラザメ Hexanchus griseus
カグラザメ科カグラザメ属

英名 …… Bluntnose Sixgill Shark (ブルントノーズ・シックスギル・シャーク)
体長 …… 4~6メートル

体型
 幅が広く前方に大きく突き出た頭部と、6対のエラを持つ大型のサメである。サメ類のエラはほとんどが5対であり、他に6対のエラを持つのは、わずかに同じ科のシロカグラとラブカと、ノコギリザメ目ノコギリザメ科のシックスギルソウシャークのみである。
 目は小さく、緑色に発光するが、死ぬとすぐに白くなる。背ビレは1枚しかなく、位置は尾ビレのほうに後退する。尾ビレは長い。歯の形状は非常に特徴的で、上アゴの歯は牙状だが、下アゴの12本の歯はノコギリ状に並び、幅が広く内側に傾いている。

体色
 背中は暗い灰色か茶色、暗い黄色がかっていることもある。たいていは側面に沿って明るい線が入っている。腹のほうはくすんだ白色。ヒレには薄い白の縁取りがある。

分布
 世界中の熱帯、亜熱帯、温帯の大陸棚付近の深海に広く分布し、水深2000メートルまでの深海に生息する。

生態
 餌の種類は豊富で、サメやエイも含むあらゆる魚類、甲殻類、頭足類(イカ、タコ)、貝類、海産哺乳類などを捕食する。ゆっくりと泳ぎ、昼間はたいてい海底で休んでいるが、夜になると狩りをおこなうために深海から上昇してくる。
 胎卵生で、子宮内で卵を孵化させる。体長60~75センチメートルほどの幼体を1回に22~108尾も出産する。若い個体は海岸寄りに生息する傾向があり、体長4メートルで成熟する。

人との関わり
 漁業やスポーツ・フィッシングの対象になる。水産物としては肉や肝油が利用される。
 普段は深海に生息しているため人間と遭遇する確率は低く、人を襲うこともほとんどない。しかし、強いアゴと鋭い歯を持っているので、釣り上げたときなどは注意が必要である。
 個体数が少なく、絶滅が心配されている。


シロカグラ(白神楽) Hexanchus nakamurai
カグラザメ科カグラザメ属

英名 …… Bigeyed sixgill shark (ビッグアイド・シックスギル・シャーク)
体長 …… 1.2~1.8メートル

分布
 ほぼ全世界の温暖な海域に分布すると考えられるが、限定的にしか確認されていない。日本列島では中部以南で見られる。大陸斜面に沿って水深600メートルまでの深海に生息する。海底付近にいることがほとんどだが、まれに海表面まで移動してくることもある。

形態
 体型は細身の紡錘型である。鼻先は尖っており、目は大きく緑色に光を反射する。6対のエラを備え、最前列のエラが最も大きく、後ろのエラにいくほど小さい。背ビレは1枚のみで、身体の後方に位置する。尾ビレは上葉が長く、欠けがある。上アゴの歯はカギ状に曲がり、鋭い。下アゴの歯は、12本の歯がノコギリ状に並ぶ櫛型である。
 同属のカグラザメと非常によく似ており、しばしば混同される。カグラザメの方が体長が大きくなるが、外見で区別することは難しい。

体色
 背側は明るい灰色から褐色で、腹側は白色である。

生態
 稀種であるため、生態に関しては不明な点が多い。小型から中型の硬骨魚類や甲殻類を捕食する。
 胎卵生である。1回に産む個体数は13~26尾で、出産されるときの幼体の体長はおよそ40センチメートルほどである。オスは体長1.4~1.8メートル、メスは体長1.2~1.6メートルで成熟する。

人との関わり
 延縄(はえなわ)漁、トロール漁などでまれに混獲されるが、漁業の対象にはならない。


エビスザメ(恵比寿鮫) Notorynchus cepedianus
カグラザメ科エビスザメ属(1属1種)

英名 …… Broadnose sevengill shark (ブロードノーズ・セブンギル・シャーク)
体長 …… 1.5~3.0メートル

 現存するほとんどのサメ類が5対のエラを持つのに対して、エビスザメは7対のエラを持つ。他に7対のエラのあるサメ類は、同じカグラザメ科のエドアブラザメが知られているのみである。
 なお、日本の関東地方の方言でジンベエザメ(第3集参照)を「エビスザメ」と呼ぶことがあるが、関連はない。

生態
 世界中の温帯域に生息する。水深150メートルまでの表層海域を泳ぎ、浅い湾やサンゴ礁の周辺で生活する。
 オスは体長1.5メートル、メスは体長2.2メートルで成熟する。体型は流線型に近い円筒形である。体色は背側が暗い褐色から黒色または灰色で、腹側は白い。全身に多数の黒色または白色の斑点が見られる。背ビレは1枚のみで、身体の後方に位置する。尻ビレがある。化石で発掘される先史時代のサメ類と形態的によく似ており、かなり古いタイプのサメ類であると考えられている。

 エビスザメは群れで狩りをすることが知られており、仲間と共同でアザラシやイルカ、他のサメ類などを追い詰めて捕食する。これに関しては、古代のサメ類も同じ手法で狩りをしていたと考えられている。


エドアブラザメ(江戸油鮫) Heptranshias perlo
カグラザメ科エドアブラザメ属(1属1種)

英名 …… Sharpnose sevengill shark (シャープノーズ・セブンギル・シャーク)
体長 …… 0.8~1.4メートル

 同じカグラザメ科のエビスザメとともに英名「 Sevengill shark 」と呼ばれる、7対のエラを持つサメである。

分布
 太平洋の北東部を除いた、ほぼ全世界の暖海域に分布する。比較的珍しい種で、水深1000メートルまでの深海に生息する。普段は海底付近で生活するが、まれに表層面に出現することもある。

形態
 体型は細身の紡錘型である。エラは7対あり、現存するサメ類の中では最も多い。最前列のエラが最も大きく、後方にいくにつれて小さくなる。背ビレは1枚で、身体の後方に位置する。尾ビレは上葉が長く、欠けがある。目は大きく、光をよく反射して緑色に発光する。上アゴの歯の前歯は細長いカギ状で、内側に向いている。下アゴの歯は櫛状の特徴的な形状で、12本がノコギリの歯のように並んでいる。

体色
 背側は濃い灰色から明るい褐色で、腹側は白色である。幼体では背ビレと尾ビレの先端に黒色斑が見られるが、成長すると消えていく。

生態
 頭足類(イカ、タコ)、甲殻類、硬骨魚類、サメやエイなどを幅広く捕食する。
 胎盤を形成せず、子宮内で卵を孵化させる形の胎卵生である。1回に体長25センチメートル程度の幼魚を9~20尾産む。成熟サイズは、オスが体長80センチメートル、メスが体長90~100センチメートルである。

人との関わり
 底曵き網や底延縄(そこはえなわ)漁などで混獲されるが、漁業の対象にはならない。人間には無害だが、網にかかった個体を引き揚げる際に咬まれることもある。肉には弱い毒性がある。


ラブカ(羅鱶) Chlamydoselachus anguineus
ラブカ科ラブカ属

別名   …… ウナギザメ
英名   …… Frilled Shark (フリルド・シャーク)、Lizard Shark (トカゲザメ)、Scaffold Shark (首吊りザメ)、Silk Shark (シルク・シャーク)
体長   …… 1.0~2.0メートル
生息年代 …… ジュラ紀後期(約1億5000万年前)から現在

分類
 多尖頭の歯、目の後方で頭骨と直接つながっているアゴ(両接型)、椎骨が不明瞭で脊索のような脊柱になっていることから、昔の専門家は本種を絶滅したサメ・エイ類の祖先の生き残りだと考えていた。19世紀には、古生代のデボン紀(約4億1600万年~3億5920万年前)に捕食者として繁栄していたクラドセラケ(サメ類の祖先)と同じグループであるという学説と、中生代(約2億5000万年~6500万年前 恐竜時代)に栄えたヒボドゥス目に属しているという学説の2説が提唱されていた。
 その一方で、最近の研究では、頭部の骨格構造にツノザメ類(第8集参照)に近い部分があるとも指摘されているが、本種の歯の形状がクラドセラケと同じであることや、エラが6対あるという特徴の解明まではなされていない。

 骨格や筋肉の特徴には、明らかに現存する他のサメ類に共通するものがあり、特にカグラザメと類似する。それでも、本種はサメ類の中で最も古い系統のひとつに属し、白亜紀後期(約9500万年前)やジュラ紀後期(約1億5000万年前)の化石も発見されている。 原始的なサメの特徴をよく残していることから「生きている化石」と呼ばれている。

形態
 細長いウナギのような円筒型で、頭部は幅広くて平たく、先端は短く丸い。目は比較的大きく楕円形で、瞬膜はない。非常に大きい口は、通常のサメ類とは異なり身体の前方に開く。歯列は隙間を開けて並び、上アゴで19~28列、下アゴで21~29列ある。歯は合計で300本ほどで、個々は小さく、細い3つの尖頭を持ち、先は鋭くとがる。このように細かく並んだ針状の歯は、イカなどの柔らかい獲物を引っ掛けるのに適している。
 エラはとても大きく6対でヒダ状になっており、特に最前列のエラはノドでつながって胴体をほとんど一周しているため、まるで首にフリルか襟を巻いているように見える。そのため英名で「フリルド・シャーク」と呼ばれる。
 胸ビレは短くて丸い。背ビレは1枚でこれも短くて丸く、身体の後方の尻ビレの上部に位置する。腹ビレと尻ビレは大きく、幅広くて丸く、これも身体の後方に位置する。尾ビレは非常に長く、下葉や欠けはない。腹部はオスよりメスの方が長く、腹ビレがより後方にある。皮歯(鮫肌)は小さく、タガネ型である。尾ビレ上部の皮歯は大きくて鋭い。

体色
 全体的に黒っぽい茶色から灰色である。

分布
 稀種ではあるが分布域は広く、大西洋や太平洋の全域から散発的に記録がある。東大西洋ではノルウェー北部、スコットランド北部、アイルランド西部、フランスからモロッコ、マデイラ諸島、アフリカ大陸北西部のモーリタニア。中央大西洋ではアゾレス諸島からブラジル南部までの大西洋中央海嶺(かいれい)上、西アフリカ沖。西大西洋ではアメリカ北東部のニューイングランド地方から南米大陸北東部のスリナムまで。西太平洋では、日本の本州南東、台湾、オーストラリア南東部、ニュージーランド。中央・東太平洋ではハワイ、アメリカ・カリフォルニア州・チリ北部で確認されている。日本では相模湾や駿河湾で比較的多く見られる。

 大陸棚の外縁と大陸斜面の上~中部に生息し、海水が深層から表層に湧き上がる湧昇流(ゆうしょうりゅう)などの、栄養分が豊富で生産力の高い海域を好むようである。最深で水深1570メートルの地点で見つかっているが、通常は水深120~1000メートルの深海の海底で生活している。駿河湾では水深50~200メートルでよく見られるが、8~11月は水深100メートル以浅の水温が摂氏15℃を超えるため、深場に移動する。基本的に海底付近で生活するが、おそらく日周鉛直移動を行い、夜間には表層面で摂餌すると考えられる。大きさや繁殖状況に応じて棲み分けが行われている。

生態
 個体数が少なく、深海に生息する種であるために観察が難しく、詳しい生態はほとんどわかっていない。
 普段の動きは緩慢で、ウナギのように身体を波打たせて遊泳する。遊泳速度は遅い。
 骨格の石灰化が弱く、低密度の脂質が詰まった大きな肝臓を持つ。これは体内の密度を減らし、水中に停止するための適応である。水中で水圧や水流の変化を感じとるための器官「側線」が開いており、受容器の細胞が外部に露出している数少ないサメ類のひとつである。これによって、獲物の細かい動きを捉えることができると考えられる。他の種のサメに襲われたものと見られる、尾ビレの先端が欠損した個体がよく見つかる。

 アゴは柔軟で非常に大きく開けることができ、体長の半分を超える獲物も飲み込むことができる。だが、アゴの長さと関節から見れば、他のサメ類に比べあまり強く噛み付くことはできないようである。これまでのほとんどの捕獲個体には胃に内容物がなく、消化速度が速いか摂餌間隔が長いと考えられる。自分よりも小型なサメ類や硬骨魚類、頭足類(イカ、タコ)などを捕食する。駿河湾では餌の60% がイカであり、動きの遅い種だけでなく、大型で高速遊泳する種も捕食していた。
 泳ぎの遅い本種がどのように高速遊泳するイカを捕えるのかは不明であるが、傷ついた、または繁殖後で弱った個体を狙っている可能性はある。身体の後方に各ヒレが集中した体型は瞬間的な突進に適しており、ヘビのように身体をくねらせて獲物に食らいつくことができる。さらに、エラを閉じることで口の中の水圧を減らし、獲物を吸い込んでいるとも考えられる。鋭く小さい、内側に向いた歯はアゴを突き出すことで外側に展開し、獲物を引っ掛けやすくなる。観察例からは口を開けたまま泳ぐことが分かっているが、これは白い歯と黒い口内の色調の対比によって、疑似餌として機能するのではないかという仮説もある。

 胎盤を形成しない胎卵生で、胎児は卵黄を消費して成長する。
 成体のメスは2つの卵巣、右側の1つの子宮が機能する。深海は季節の影響が少ないため、繁殖期はない。おそらくは繁殖のために、大西洋中央の海山に15匹のオスと19匹のメスが集まったことが記録されている。1回に産む個体数は2~15尾だが、平均6尾である。
 他のあらゆる脊椎動物よりも長い「3年半」の妊娠期間を持つ。出生時の幼体は体長40~60センチメートルである。オスは体長1.0~1.2メートル、メスは体長1.4~1.5メートルで性成熟する。

人との関わり
 深海に生息するため生体と人間が遭遇することは少なく、人に危害を加えることはないが、釣り上げたラブカにさわろうとすると身体をくねらせて噛みついてくるので、鋭い歯でケガをすることがあるため注意が必要である。2004年8月に、アメリカの遠隔操作無人探査機によって、史上初めて深海で活動する生体の姿が観察された。その長い身体のために、多くの専門家は、昔から世界的に伝わる大海蛇(シーサーペント)の目撃報告の一部は本種によって説明できると考えている。本種そのものはそれほど大きくないが、より大型の化石種が生き残っていると信じている未確認動物学者もいる。

 まれに底曵き網や底延縄で混獲されるが、漁業の対象にはならない。駿河湾ではタイ・ムツなどの刺網、サクラエビ漁の網にかかることがあるが、漁網を傷つけるため漁師からは嫌われる。まれに肉や魚粉が流通することがあり、個体数が少なく繁殖力が低い中での生息域での商業漁業の拡大により、IUCN(国際自然保護連合)は保全状況を「準絶滅危惧」としている。

 日本の駿河湾では以前から地元の漁網にかかることがあったが、その容貌から縁起が悪いとそのまま船上で捨てられているらしいと東海大学海洋学部の研究者たちが聞きつけ、捕まえたものを捨てずに持ち帰ってもらうように依頼をしたことで、ようやく標本が集まるようになったという。

展示
 生体の展示は非常にまれで、あったとしてもごく短期間である。固定標本の展示は各地の水族館や博物館で行われている。



 はいっ、そんなわけでして、いちばん古いサメなのに、21世紀の今、話題的にいちばんホットだという「若いもんにはまだまだ負けらんねぇ!!」スピリット全開なラブカさんの大トリをもちまして、『長岡京エイリアン』版の「せかいサメ図鑑」は一巻のおしまいでございます。項目を設けられなかった他のサメのみなさまがた、力不足で大変にすみませんでした! あっ、いや、噛まないでください!!

 正式な「現存するサメ類」はこれで終わりなんですが、次回は「拾遺集」といった感じで、これらにもれた「惜しいみなさん」をひろってみたり、サメ好きなみなさんならば必ず一度は通り抜けるであろう「混乱」についてまとめてみたおまけなどをひっつけて本当の完結にしたいと思います。


「最終回じゃないぞよ。もうちっとだけ続くんじゃ。」
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