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2013年11月08日 23時23分41秒 | すきな小説
『閉鎖都市 巴里』(1999~2000年 メディアワークス電撃文庫)

 『閉鎖都市 巴里』(へいさとしパリ)は、川上稔の「都市シリーズ」の第5作。前作・前々作に続く上下2巻組み大長編。

 異世界のフランスを舞台にした小説。シリーズ第2作『エアリアルシティ』以来ふたたび、物語の舞台を現代でない過去(厳密には過去が現在にいたるまで繰り返され続ける世界)に移した内容となっている。日記や手紙などで物語が綴られていくという特殊な形式をとっている。
 実際には、発売される以前から、季刊ライトノベル雑誌『電撃 hp 』(2001年からは隔月刊)でシリーズ作『創雅都市 S.F 』が連載されていたが、読者の混乱を避ける意味もあってか、後発の本作が第5作とされている。

あらすじ
 全てが文字情報によってのみ存在する都市、パリ。
 しかしパリは第二次世界大戦中、ドイツ軍の投下した「言詞爆弾」によって時間の連環を起こし、1944年の1年間のみを繰り返す「閉鎖都市」となっていた。
 そして時は流れて1998年現代。既に54回の回帰を行ったパリに、ひとりの少女が訪れる。
 少女の名はベレッタ=マクワイルド。優秀な重騎師である彼女は、幻の重騎開発計画「 A計画」と、それに関わったと思われる祖父ジャックの謎を追ってパリへ留学していた。そこでベレッタは、不思議な自動人形ロゼッタと出会う。
 ロゼッタと付き合い A計画を調べていくうちに、ベレッタはパリを閉鎖から解放する方策を模索していく。

歴史
 元来、パリは「あらゆるものが文字情報によってのみ存在する」という特性を持つ都市だった。 住人達はそれを活かし、最も正確で安全に己の情報を作り、秘め、そして発信するために数百年前から都市全体に結界を張っており、それによって「閉鎖都市」と呼ばれていた。
 しかし第二次世界大戦中の1944年8月6日午前5時32分18秒、ドイツ軍によって占領されたパリで新たな閉鎖が発動する。ドイツ軍の支配を破るために連合国軍が仕掛けた解放戦の中、ドイツ軍の言詞爆弾が炸裂したのである。これによって時空間の遺伝詞が変質し、パリは「市外の時間を無視して1943年の8月から1944年の8月までの1年間を繰り返す」という、第二の「閉鎖」を起こした。
 1963年、電詞都市 DT(デトロイト)の遺伝詞解析技術によって、市外との出入りが可能となる。しかし、持ち込める物品は「1944年当時に存在していたもの」に限られ、しかも一度持ち込まれた物品は都市の免疫機構によって二度と持ち込むことはできない。それは人間の場合も同様であり、一人の人間がパリに入ることができるのは生涯に一度だけである。この免疫機構は年々強まっており、次第に持ち込める物品は限られ、研究予測によれば2005年には、パリはあらゆるものが入り込めない完全な閉鎖都市になるとされている。

特性
 パリ本来の特性は、「あらゆるものが文字情報によってのみ存在する」ということである。人間や物品を問わず、万物が三次元に物体として存在するのではなく、文字よる単語や形容詞によってのみ、その存在と個性を立証される。
 住人達は「加詞筆」と「詞認筆」によって行動し、日記をつけることで自己の生活を立証する。ゆえに個人単位でのボキャブラリや想像力が非常に重要であり、主観と現実に齟齬が生じやすい都市である。
 またこれとは別に、フランスという国家全体の特性として、「騎の開発に古くから携わっている」というものがある。

パリにおける人間
 パリ内部にて1944年の言詞爆弾の爆発に巻き込まれた人間は連環の一端となり、時間の回帰に気づくこともなく、毎回同じように生活し、同じように死んでいく。外部から入り込んだ人間がパリ内部で死んだ場合、回帰の際にその存在は消滅する。生きていた場合も回帰の時点でパリに「気付かれ」、余計なものとして市外に排斥されて二度と入ることはできなくなる。
 パリの住人であったものの、何らかの原因で言詞爆弾の爆発に居合わせなかったために連環から免れた者達は、「第一の避難者」と呼ばれている。


巴里に関する用語

詞認筆
 全てが文字によって存在するパリ独自の要素。英語で「サイン」、フランス語で「シーニャ」、ドイツ語で「レルネン」と読む。
 パリにおいて、個人が自身の行動や主観を実現するために用いる。基本的にパリ内での個人行動はこれによって実行され、その表記によって行動や結果が果たされる。しかしこれはあくまでも主観によるものであり、他者との詞認筆がぶつかった場合、事実に近い方が優先される。もしも他者の詞認筆が事実に近かった場合、自身の認識とは異なる結果を突然受けるという事になる。ゆえに事実を確認する加詞筆との兼ね合いが非常に重要である。

加詞筆
 全てが文字によって存在するパリ独自の要素。英語で「ポイント」、仏語で「アジュテ」、独語で「フェアベッセリング」と読む。
 パリにおいて、客観的な事実を確認するために用いる。これを行うことによって基準となる現実を把握し、それに則した行動をとれるようになる。ただしこれを行っている間、自身の行動を果たす詞認筆を行うことはできない。

初期化
 パリが1年前へと逆行する現象のこと。英語で「フォーマット」、仏語で「プリミティーフ」と読む。
 これが発動する時間が、ドイツ軍による言詞爆弾の爆発(1944年8月6日午前5時32分18秒)であり、これが起きるとふたたび1943年8月6日まで逆行する。これに巻き込まれているパリの住人達はそれに一切気づくことはなく、パリの外から来ていた人間や物品は全て排除され、二度と入ることはできない。また、これを打破して巴里が市外と繋がった場合、54年間の誤差という矛盾を解消するため、市外の全世界は1944年まで逆行することになるという。

連環
 パリが1943年8月6日から1944年8月6日午前5時32分18秒までの1年間を繰り返すこと。仏語で「ロンド」、独語で「メタフィジコーズ」と読む。

第一の避難者(ファーストイレイサー)
 パリの住人だったが、何らかの原因で言詞爆弾の爆発に居合わせなかった者の総称。

言詞爆弾(ヴォルト・ボンベ)
 爆発地点から広範囲に渡り、空間の遺伝詞さえも変異させる強力な兵器。パリが連環を起こしている原因。


 重騎、中騎、軽騎の総称。英語で「バレル」、仏語で「アパレイユ」と読む。
 総じて巨大な人型機械であり、騎師が記乗することによって同化し、自らの体として操縦する。中でも重騎は別格の存在であり、性能や存在意義において中騎と軽騎を遥かに上回る。ちなみに騎自体はあくまでも素体であり、戦場では装甲服(英語で「ドレス」と読む)をまとう。

重騎
 三種の中で最も強く、大きな騎。英語で「ヘビィ・バレル」、仏語で「ルール・デ・マリオネッタ」、独語で「グレーセ・パンツァー」と読む。
 戦闘力以上に戦場での旗印としての意味が強く、重騎の有る無しで戦意は格段に変わるとされている。その全てが職人達によるオーダーメイドであり、凄まじい維持費と制作費がかかるので量産されることはなく、市場も存在しない。最大の特徴は搭乗者の強い意思によって発揮される機体の強化変質「凌駕紋章」であるが、機体全ての凌駕紋章が行える者はほとんどいない。
 扱いの難しさや少数生産限定という点から、戦車や戦闘機に主力兵器の座を奪われるが、旗印としての意味合いから、開発は現在でも行われている。

凌駕紋章
 重騎の機体表面に彫り込まれた紋章であり、重騎が搭載する最大の特徴。英語で「オーバーエンブレム」、仏語で「エクシードアンブレム」と読む。
 記乗者の強い意思に反応し、紋章によって周囲の流体に干渉、紋章が示す形へと機体を変質させる機能。その場合、重騎は機械というよりも人間に近い形となる場合が多い。機体全てを凌駕紋章によって変質させる事は限りなく困難であり、それが可能な重騎師は歴史に名をのこすレベルといえる。そのため、ほぼ全ての重騎師は機体の一部を変質させることができるのみで、それ自体も非常に難しい。

記乗
 騎師の肉体を遺伝詞分解し、騎と合一する事で機体を操縦すること。英語で「ライトブリング」、仏語で「レクリア」、独語で「シュレイブン」と読む。

重騎師
 重騎を駆る者の総称。英語で「ナイトストライカー」、仏語で「ルール・デ・エクリヴァン」、独語で「パンツァー・カバリエ」と読む。
 同様に、中騎を駆る者は中騎師、軽騎を駆る者は軽騎師と呼ばれる。

守護騎師
 フランス各地で地方の守護を司っていた騎師の総称。
 バルロワ家が「王宮守護騎師」として統括していたが、王家の没落によってその役職は無くなり、他の守護騎師達も革命によって同じく役を失った。しかし、いまだに強い政治的発言力を持っている。「巴里守護騎師(シュバリエ・デ・パリ)」のミゼール家もこの一流。

自動人形
 等身大の人型機械。仏語で「ベル・デ・マリオネッタ」、独語で「ザインフラウ」と読む。
 架空都市ロンドンで多くの発展を遂げる。中には、「自動人形の意思に応じて肉体が人間へと進化する」機能を持つ機種があり、ロゼッタやベレッタの実家で造られている自動人形達もこの機能を持つ。しかし多くは労働力や愛玩品として存在しており、強い差別対象であることもあって、多くの自動人形は進化を諦め、わざと失敗して自壊する場合が多いのが現状である。
 川上稔の「都市シリーズ」において、ほぼ全作に登場する。

A 計画(アティゾールけいかく)
 第二次世界大戦中、フランス中部のブルゴーニュ地方モルヴァン山脈で進められていたとされる計画。
 「最強の騎を開発する計画」とされているが、世間一般ではおとぎ話のような認識であり、わずかにマイアー=シュリアーの著作の一部にその内容がまとめられている。ジャック=マクワイルドはこれに関わっていたとされている。
 その正体は P計画の対とでも言うべき、騎体の能力を最大限に引き出すために「機械を人とする」というものであり、最強の「騎」ではなく、最強の「騎士」となる自動人形を開発する計画であった。
 自動人形の「人に進化する」という特徴を応用したこの理論は、逆にその「人に進化すること」の目的が戦闘機械となることであるという矛盾から自動人形の自殺や暴走を生み、それによって計画は頓挫。それまでの全てのデータを組み込んだ最後の一体であるロゼッタを残し、全ての資料は破棄された。

P 計画(パンツァーリッターけいかく)
 ドイツ第三帝国の G機関が取り組んでいるとされる計画。
 被験者の体を義体化する計画で、これによって身体能力と機械への順応性を極限にまで高め、騎への記乗では人間を遥かに超える速度と精度の操縦を行うことができる。また、感情喪失機構も搭載することで正確な判断を行い、記憶も戦闘に関するもの以外は全て封印される。仮に何らかの要因で封印された記憶が触発されたとしても、感情喪失機構がこれを抑制する。ただし、感情の喪失による弊害として、凌駕紋章が使えなくなる。
 作中において A計画と対になる、騎体の力を引き出すために「人を機械とする」計画である。

G 機関(ゲハイムニスきかん)
 ドイツ第三帝国の秘密機関。ドイツにおいて正規軍以上の地位を持つとされる。後続の『機甲都市 伯林』にも登場する。


主な登場人物
ベレッタ=マクワイルド
 1998年現代のアメリカから留学してきた女学生。実家は S.F.(サンフランシスコ)の自動人形工場で重騎を駆り続けていたベテラン重騎師。
 あっけらかんとした豪快な性格で、やや強引なところもある。しかし実は押しが弱く、失敗や不安にとらわれがち。祖父ジャックの謎の死の原因と、彼が関わっていたという A計画を調べるためにパリへ留学してきた。その過程でロゼッタと出逢い、彼女の進化を促す。フィリップの恋人だが、彼の未来を知るために衝突することも多く、疎遠になりがち。パリへの干渉と自分のあり方に悩む。

ロゼッタ=バルロワ
 1944年のパリのバルロワ邸で女給を勤める形式不明の自動人形。
 当初はほとんど進化していなかったため感情を見せなかった。しかしベレッタとの出逢いで心身共に成長し、控えめで天然ボケなところはあるが、温和で純真な性格になっていく。ベレッタを通じて下界や多くの人間と出会い、多くのことを知り人間へと進化する。ややベレッタに依存しがち。

フィリップ=ミゼール
 かつてパリ守護騎師だったミゼール家の嫡男。ベレッタの恋人。
 口数の少ない無愛想ともとれる性格だが、割と浅はかなところもあって周囲には誤解されがち。しかし実際は信念と情に厚い性格。ドイツ軍に名誉将校として所属していることからパリの住人や同級生達とは疎遠だが、実はレジスタンスのスパイとして潜り込んでいた。歴史上では蜂起の際にハインツ=ベルゲと交戦して戦死し、ミゼール家は断絶することになっている。

マレット=ハルキュリア
 ベレッタの親友で、フィリップとも友好がある。ユダヤ人豪商の令嬢。
 はすっぱで不真面目な一面が目立つが友情に厚く、リーダーシップのある性格。ベレッタを含む友人グループのリーダーで、ロゼッタも友人の一人として歓迎した。

ハインツ=ベルゲ
 ドイツ軍重騎師。陸軍中佐。58歳。P 計画によって全身を義体化し、感情喪失機構(サイコアウター)を搭載したことで最強の称号を得た。
 機構騎師となったことで戦闘に関する以外の記憶を失い、感情も封印されたために人格を持っていない。あるのは「最強であり続けなければならない」という鉄の意思のみ。パリでの駐屯中に過去の記憶を触発され、そのために己の過去とそれに関わる A計画を追う。

ギヨーム=バルロワ
 パリのとある丘の家に住む義足の老人。ロゼッタの主人。第一次世界大戦でのドイツ軍のハインツとの戦闘で右脚を失った過去を持つ。
 外見相応に無骨で愛想の無い性格。突然転がり込んできたベレッタをなし崩しでかくまうこととなった。元・王宮守護騎師で、その縁もあってレジスタンスの中心にいた。ジャック=マクワイルドやロゼ=フランシスカの友人で、A 計画にも携わった。ロゼッタを引き取ったのもその縁によるものである。

ジャン=ミゼール
 フィリップの祖父。元パリ守護騎士で、レジスタンスのリーダー。組織内では「蒼目」と呼ばれる。
 蜂起戦後のドイツ軍の襲撃で致命傷を負い、ベレッタとわずかに会話した後に死亡する。

女剣士(ベレッタ=マクワイルド)
 ベレッタの祖母。ベレッタとは完全に同名の「もう一人のベレッタ=マクワイルド」。
 1944年当時は諜報員をしており、言詞爆弾投下時は特殊工作員としてフランス国外にいたため、連環による封鎖を免れた。その後はアメリカの S.F(サンフランシスコ)で自動人形の工房を作って生活し、1995年に引退。パリに向かった孫娘のベレッタに数十通に渡る手紙を送った。

ロゼ=フランシスカ
 「女剣士」の母親で、ベレッタの曾祖母。風水師の老女。
 風水によって、連鎖の中で記憶を継続させ続けている唯一の人間。ベレッタが潜り込んだことで輪廻打破の希望を見出し、ギヨームに未来の歴史を綴った手紙を送る。

ジャック=マクワイルド
 「女剣士」の父親で、ベレッタの曾祖父。ロゼ=フランシスカの夫。
 ギヨームの友人で、A 計画の開発者。1939年のジャックの死の真相を知るため、ベレッタはパリ留学を決意した。

マイアー=シュリアー
 「都市シリーズ」を通じて登場する人物。『喪失技巧(デステクノ)奇集本』シリーズの執筆者。ドイツ第三帝国の「裏切り者」で、1943~44年の期間にはアメリカに亡命していた。

黒竜
 ブルゴーニュ地方モルヴァン山脈の地脈から生まれた黒いドラゴン。重騎を狙って襲う。体長180メートル。

狐鬼(ファンタズマ・ルナール)
 バルロワ邸の庭園に住む霊獣「三尾の狐鬼」の一家。夫婦と子供が3匹(メス1匹、オス2匹)の計5匹がいる。
 生涯において一度だけ人間の姿に化けることができる。

重騎
快(グラッチェ)
 HLP-018・77-LL(量産雌型重騎「快」軽陸戦式)。凌駕紋章は「飛天(アンジェ)」。
 作中で使用されたのはパリ大学で保存されていた機体。

快・改
 学園祭の重騎戦で破損した「快」を改修したもの。
 脚部の強化や小翼の追加などがなされている。

楽(スリール)
 HLT-001X・XX-XL(試作雌型重騎「楽」重陸戦式)。凌駕紋章は「直天(オート・アンジェ)」。
 ブルゴーニュ地方の村に保管されていた機体。2つの増槽と六連神術砲、改造された凌駕紋章を持つ。

庇護女帝(プロテクティッド・エンプレス)
 HLF-087・13-LL(単作雌型重騎「庇護女帝」軽陸戦式)。凌駕紋章は「戦女后(スパルタネス)」。
 レジスタンスの保有する最新鋭重騎。曲線シリンダー機構を持ち、武器「戦乙女の鋼槍(ヴァルキリー・ストライク)」を装備している。

剣将(エクスペール・デ・オレイル)
 ミゼール家の家宝の重騎。凌駕紋章は「炎舞(フラーム・バル)」。
 重騎用の神形具「第三炎帝」を装備している。

赤獅子(ロート・レーヴェ)
 ドイツ G機関陸軍部の重騎。P 計画によって反射速度と出力の上限は通常の50~150倍に強化されている。
 凌駕紋章は「鋼獅子(アイゼン・レーヴェ)」だが、搭乗者のハインツ=ベルゲが感情を喪失しているため、使用されることはない。「重裂杖」を装備している。

戦(ゲイル)
 HMP-035・22-LL(量産雄型重騎「戦」軽陸戦式)。
 作中ではパリ大学で運用されている。第一次世界大戦時代の平均型重騎。

中騎(英語で「ミドル・バレル」、仏語で「フォルマ・デ・マリオネッタ」、独語で「ミッテル・パンツァー」と読む)
黒犬(ヤークト・フント)
 ドイツ軍の中騎。装甲が厚い。

軽騎(英語で「ライト・バレル」、仏語で「レジェ・デ・マリオネッタ」、独語で「クライン・パンツァー」と読む)
闘犬(ビルト・フント)
 ドイツ軍の軽騎。
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