長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

突然炎のごとく……!!  総力特集 「せかいのサメ」 第6集

2013年11月10日 23時54分49秒 | 日記
ここでは、世界に400種生存していると言われるサメのうち、代表的な種を紹介します。

 まだだ! まだ終わらんよ!! 世界最強性能のメジロザメ一族の饗宴は、もちっと続きます。


メジロザメ目(つづきその2 カマストガリザメ・スミツキザメ・ガラパゴスザメ・ドタブカ・ハビレ・ヒラガシラ・ネムリブカ)

カマストガリザメ(魳尖鮫) Carcharhinus limbatus
メジロザメ科メジロザメ属

英名   …… Blacktip shark 、Blackfin shark 、Blacktip whaler 、Grey shark 、Spotfin ground shark
体長   …… 1.3~2.8メートル
生息年代 …… 中新世(約2300万年~500万年前)から現在

分布
 世界中の熱帯・亜熱帯海域に生息する。大西洋ではアメリカ・マサチューセッツ州からブラジル(メキシコ湾とカリブ海を含む)、地中海、ポルトガルのマデイラ諸島、北アフリカのカナリア諸島から中央アフリカのコンゴまで。インド洋では南アフリカのマダガスカルからアラビア半島、インド、東南アジアまで。西太平洋では中国南部からフィリピン、インドネシア、オーストラリア北部まで。東太平洋ではメキシコからペルー。ニューカレドニア、タヒチ、マルキーズ諸島、ハワイ、レビジャヒヘド諸島、ガラパゴス諸島からも生息が報告されている。
 主に大陸棚の水深30メートルよりも浅い海域に生息するが、水深64メートルまででも見られる。濁った湾、入り江、珊瑚礁のドロップオフ(深く切り立った地形)などを好む他、塩分濃度の低い汽水域にも耐え、三角江やマングローブでも見られる。沖合で見つかることもあるが、外洋には生息しない。アメリカ東海岸では季節回遊が記録されている。

形態
 身体は頑丈で流線型であり、頭部は長く尖り、目は比較的小さい。5対のエラは他種に比べて長い。歯列は左右15本ずつ、上アゴに2本、下アゴに1本の正中歯列がある。歯の基部は広く、高く細い尖頭と鋸歯状縁を持つ。第1背ビレは高く鎌形で、2枚の背ビレ間に隆起はない。大きな胸ビレも鎌形に尖っている。

体色
 背面は茶から灰色で、腹面は白色である。側面に明瞭な白線が走っている。胸ビレ、第2背ビレ、尾ビレ下葉の先端が黒いことが特徴であり、まれに腹ビレや尻ビレの先端も黒いことがある。さらに、第1背ビレと尾ビレ上葉は黒く縁取られている。しかし、大型な個体ではこのような模様を欠くことがある。

生態
 高速で活発な捕食者で、群れを作る。成体オスと妊娠していないメス、妊娠したメス、幼体でそれぞれ分かれて群れを作る。アメリカ・フロリダ州の成育場では、幼体は日中は集合するが夜間は解散する。生後すぐの初夏には集合する性質が最も強く、これは外敵(主により大型のサメ)の攻撃から逃れようとする行動だと見られている。また、餌密度が最大の領域も避けて生息するが、これも捕食者を警戒しての行動とみられる。

行動
 同属のハナザメのように、水面から跳び出して空中で3~4回転することが知られる。小魚の群れに突っ込み、勢い余って飛び出したジャンプの場合もあるが、遊泳効率を下げるコバンザメを振り落としているとも推測される。
 臆病な性質で、同サイズのガラパゴスザメやツマジロとの餌を巡っての争いに勝てない。また、脅された場合には威嚇行動を行うことがあり、外敵に突進してすぐに反転し、胸ビレを下げて、頭と尾を上げ、左右に揺れながら噛みつくような動きを見せる。 一連の動きは25秒ほど続く。この動きはコバンザメを追い払おうとする際の行動に似ており、何らかの関連があると考えられる。

摂餌
 餌の90% は魚類で、イワシ類、ニシン、カレイ、サバ、アジなどに加え、エイや小型のサメ(ホシザメやヒラガシラ)も食べ、甲殻類や頭足類(イカ、タコなど)もまれに食べる。狩りは明け方と夕暮れに最も活発になる。興奮しやすく社会性が高いため、漁船から捨てられたゴミなどの大量の餌が手に入ったとき、狂乱索餌状態を起こしやすい。

生活史
 他のメジロザメ類のように胎卵生である。1回に産む個体数は1~10尾だが、普通は4~7尾である。1年おきに、十分な食物があり外敵が少ない沿岸の浅瀬を選んで繁殖する。長距離を移動するが帰巣本能が強く、自分の生まれた成育場に戻って出産する。
 交配は春から初夏にかけて起き、妊娠期間は10~12ヶ月。メスは機能する卵巣を1つ、子宮を2つ持ち、それぞれの子宮内部は胚が1つずつ入る部屋に分かれている。卵黄を使い果たすと卵黄嚢は胎盤に転換される。出生時の幼体の体長はアメリカ東海岸では60センチメートル、北アフリカでは60~65センチメートルである。生後15ヶ月での死亡率は61~91% にもなり、死因は捕食か飢餓である。幼体は秋まで成育場で過ごし、冬の前に南下する。
 性成熟サイズは生息地によって変わり、北東大西洋ではオスで体長1.4メートル、メスで体長1.6メートル。メキシコ湾ではオスで1.3メートル、メスで1.5メートル。南アフリカではオスで1.5メートル、メスで1.6メートル。北アフリカではオスで1.7メートル、メスで1.8メートル。成熟する年齢はオスで4~5歳、メスで7~8歳。寿命は最低でも12歳である。

 2007年、アメリカのヴァージニア水族館で9歳のメスが、オスのいない水槽で妊娠したことが判明した。遺伝子解析から、これは単為生殖の結果であり、卵子が極体細胞と融合して受精なしに接合子を形成したと考えられた。以前から報告があったウチワシュモクザメ(メジロザメ目シュモクザメ科)の単為生殖の事例と合わせると、サメ類の単為生殖は珍しいことではないと予想される。

人との関連
 ダイバーに興味を示すが、近づきはしないと報告されている。臆病なのでほとんどの場合、人間に対して危険ではない。だが、餌またはそれを連想させるようなものの存在下では攻撃的になることもある。2008年までに、本種による28件の非挑発事例(1件は死亡)が報告されている。年間にアメリカ・フロリダ州で発生するサメ襲撃事故の16% が本種であるが、ほとんどは軽傷で済んでいる。

 沿岸では最も一般的な大型サメであるため、延縄、定置網、底引き網、一本釣りなどで世界的に大量に漁獲されている。肉は良質で、生・冷凍・干物・塩漬けなどで販売される。さらに、ヒレはフカヒレ、皮は鮫皮、肝油はビタミン源、アラは魚粉として利用される。北西大西洋での漁業では、同属のメジロザメと並んで重要なサメ類である。アメリカでは他のサメより肉質が良いとみなされ、メキシコ、地中海、南シナ海、オーストラリア北部でも重要種とされている。
 フロリダ、カリブ海、南アフリカの遊漁者に人気のあるゲームフィッシュにもなっている。針にかかると強く安定した引きをみせ、時折ジャンプする。1995年以降、アメリカの遊漁者による本種の捕獲数は、漁業による捕獲数に迫っている。繁殖力が低く乱獲が続くことから、IUCN(国際自然保護連合)は本種を「準絶滅危惧」としている。アメリカとオーストラリアでは漁獲が制限されているが、どちらも複数種のサメを対象とした保護計画であり、本種のみを対象とした特別な保護計画ではない。


スミツキザメ(墨付鮫) Carcharhinus dussumieri
メジロザメ科メジロザメ属

英名 …… Whitecheek shark (ホワイトチーク・シャーク)
体長 …… 1.0~1.2メートル

形態
 メジロザメ属の中では小型種である。

体色
 背側は黒色もしくは褐色がかった灰色で、腹側に行くにつれて白色になる。第2背ビレに黒色斑がある。

分布
 太平洋からインド洋にかけて、日本、オーストラリア、東南アジアからペルシア湾、紅海までの沿岸域に生息する。

生態
 小魚や頭足類(イカ、タコなど)、甲殻類を主に餌とする。胎卵生である。
 稀少種ではないが、その生態はあまり知られていない。


ガラパゴスザメ Carcharhinus galapagensis
メジロザメ科メジロザメ属

英名 …… Galapagos shark (ガラパゴス・シャーク)
体長 …… 2~3メートル

形態
 メジロザメ科のサメ類にみられる典型的な体型である。
 群れを作って行動する場合もあり、回遊している可能性も考えられている。

分布
 名前の通りに、ガラパゴス諸島近海をはじめとした東太平洋やインド洋、大西洋の赤道付近の暖海域を生息地にしている。ガラパゴスの他にも、ハワイ諸島などでよく見かけられている。
 やや冷たい水温を好む性質もあり、他の暖海性のサメ類や、同じ地域に棲むメジロザメ類よりもやや深い海域や、寒流域に入る境界水域を好んでおり、あえてそういった水域を選んだことで、エサの競合などを避けているとも考えられる。
 ガラパゴス諸島では、エクアドルからの寒流のために浅場でもよく見られる。

人との関わり
 人間を襲った記録はあまりなく普段はおとなしいが、身体の大きさと群れることに加え、歯も大きくアゴも強いことから、危険なサメに分類されている。

 ハワイでは漁で網にかかった魚を食い荒らすこともあって、漁師達から嫌われている。
 肉は食用に、ヒレはフカヒレの材料にされるが、日本近海に生息していないこともあり、日本ではあまり馴染みがない種である。


ドタブカ(土田鱶) Carcharhinus obscurus
メジロザメ科メジロザメ属

英名   …… Dusky shark (ダスキー・シャーク)
体長   …… 2.6~4.2メートル
生息年代 …… 中新世(約2300万年~500万年前)から現在

分布
 全世界の熱帯・暖帯海域に不連続に分布する。西大西洋ではアメリカ・マサチューセッツ州からバハマ、キューバ、ブラジル南部。東大西洋では西・中部地中海、カナリア諸島、セネガル、シエラレオネ。インド洋では南アフリカ、モザンビーク、マダガスカル。散発的にアラビア海やベンガル湾にも生息する。西太平洋では日本、中国、台湾、ベトナム、インドネシア、オーストラリア、ニューカレドニア。東太平洋ではカリフォルニア半島、レビジャヒヘド諸島に分布する。
 波打ち際から大陸棚外縁、外洋まで様々な環境に進出し、沿岸性のメジロザメ、外洋性のクロトガリザメ、ヨゴレ、ハビレ、島嶼性のガラパゴスザメ、ツマジロなどと生息域が重なる。メキシコ湾北部での追跡調査では、一日のほとんどを水深10~80メートルで生活しているが、ときおり水深200~400メートルまで潜ることが示された。水温摂氏19~28℃を好み、三角江のような塩分濃度の低い場所は避ける。

 高度回遊性で、成体は長距離、最大で3800キロメートルを移動することが記録されている。アメリカ西・東海岸では夏季は北方に、冬季は赤道近くの南方に移動する。オーストラリアでは、成体と若い個体は夏から秋にかけて沿岸に近づくが、幼魚のいる成育場には近づかない。

形態
 メジロザメ属内では最大種のひとつで、通常は体長3.2メートル・体重160~180キログラム、最大で体長4.2メートル・体重347キログラムになる。メスはオスよりも大きい。身体は細く流線型で、幅広く短く丸い頭部を持つ。鼻孔にはわずかに前鼻弁があり、丸い眼には瞬膜がある。口角には短く細い溝があり、歯列は上下とも通常はは28本。上アゴの歯は幅広い三角形でわずかに傾き、大きく粗い鋸歯状縁があるが、下アゴの歯はより細く直立し、細かい鋸歯状縁がある。5対のエラはかなり長い。
 大きな胸ビレは体長の1/5に達し、先細りの鎌型である。第1背ビレは胸ビレ後端から始まり、やや鎌型をしており先端は尖って後縁は大きくへこむ。第2背ビレはそれより小さく、尻ビレの真上にある。2枚の背ビレ間には低い隆起がある。尾ビレは大きくて高く、下葉はよく発達し上葉には欠けがある。皮歯(鮫肌)は菱形で密で、個々の皮歯には5本の水平な隆起線がある。

体色
 背面は明るい茶色から青みがかった灰色で、腹面は白い。側面に淡い色の筋が伸びる。ヒレ、特に胸ビレ下面と尾ビレ下葉は先端ほど黒くなり、若い個体に顕著に見られる。

生態
 成体は頂点捕食者として食物連鎖の頂点に位置するため、個体数は分布域を共有する他のサメ類よりも少ない。だが、特に幼魚は特定の地域では高い密度に達することがある。西インド洋のアガラス海流沖合などで、船に付いてくる成体がよく見られる。コバンザメの主な宿主のひとつである。
 成体に天敵はいないが、幼体はシロワニ(第2集参照)・ホホジロザメ(第1集参照)・オオメジロザメ・イタチザメ(ともに第4集参照)などの餌となる。

摂餌
 海底での狩りを好むが、基本的に広い範囲に対応できるジェネラリストであり、あらゆる場所で餌を探す。大型個体は1回に体重の1/10以上の餌を食べることもある。体長2メートルの個体を用いて計測した結果、アゴの力は60キログラムと測定された。これは測定されたサメのアゴの力の中では最大のものである。インド洋では、若い個体が餌に密に群がることが観察されている。

 食性は非常に多様である。遊泳魚ではサバ、カジキ、アジ、タチウオ、ハダカイワシなど。底生魚ではボラ、タイ、ウナギ、ホウボウ、カレイなど。磯魚ではカマス、ヒメジ、ハタ、カサゴ、ハリセンボンなど。軟骨魚類ではツノザメ、ノコギリザメ、カスザメ、オナガザメ、小型のメジロザメ、ノコギリエイ、ガンギエイ、アカエイなど。無脊椎動物では頭足類(イカ、タコ)、十脚目(エビ、カニ)、フジツボ、ヒトデなどを捕食することが確認されている。非常に珍しいが、巨大な個体はウミガメや海獣(哺乳類)の死骸、人が捨てたゴミも食べる。
 北西大西洋では餌の60% は硬骨魚で、オキスズキとナツヒラメが特に重要である。軟骨魚ではガンギエイやその卵嚢が重要である。南アフリカやオーストラリアでもやはり硬骨魚が主で、若い個体は主にイワシやイカなどの小型遊泳魚を食べるが、体長2メートルを超えた個体は食性の幅を大型硬骨魚や軟骨魚に広げる。 南アフリカ東部で毎年の冬に起こるカリフォルニアマイワシの「サーディン・ラン」は、本種を引き寄せる。だが、妊娠中や産後のメスは素早く泳ぐ力がないためか参加しない。ある研究では、本種の0.2% がハンドウイルカを捕食していたことが報告された。

生活史
 他のメジロザメ類のように胎卵生であり、卵黄を使い切った胎児は卵黄嚢を胎盤に転換する。南アフリカでは繁殖期はないが、北西大西洋では春である。メスは卵殻を分泌する包卵腺に複数のオスからの精子を蓄え、妊娠に適した環境に応じて出産時期を変えることができる。これは、このサメが高度回遊性であるため、異性に出逢う機会が少ないためだと考えられる。
 妊娠期間は22~24ヶ月、次の妊娠までの休養期間は1年と予測され、およそ3年ごとに繁殖すると考えられる。1回に産む個体数は3~16尾だが、通常は6~12尾である。出産時期は北西大西洋では晩冬から夏にかけて、西オーストラリアでは夏から秋にかけて、アフリカ南部では秋にピークが見られる。メスは幼魚が餌を得られ、捕食者から保護される浅い入り江で出産し、すぐにその場を離れる。

 出生時の幼体の体長は0.7~1.0メートルで、母体の大きさや産児数に影響される。さらに、幼魚の体重の1/5に達する肝臓が母体からの栄養を蓄えているため、狩りを覚えるまではその栄養で生きていくことができる。最も成長の遅いサメ類のひとつで、性成熟まで17~32年、平均で20年かかる。寿命はおそらく40~50歳である。

人との関連
 大型であるため潜在的に危険だと考えられているが、水中で人間に対してどう反応するかは分かっていない。2009年までには6件の船や人に対する攻撃が記録されており、うち3件は非挑発事例、1件は死亡例である。南アフリカやオーストラリアのサメ防御網に成体が絡む事故が起こっており、南アフリカでは年平均でおよそ250匹が絡まるという。若い個体は水族館でも飼育しやすい。

繁殖力が低く乱獲に弱いが、このためIUCNは保全状況を危急種としている。

 本種の経済価値は高く、ヒレが大きいためにフカヒレとしての人気が高い。肉は生・冷凍・干物・塩漬け・燻製、皮膚は皮革製品、肝臓は肝油に加工されて高値で取引されている。アメリカ東部、南西オーストラリア、東部南アフリカなどでは延縄(はえなわ)や刺し網を用いて捕獲される。オーストラリアでは1940~1970年代に毎年500~600トンが水揚げされた。この漁業では底刺し網を用いて3歳以下のドタブカのみを狙い、この地域の全幼魚数の18~28% が生後1歳で捕獲される。人口動態モデルによると、体長2メートルを超えた成体の死亡率が4% 以下であることから、この漁業は持続可能であるという。
 マグロ・カジキ延縄漁でも混獲される。さらに、南アフリカや東オーストラリアでは大量の幼魚が遊漁者に釣り上げられている。

保護
 IUCN(国際自然保護連合)はドタブカを、世界規模では「危急種」、南西大西洋・オーストラリアでは「準絶滅危惧」としている。アメリカ水産学会も、アメリカでの個体群を「危急種」としている。繁殖力が非常に低いため、乱獲の影響をかなり受けやすい。
 特にアメリカ東部の資源に対する乱獲が深刻で、2006年のアメリカ海洋漁業局の調査では、個体数は1970年代の15~20% にまで激減した。1998年にはあらゆる漁獲が禁止されたが、混獲には効果が薄く、2003年には禁止にもかかわらず遊漁者によって2000尾が捕獲された。2005年、ノースカロライナ州では遊漁者に対処するため、釣り場の制限を行った。


ハビレ(破鰭) Carcharhinus altimus
メジロザメ科メジロザメ属

英名 …… Bignose shark (ビッグノーズ・シャーク)
体長 …… 2.2~3.0メートル

分布
 記録が少ないが、おそらく世界中の熱帯・亜熱帯海域に生息している。大西洋ではアメリカのデラウェア湾からブラジル、地中海、西アフリカ沖。インド洋では南アフリカ、マダガスカル、紅海、インド、モルディブ。太平洋では中国からオーストラリア、ハワイ周辺、アメリカのカリフォルニア湾からエクアドルで記録がある。フロリダ沖、バハマ、西インド諸島ではよく見られるが、ブラジルや地中海では珍しい。
 普通は大陸棚外縁から上部大陸斜面の水深90~430メートルの深海で見られる。若い個体は水深25メートルまで浮上することもある。夜間は海面近くで捕獲されるため、日周鉛直移動を行うようである。北西大西洋では季節回遊すると推測されており、夏はアメリカ東海岸沖、冬はメキシコ湾やカリブ海で多く見られる。1600~3200キロメートルという長距離を移動することが記録されている。

形態
 身体は頑丈で、頭部は長くて幅広く先端は丸い。鼻孔にはよく発達した三角形の前鼻弁がある。眼は少し大きくて丸く、瞬膜がある。口は広く湾曲し、口角に溝はない。上アゴの歯列は28~32本で、長く幅広な三角形で鋸歯状縁を持つ。中央の歯は直立するが、それ以外の歯は傾斜する。下アゴの歯列は28~30本で、細く直立し非常に細かい鋸歯状縁がある。5対のエラは多少長い。
 胸ビレは長くて幅広く、先端は尖りエッジはほぼ直線である。第1背ビレは比較的前方の胸ビレの後端から始まり、かなり高く鎌状で、先端は丸く後端は長い。第2背ビレは尻ビレの少し前方にあり、比較的大きく後端は短い。2枚の背ビレ間の中央に特徴的な高い隆起がある。尾ビレの付け根上部には、三日月型のへこみがある。尾ビレ下葉は大きく、上葉先端には大きな欠けがある。皮歯(鮫肌)は近接しているが重なってはおらず、個々は楕円形で3本の水平隆起線がある。

体色
 背面は明るい茶色から灰色で、側面に微かに淡い色の筋が走る。腹面は白く、エラに沿って緑色の光沢が見られることもある。腹ビレ以外の各ヒレの先端の色は暗く、特に若い個体で顕著である。

生態
 餌は主に海底付近にいる底生生物で、カレイなどの硬骨魚、ツノザメ属、ナガサキトラザメ属、アカエイ科、ギンザメ目などの軟骨魚類、頭足類(イカ、タコ)などである。また、小型個体が共食いすることも考えられる。
 他のメジロザメ類と同じように胎卵生で、卵黄を使いきった胎児は卵黄嚢を胎盤に転換し、母体から栄養供給を受ける。1回に産む個体数は3~15尾だが通常は7尾、妊娠期間は10ヶ月である。複数のオスの子を同時に妊娠できる。 出産は地中海で8~9月、マダガスカル沖で9~10月。産まれてくる幼魚の体長は70~90センチメートル。
 オスは体長2.2メートル、メスは体長2.3メートルで性成熟する。平均で21年間繁殖することができる。

人との関連
 身体が大きいため危険かもしれないが、深海性なので人間と遭遇することはほとんどない。 刺し網、底引き網、マグロの遠洋延縄などで混獲される。キューバではよく漁獲され、肝油、鮫皮、魚粉などとして利用される。東南アジアでは肉、東アジアではフカヒレが利用される。アメリカでは利用されておらず、2007年の大西洋マグロ・カジキ・サメ類の漁業管理計画において漁獲が禁止された。オーストラリアでも利用されない。
 IUCN(国際自然保護連合)は、十分な個体数・漁獲データがないため総合的には情報不足としている。だが、繁殖力が低く漁獲圧が高いため、動向に注意すべきと考えられている。モルディブでは減少しているというデータがある。1995年の「魚類資源および高度回遊性魚類資源の保存管理に関する国際連合協定」において「高度回遊性魚種」とされたが、有効な保全対策は行われていない。北西大西洋では、IUCN は「準絶滅危惧」と評価している。明確なデータはないが、一般的に同属のメジロザメと混同されているため、アメリカでの延縄漁に起因するメジロザメの減少は本種の減少も意味すると考えられる。オーストラリアでは「軽度懸念」とされている。


ヒラガシラ(平頭) Rhizoprionodon acutus
メジロザメ科ヒラガシラ属

英名 …… Milk shark (ミルク・シャーク)
体長 …… 0.7~1.8メートル

 英名の「 Milk shark 」は、一部の地域でヒラガシラの肉を食べると母乳の出が良くなると信じられていることによるものである。

分布
 太平洋西部、インド洋の熱帯沿岸域に広く分布し、大西洋ではアフリカ西海岸にのみ分布する。大陸棚に沿って分布し、主に沿岸域や河口などの汽水域、まれに淡水にも出現する。海表面から水深200メートルまでに生息する。

形態
 細身の紡錘型。頭部は細長く伸びる。口角にシワがあることが特徴である。第2背ビレは小さく、尻ビレの後方に位置する。背中に隆起はない。
 両アゴの歯はほぼ同形で欠けがあり、先端は内側に向く。幼魚では歯の縁はなめらかだが、成魚では鋸歯状縁になる。

体色
 背側は灰色から褐色で、腹側に行くにつれて白色になる。

生態
 底生性の小魚や頭足類(イカ、タコ)、甲殻類などを捕食する。
 胎盤を形成しない卵黄依存型の胎卵生である。1回に産む個体数は1~8尾で、通常は2~5尾。妊娠期間は1年で、毎年出産する。出産時の幼魚の体長は、オーストラリアでは35~40センチメートル、アフリカでは25センチメートルである。オスは体長70センチメートル、メスは70~80センチメートルで成熟し、寿命は少なくとも8歳である。
 同じメジロザメ科のカマストガリザメがヒラガシラを捕食することで知られている。

人との関わり
 人間には危害を加えない。
 ごく一般的に漁獲され、肉やヒレが消費される。ヒレは中国に輸出されることが多い。日本でも気仙沼港などに水揚げされるが、他のサメ類に比べて漁獲量は少ない。


ネムリブカ(眠り鱶) Triaenodon obesus
メジロザメ科ネムリブカ属(1属1種)

英名 …… Whitetip Reef Shark (ホワイトティップ・リーフ・シャーク)
体長 …… 1.5~2.5メートル

体型
 長くて平たい体つきで、頭部も扁平で先端は尖らない。また、上アゴには2本の鼻弁(口ヒゲ)が生えている。

体色
 全体に灰色からやや褐色で、第1背ビレと尾ビレの上葉の先端にはっきりと見られる白い斑点が特徴である。

分布
 太平洋からインド洋の熱帯海域に広く分布し、日本近海にも生息する。中央太平洋ではオーストラリア、フィリピン、ハワイ諸島、ガラパゴス諸島に独立して生息しているようである、地中海や大西洋にはいない。暖かい海の浅いサンゴ礁を特に好むが、水深330メートルの海域でも発見される。

生態
 ネムリブカは、その名の通りに日中は岩陰や洞窟の中でじっとしていて動かないが、夜間は眠り込んだ他の魚類を活発に捕食する夜行性である。群れで貪欲に獲物にくらいつく姿は圧巻である。外洋で回遊する習性はなく、海岸からあまり離れない浅瀬の海底に定住する。縄張りは持たないようだが、長い期間同じ場所に住みつく。
 餌は甲殻類や頭足類(イカ、タコ)、サンゴ礁の魚類などであり、サンゴ礁の生態系では食物連鎖の頂点に位置している。単独でいるよりも、群れで行動することが多い。

 胎卵生で、メスは1回に1~5尾の幼体を産む。妊娠期間は少なくとも5ヶ月間で、産まれてくる幼体は体長50センチメートル程度である。寿命は25歳以上と見積もられている。生後5年で成熟する。

 人間が食用にすることもあるが、生息環境によってはプランクトン由来の毒素を蓄積した「シガテラ毒」を持っている場合があり、食べると中毒することがある。

人との関わり
 日本では沖縄県などで、伝統的なネムリブカ漁が行われている地域がある。これは、昼間に海底で休んでいるネムリブカの尾ビレに、先端が輪になった縄をくくりつけて船上から引っ張るという単純な漁法である。ネムリブカは食用にされる。
 ネムリブカは昼間は休んでおり、動きが鈍いので特に危険ではない。しかし、夜は活動的になり、集団で餌を探すので注意が必要である。また、本種はダイバーたちの人気者だが、おとなしいからといって無闇に手を出すと反撃してくることもあるので、接触しない方が無難である。
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