長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

突然炎のごとく……!!  総力特集 「せかいのサメ」 第3集

2013年11月02日 22時00分32秒 | 日記
ここでは、世界に400種生存していると言われるサメのうち、代表的な種を紹介します。

 世界最大の魚、ゆるりと登場! 今回は比較的おだやかです。


ネズミザメ目(つづきその2 ミツクリザメ・ミズワニ)

ミツクリザメ(箕作鮫) Mitsukurina owstoni
ミツクリザメ科ミツクリザメ属(1属1種)

別名 …… テングザメ
英名 …… Goblin Shark (ゴブリン・シャーク)
体長 …… 2.6~6.2メートル

名前
 1898年に命名された学名「 Mitsukurina owstoni 」は、発見者であるイギリス人貿易商アラン=オーストン ( A. Owston ) と、日本の東京大学三崎臨海実験所初代所長・箕作佳吉(みつくり かきち)に捧げられたものである。
 英名は「 Goblin shark 」であるが、これは本種の別名「テングザメ」の翻訳である。

形態 
 背には比較的小さな背びれを2基、また胸ビレ、腹ビレ、尻ビレを備える。尾ビレは上葉(上半分)が長く、下葉(下半分)は上葉に比べてかなり短い。このタイプの尾ビレを持つサメは底生性であることが多く、あまり速くは泳げないと考えられる。古代のサメの特徴を残しており、「生きた化石」などとも呼ばれる。

 異様に大きく突出した扁平な吻(ふん 頭部先端の尖った部分)が特徴である。吻には電気受容器のロレンチニ瓶を多数備えており、海底の餌を探すのに役立っている。吻は軟骨性で柔らかいため、カジキ類のように攻撃や防御を行うには適していない。
 また、ミツクリザメはアゴが前方に突出した姿で描かれることが多いが、突出自体はサメ類が共通して持っている性質であり、さほど驚くには値しない。ただし、本種の場合はアゴが容易に、しかもかなり顕著に突出して目立つ。上アゴは湾曲し、鳥のくちばしのような形をしている。前歯は長く尖り、表面は滑らかで内側に向けて曲がっている。それに対して奥歯はやや短く、ものを噛み砕くのに適している。

 ミツクリザメは船上で逆さに吊り上げられるとアゴが飛び出し、多数の鋭い歯が剥き出しになる。自身の体重で顔は膨らみ、ブヨブヨした軟らかい体はみるみるうちに褐色に変色し、さらに深海魚であるため、水揚げに伴う周囲の水圧の有無・変化からの大量出血により全身が赤く染まる。

体色
 生存時の体色はやや灰色がかった薄いピンク色で、死後は褐色、さらに時間が経過すると灰色になる。やや透明な皮膚の下に血管が走っており、それが生きているときの独特なピンク色を生み出している。ヒレはやや青い。

分布
 世界各地から散発的に報告があるが、出現はまれな希少種である。。これまでの報告はほとんどが日本からのものであり、特に駿河湾や相模湾などの、水深1000メートル以深の深海湾でよくみられる。また、千葉県沖の東京湾海底谷(かいていこく)の入り口で多くの幼魚が見つかり、漁の網にかかることがある。2003年にはそれまで報告の無かった台湾の北西沖で、100尾を超える非常に多数のミツクリザメが漁獲されている。
 他には、太平洋西部のオーストラリアや大西洋のギアナ、イベリア半島のビスケー湾やマデイラ諸島、インド洋の南アフリカなどの周辺海域で生息が確認されている。生息水深帯は30~1300メートル以深。

生態
 ミツクリザメは主に海底付近に生息し、その長い吻を使って海底の餌生物を探し出し、大きくアゴを突出させて獲物を捕らえるものと考えられており、長く鋭く伸びたトゲのような歯は、肉を食いちぎるというより、くわえた獲物を逃がさないために働いていると推測される。カニなど硬い甲羅をもつものは奥歯で噛み砕いて食べる。餌は主に深海性の甲殻類や頭足類(イカ、タコ)、硬骨魚類や他のサメ類である。
 オスの成熟サイズは全長2.6メートル、メスは全長3.4メートル。妊娠したメスはいまだに発見されていないが、ネズミザメ目に広くみられる卵食型の胎卵生と予想される。

人との関わり
 2008年8月に放送された『 NHKスペシャル』と、2010年5月に放送された TBSのバラエティ番組『飛び出せ!科学くん』の中で、ミツクリザメがダイバーの腕に噛みつくシーンが放送されたが、これはサメのアゴの動きを確かめるために敢えて噛ませたものであり、基本的には人に対して危害を加えることはない。
 水族館での生体展示はごく稀にあるものの、長期飼育は困難である。静岡県の東海大学海洋科学博物館や、東京都の葛西臨海水族園で数回の生体展示実績がある。
 剥製標本は世界各地の水族館や博物館が所有しており、日本では、しながわ水族館(東京都)、京急油壺マリンパーク(神奈川県)、葉山しおさい博物館(神奈川県)、世界クワガタムシ博物館(埼玉県)、駿河湾深海生物博物館(静岡県)などで見ることができる。

 ちなみにミツクリザメは、1971年7月公開の特撮映画『ガメラ対深海怪獣ジグラ』に登場する宇宙怪獣ジグラのデザイン上のモチーフにもなっている。


ミズワニ(水鰐) Pseudocarcharias kamoharai
ミズワニ科ミズワニ属

英名 …… Crocodile shark (クロコダイル・シャーク)
体長 …… 75~110センチメートル

 ネズミザメ目ミズワニ科に属する唯一のサメ。

分布
 全世界の亜熱帯および熱帯の海域に分布する。日本近海では日本海側は山陰地方以南・太平洋側は四国付近以南に生息している。海表面から水深590メートル以深のやや浅い深海に生息している。

形態
 最大全長は雌雄ともに1.1メートル。ネズミザメ目の最小種である。第1背ビレは大きく、第2背ビレは小さい。胸ビレはやや丸みを帯びている。

体色
 背側が灰色から灰褐色で、腹側と各ヒレのエッジは薄紫色である。

生態
 餌は外洋の小型魚やイカ、エビなどである。
 胎卵生。卵食型とされているが、卵食・共食い型の可能性もある。1回に産む個体数は4尾で、2つある子宮にそれぞれ2尾の胎児が育つ。
 出産時の幼体の体長は約40センチメートル。成熟サイズはオス75センチメートル、メス90センチメートルである。

混同されている「ミズワニ」
 ミズワニの学名「 Pseudocarcharias kamoharai 」は、1955年頃に京都大学農林部教授・松原善代松によって命名された。また、英名の「 Crocodile shark 」も、日本の名称「ミズ」「ワニ」に由来している。日本においては、古来からサメのことを「和邇(わに)」と呼んでいた。しかし、「和邇(わに)」は一般にはオオワニザメ科のオオワニザメやシロワニ(第2集参照)のことだとされている。日本神話の『因幡の白兎』に登場するサメも「和邇(わに)」と呼ばれており、山陰地方では現在でもサメのことを「ワニ」と呼んでいる。このために、「オオワニザメ=ミズワニ」とする誤解が生じているようである。
 「ミズワニ」の項目にオオワニザメの特徴が記されている文献も多い。また、過去にオオワニザメやシロワニが「ミズワニ科」に分類されていたことも混同の原因の一つであると推測される。



テンジクザメ目(ジンベエザメ・コモリザメ・オオテンジクザメ・クラカケザメ・トラフザメ・オオセ・アラフラオオセ・イヌザメ)
 この中には世界最大の魚ジンベエザメが含まれていて、主に熱帯地域に生息している。小さな目と口ヒゲが特徴で、色とりどりの模様があるのもこの仲間の特徴である。また、口が目よりも前方に位置する。危険な種はほとんど含まれていないが、おどかすと危険なものもいる。


ジンベエザメ(甚兵衛鮫) Rhincodon typus
ジンベエザメ科ジンベエザメ目(1属1種)

別名   …… エビスザメ(カグラザメ目カグラザメ科のエビスザメとは無関係)
英名   …… Whale Shark (ホエール・シャーク)
体長   …… 4.6~13.7メートル
生息年代 …… 暁新生(約6000万年前)から現在

 サメとしても軟骨魚類としても、さらには魚類全体としても最大種である。約6000万年前に登場し、大型の海棲爬虫類(モササウルスや首長竜など)のニッチを埋める形で進化したものと思われる。

呼称
 学名「 Rhincodon typus 」はラテン語の「 rhincos (鼻づら)」と「 odous (歯)」の合成語。
 和名「ジンベエザメ」は、身体の模様が着物の甚兵衛(じんべえ)に似ていることから名付けられたとされる。

形態
 体型は紡錘形。体の幅は頭部で最も大きく、通常は1.5メートル程度である。切り落としたような扁平な形の頭部を持ち、その正面の両端、口の端の近くに小さな眼がある。横幅が最大で1.5メートルほどにもなる大きな口の中には、細かな歯が300~350本、列をなしている。5対のエラは胸ビレの付け根の上前方にある。尾ビレの付け根にはみごとな尾ビレ隆起線が走っている。
 皮膚組織は分厚く、その厚みは最大値でおよそ10センチメートルにもなる。成体の尾ビレは、普通は下部がやや小さい三日月形であるが、若い個体のそれは下部が目立たず、上部だけが大きいという特徴を持つ。

体色
 体色は、腹部は白に近い灰色であるが、それ以外の全ての部分は色合いが濃く灰青色であり、頭部・胸ビレ・尾ビレには淡い黄色の斑点を、胴部には白い格子の中に淡い黄色の斑点が配された独特の模様を持っている。さらに、この模様には個体ごとに個性が見られ、観察するにあたっての識別にも大いに役立っている。

分布
 世界中の熱帯・亜熱帯・温帯の、摂氏21~25℃の温かい表層海域に広く分布する。回遊することで知られる。
 インド洋のモルディブ諸島、東太平洋のガラパゴス諸島、中米コスタリカのココ島、およびタイのスミラン諸島などでの目撃例が多い。
 珊瑚環礁や湾内にも入り込む。河口付近で見られることもある。また、水深700メートルでも確認されている。特定の海域に留まる傾向の見えるメスに対し、オスは広い海域を回遊する。ジンベエザメは小さな群を作ることもしばしばあるといわれるが基本的に単独性であり、餌が豊富な海域でない限り集団を形成しない。現在の生息数の実際については必ずしも明確ではない。

生態
 この大きくて雄大なサメは、ホホジロザメ(第1集参照)とならんで知名度がトップであることは疑いがない。そのおおらかさと独特の美しさは、つねに人間の尊敬を集めてきた。
 広く回遊することで知られ、最長で太平洋を1万3千キロも回遊したことが分かっている。
 ジンベエザメとイワシなどの小魚は、ともにプランクトンを主食としており、したがって両者は同じ海域に餌を求めることが多い。小魚やその小魚を餌とする中型の魚はカツオやマグロといった大型回遊魚の餌であるから、本種のいる海域には大型回遊魚の群れがいる可能性も高くなる。

 オキアミなどのプランクトンのほか、海藻や小魚の群れも摂食する。カツオやマグロさえも捕食するという報告があるが、確認はされていない。
 海水と一緒にそれらの生物を口腔内に吸い込み、鰓耙(さいは 吸い込んだ水の中から微細な生物だけを濾(こ)し取り食べるための櫛状の器官。イワシやアユ、ジンベエザメなど、プランクトン食性の魚はこの器官が発達している)で濾し取り、エラから水だけを排出し、残った生物を呑み込むという摂食方法である。プランクトンは海面付近に多いため、ジンベエザメも海面近くでほとんどの時間をすごす。サンゴの産卵期にはその卵を食す。海面付近に漂う餌を効率よく口内に吸い込むために、体を垂直近くにまで傾ける習性が見られる。このため、大きな個体を飼育する沖縄県・沖縄美ら海(ちゅらうみ)水族館では、ジンベエザメの成体がそのような姿勢をとるために十分な大水槽の水深を10メートルとしている。

 動きは緩慢で、遊泳速度は通常時はわずかに時速5キロメートル程度でしかないが、空腹時になると瞬間最高時速で40キロメートル近くになる。
 性格はいたっておとなしく、人間が接近しても危険はなく、逆に好奇心を示してダイバーに近寄ってくることもある。ただし、非常に神経質で環境の変化に弱いため、飼育は難しいとされる。しかし、大阪府の海遊館や沖縄県の沖縄美ら海水族館などで長期の飼育記録がある。
 繁殖についてはあまりわかっていないものの、数年に1回の割合でしか出産しない繁殖力の低い動物であることは知られている。かつては卵生であると信じられていたが、1995年に妊娠中のメスが捕獲され、胎卵生であることが判明した。幼体はメスの胎内で孵化した後、体長40~60センチメートルに達した状態で出産される。約30年で成熟し、60年から70年ほど生きる。中には150年生きるとする説もある。

 肉に限っては、先進国でジンベエザメが食されることはない。しかし、中国や台湾、日本の中華料理店でフカヒレが好まれていることが、発展途上国の漁師によるサメ類全体の乱獲に繋がっている。特に、ジンベエザメのフカヒレは全てのフカヒレの中でも最高級のものとされ、「天頂翅」と呼ばれ珍重される。そのため、個体数は減少しつつあるといわれているが、詳しいことは分かっていない。
 現在、ボン条約の『付属書2』に登録され、80ヶ国以上の加盟国から保護を受けている。さらに、2002年11月のワシントン条約(絶滅の恐れがある野生動植物の国際取引に関する条約)の会議でウバザメとともに『付属書2』に登録され、保護を受けることとなった。
 IUCN(国際自然保護連合 1948年に設立された、国家と NGOからなる国際的な自然保護機関)は、ジンベエザメを「レッドリスト」のなかで「絶滅危惧第2類」に指定している。
 また2003年7月、中米ベリーズ付近の海域(ベリーズ南東沖のリトル・ウオーター・キーとその周辺海域の1360ヘクタール)が、ジンベエザメの保護区に指定された。この海域は毎年、ジンベエザメが群れをつくって集まってくることで有名である。

濾過摂食
 濾過摂食動物は生態ピラミッドの最低位にあるプランクトンを主食とする、低次消費者のニッチである。しかし動物史上では、この地位にこそ最大級の種が含まれていることが多い。軟骨魚類としてはジンベエザメやウバザメ(体長3~12メートル)、オニイトマキエイ(体長3~8メートル)などがその好例であり、海生動物全体ではヒゲクジラ類を筆頭に挙げるべきであろう。また、過去の時代では中生代の一時期を生きた硬骨魚類のリードシクティス(体長8~17メートル)が、シロナガスクジラ(体長20~34メートル)に迫る史上最大級の動物として知られている。
 最も生物総量の多い最小の消費者(実際には生産者も含む)を優先的に大量に摂食することは、生物的強者でなければ許されない特権と言える。濾過摂食者は確かに低次消費者ではあるが、その意味で「勝利者」なのである。このニッチの占有者は、競合力の高さによってその地位を獲得していったのであろう。

民俗
 前述したように、ジンベエザメの周囲には常にイワシやカツオなどの大小の魚類が群れ、そしてそれらを追うマグロの群れがある。この関係は経験的に古くから日本の漁師に知られ、本種は地域によっては大漁の吉兆とされ、福の神のように考えられてきた。「エビスザメ」という関東地方における呼称などはまさにこのことを表すものであるし、その他の各地でも、「えびす」「えべっさん」などと呼ばれて崇められてきた漁業神のイメージには、クジラ類だけでなくジンベエザメも含まれているという。そして、この信仰は現在も活き続けており、祠(ほこら)は大切に守られている。
 宮城県金華山沖に出現するという海の妖怪「ジンベイサマ」は、海中から人間の船を持ち上げることがあり、頭や尾がつかめないほど巨大な身体をしているとされ、これが出たときにはカツオが大漁になると言われる。


コモリザメ(子守鮫) Ginglymostoma cirratum
コモリザメ科コモリザメ属

英名 …… Nurse Shark(ナース・シャーク)
体長 …… 2~3メートル

体型
 大きく平らで短い頭部をしており、口にはヒゲがある。目は小さい。2つの大きな背ビレは尾ビレ側にかたよっている。

体色
 黄色っぽい茶色。

分布
 大西洋の沿岸全域と、東太平洋の沿岸海域に分布する。

生態
 海底にじっとして動かずにいることが多く、頭を岩陰か穴に突っこんでいる。何匹かが一緒にいることが多く、重なって休んでいることもある。水族館での飼育にも適していて、最高で25年も生きた記録がある。おとなしい種であるが鋭い歯を持っており、休んでいるところを尻尾を引っぱったりしてからかうと、猛烈に反撃してくるので注意しなければならない。
 胎卵生で胎盤は形成せず、幼体は栄養を卵黄嚢から吸収して胎内で成長する。


オオテンジクザメ(大天竺鮫) Nebrius ferrugineus
コモリザメ科オオテンジクザメ属(1属1種)

別名   …… スピッティング・シャーク
英名   …… Tawny Nurse Shark (トウニィ・ナース・シャーク)
体長   …… 1.4~3.5メートル
生息年代 …… 中新世(約2300~500万年前)から現在

体型
 頑丈な円筒形の身体と幅広く平たい頭部は同じコモリザメ科のコモリザメに似ているが、尖った背ビレと鎌形の胸ビレで区別できる。
 眼は側面に付いて小さく、眉部が隆起し、後方に小さな噴水孔がある。前鼻弁は細長く伸びて口ヒゲになる。口は小さく、下唇は3枚に分かれる。上アゴの歯列は29~33本、下アゴは26~28本で瓦状に重なって並び、外側の機能する2~4列以外は狭いスペースに押し込まれている。歯は逆扇形で、成長と共に高く分厚くなる。第4・第5エラは他のエラよりも近接する。
 背ビレと腹ビレは角張り、第1背ビレは第2よりも大きい。胸ビレは細く尖って鎌形であり、角張って幅広い他のコモリザメ類とは異なっている。第1背ビレは腹ビレの真上に、第2背ビレは尻ビレより前の上部につく。尾ビレは成体の全長の1/4に達し、低く伸びた上葉を持ち下葉はほとんどない。皮歯(鮫肌)は菱形で、4~5本の隆起が放射状に走る。
 日本列島や台湾沿岸では第2背ビレを欠いた個体が見られる。これは高い塩分濃度・温度・または人間生活の影響の結果かもしれないが、詳細は不明である。1986年、第2背ビレを欠いた体長2.9メートルの成体オスが和歌山県の那智勝浦町で捕獲された。この個体はアルビノであり、これまで発見されているサメ類のアルビノの中では最大である。

体色
 背面は黄・赤・灰色などがかった茶色、腹面は灰白色。海底と見分けがつきにくいように、環境に合わせて体色をゆっくり変えることができる。幼体では下まぶたが白い。

分布
 紅海からモルディブ諸島にかけての西インド洋と、中国沿岸からオーストラリア北岸までの西太平洋に分布する。中央太平洋でもニューカレドニアやマーシャル諸島などで確認されている。
 沿岸性で、大陸棚の砂底・藻場・サンゴ礁や岩礁の外縁に生息する。普通は深度5~30メートルにいるが、身体がギリギリつかるくらいの砕波帯(波打ち際)からサンゴ礁の水深70メートルまででも見られる。幼体は主に入り江の浅瀬にいる。

生態
 テンジクザメ目の代表種。基本的に夜行性で、昼間は洞窟や岩棚で休んでいて、おもに夜間に行動するものと思われる。
 タコを主食とする珍しいサメである。他の餌はサンゴ、ウニ、甲殻類(カニやロブスター)、イカ、小魚(ニザダイ・アジ・アイゴ)、まれにウミヘビ。海底をゆっくり泳ぎながら、頭を穴に突っ込んで獲物を探す。獲物を見つけると、筋肉質のノドを開いて減圧を利用し、獲物を吸い込んで食べる。
 他のコモリザメよりもおとなしく、人間には無害で通常は何事も無く手で触れることができる。だが、からかうと猛烈に反撃して噛みつくことがあり、強力なアゴと小さな鋭い歯は危険である。

 他のコモリザメ類より流線型であるため、より遊泳性が強いと考えられている。身体・頭部・ヒレ・歯の特徴は、メジロザメ目メジロザメ科のレモンザメのような、同所に分布する活動的なサメに近い。日中は20匹を超える群れが洞窟や岩棚の下に集まり、積み重なって休んでいる光景が見られる。また、個々の個体が自身の休息場所も持っており、毎日そこに戻る。
 他のコモリザメ類はレモンザメやイタチザメ(レモンザメと同じ科に属する)の獲物となるが、オオテンジクザメの天敵は少なく、大型のオオメジロザメ(メジロザメ目メジロザメ科)やヒラシュモクザメ(メジロザメ目シュモクザメ科)に攻撃される程度である。

 毎年6~8月に交配するとされる。メスは卵巣を1つ、子宮を2つ持ち、無胎盤性の胎卵生である。テンジクザメ目では唯一、胎児が子宮内の他の卵を食べて成長する卵食型で、胎児は卵黄を吸収し切ると母体が作る未受精卵を大量に腹に詰め込み、卵黄の代わりとして用いる。
 出生時の幼体の体長は地域によって変化するが、だいたい40~80センチメートルである。メスは子宮1つにに最大4個の受精卵を放出するが、胎児はかなり大きいため、生まれるのは1~2匹と推測され、競争によってどちらかの胎児が排除されることが予想される。基本的にオスは体長2.5メートル、メスは体長2.3~2.9メートルで成熟する。

人との関連
 タイや南太平洋のソロモン諸島などのエコツーリズムで好まれる名物ザメである。水族館でも飼育されるが、人に良く馴れ、手から餌を食べるまでになる。
 パキスタン・インド・タイ・フィリピンなどの分布域では商業的に底引き網・刺し網・釣りで漁獲される。肉は生・干物・塩漬けに、ヒレはフカヒレに、肝臓は肝油に、厚く丈夫な皮は鮫皮に、それ以外は魚粉に加工される。オーストラリアのクイーンズランド州ではゲームフィッシュとして扱われ、針に掛かると頑強に抵抗し、体をひねって針を外そうとする。釣り上げられると口から勢いよく水を吐きだすところから、別名「スピッティング・シャーク」とも呼ばれており、さらにはうなり声のような音を発したりすることもあるが、それらが防衛行動であるかどうかは不明である。

 IUCN(国際自然保護連合)は「危急種」としており、漁獲需要の高さに対して繁殖力が低いために乱獲から回復することが難しいことが理由である。また、生息地の破壊や、毒や爆発物を用いた漁業によってさらに悪影響を受けている。インドやタイからは、地域的な減少または絶滅が報告されている。


クラカケザメ(鞍掛鮫) Cirrhoscyllium japonicum
クラカケザメ科クラカケザメ属

英名 …… Saddle carpet shark(サドルカーペット・シャーク)
体長 …… 45~50センチメートル

体型
 細長く尖った鼻先を持ち、体つき全体も細長い。頭部は平たく、幅が広い。目は横長の楕円形をしている。ヒゲは口の周囲ではなく、ノドのあたりに1対生えている。噴水孔を持たず、2つある背ビレはほとんど同じ大きさをしている。第1背ビレは腹ビレの終わる部分から、第2背ビレは尻ビレの終わる少し前からはじまる。

体色
 和名のとおり、胴体のまわりにまるで乗馬用の鞍を置いたような暗い模様が9本ついている。

分布
 東シナ海や、日本の土佐湾から南西諸島にかけての北西太平洋に分布し、水深250~290メートルに生息する。

生態
 ほとんど研究されておらず、詳しいことはわかっていない。何を捕食しているかも知られていないが、軟体動物を食べると推測されている。おそらくは卵生で、人間に対して危険性はない。


トラフザメ(虎斑鮫) Stegostoma fasciatum
トラフザメ科トラフザメ属(1属1種)

英名 …… Zebra Shark (ゼブラ・シャーク)、 Leopard shark(同じ英名のメジロザメ目ドチザメ科のカリフォルニアドチザメとは別種)
体長 …… 1.5~3.5メートル

体型
 口の部分には、他のテンジクザメ目のサメのようにヒゲが1対生えている。やや寸詰まりでずんぐりした丸い体型で、尾ビレの上側が長く、身体と同じ方向に伸びるが、下側はほとんど退化して無くなっている。背ビレ、腹ビレ、尻ビレは小ぶりだが、胸ビレは大きく横に張り出している。身体の割に目が小さいが、その後方には大きな噴水孔が開く。側面には2本の隆起線が見られる。

体色
 本種の一番の特徴である身体の模様は、成長するにつれて変化する。幼魚では黄色がかった体色にトラのような縞模様が入るが、成魚では縞が分離して美しいヒョウ柄の斑点模様になる。英名の「ゼブラ・シャーク(シマウマ模様のサメ)」は、幼魚のときの模様を見て名付けられたものであろう。真っ白なアルビノ種が捕らえられたこともある。

分布
 紅海、太平洋、インド洋の熱帯海域に分布し、特にサンゴ礁の周囲に生息する。あまり深くは潜らず、海表面~水深30メートルの海底で生活する。

分布
 紅海、インド洋、太平洋といった温暖な沿岸海域に生息する。

生態
 動きはのろく、昼間はじっと海底の岩陰で休んでいるが、夜は活発に狩りをし、小さな魚や甲殻類、軟体動物(イカ、タコ、ウミウシなど)を捕える。特定のすみかを定めて住む種で、いったん離れても絶対といってもよいほど同じ場所に戻ってくる。「人魚の財布」と呼ばれる、20センチメートルほどの殻におおわれた卵を産む。
 体長35センチメートルほどに育つと、幼魚が卵から出てくる。オスは体長1.5~1.8メートルで成熟し、メスは体長1.7メートルで成熟する。性格はおとなしい。

人との関わり
 人には無害で、ダイバーなどが近寄ってもあまり気にしないようである。おとなしい性格なので飼いやすく、世界各地の水族館で飼育されている。水産上の重要性はなく、普通は食用にはしない。


オオセ(大瀬) Orectolobus japonicus
オオセ科オオセ属

別名 …… キリノトブカ
英名 …… Japanese Wobbegong(ジャパニーズ・ウォビゴン)
体長 …… 1メートル

分布
 西太平洋の、南日本から朝鮮半島、フィリピン、東シナ海、東南アジアにかけて分布する。沿岸の水深200メートルまでの砂泥質の海底や岩礁、サンゴ礁などに生息する。底生性のサメで、オオセ科では日本近海に分布する唯一の種。

形態
 体型は押しつぶされたような縦に伸びた形。頭部は平たく丸い。口はほぼ頭部前面に幅広くある。口の周辺には複数の皮弁(ヒゲ)が存在するが、オオセは皮弁数が7~10本であること、先端が二叉であることが特徴である。噴水孔は涙型で大きい。

体色
 全体的に褐色のまだら模様で、薄い褐色、濃い褐色、灰色などの雲状斑が大小モザイク状に配列し、全身に小さな白色斑が散在する。背ビレ2基は身体の後方に位置する。胸ビレはやや大きい。尻ビレは尾ビレのごく近くに付く。尾ビレは上葉が長く、欠けがある。下葉はない。

生態
 詳しい生態や生息数に関してはよく分かっていない。体色の模様はカモフラージュであり、夜行性で海底や岩などに姿を隠している。待ち伏せ捕食型で、底生の硬骨魚類や甲殻類、小型のサメ、エイなどを狙う。
 胎卵生で、21~23センチメートルの幼体を1回で20~27尾産む。妊娠期間は約1年と推定される。

人との関わり
 日本では漁獲され食用になる。その他、中国、台湾、韓国、ベトナムなどでも漁獲される。
 近づくと咬まれる危険性がある。


アラフラオオセ(アラフラ大瀬) Eucrossorhinus dasypogon
オオセ科アラフラオオセ属

英名 …… Tasselled Wobbegong (タッセルド・ウォビゴン)、Carpet shark(カーペット・シャーク)
体長 …… 4メートル

体型
 平べったく、保護色によって海底と見分けがつかない。目の後ろに呼吸用の噴出孔がある。
 口元を隠す多数の皮弁(ヒゲ)が生えており、これによって巧妙に海底に擬態している。
 針のように鋭利な歯を持っている。

体色
 地は明るい茶色で、不規則な薄い色の模様に覆われている。

分布
 北オーストラリア、インドネシア、ニューギニアにまたがる「アラフラ海」に生息している。日本南部の沿岸にもオオセの仲間は生息しており、一部地域では食用としても利用されている。

生態
 この種は、サメの多様性を示す例のひとつで、ほとんど研究されていない。ふだんはじっと獲物を待ちかまえていて、獲物が近づくと突然襲いかかって食べる。胃の内容物の調査から、イヌザメなどの別の小型ザメも捕食することが知られている。
 人間に対してはおとなしいが、保護色のため発見しにくく、ダイバーにとっては多少危険で、うっかり踏んづけたりすると攻撃にあう。


イヌザメ(犬鮫) Chiloscyllium punctatum
テンジクザメ目テンジクザメ科テンジクザメ属

英名 …… Brownbanded bamboo shark、 Greycarpet shark
体長 …… 1.4メートル

分布
 インド洋および西太平洋の熱帯から温帯海域に分布する。潮間帯(潮の干満によって陸上になったり海中になったりする地帯)やタイドプール(干潮時に岩などのくぼみに海水が取り残されてたまったもの。潮だまり)、サンゴ礁などでよく見られる。

体色
 幼魚には10本前後の黒色の横縞があるが、成長するにつれて退色し、成魚では灰褐色になる。

生態
 夜行性であり、底生性の甲殻類や硬骨魚類を捕食する。
 卵生。オスがメスの胸ビレに嚙みついて交尾を行う。メスは1回に2個の卵を産むが、繁殖シーズンの間は何度も続けて産卵を行うので、年間の産卵数は数十になる。卵には粘着性の糸が生えており、潮に流されないよう海藻などに絡みついて卵を固定する役割がある。孵化した幼魚は体長13~18センチメートル。

人との関わり
 人には危害を加えない極めて穏和な性格であり、丈夫であることから水族館などでの展示に適している。東南アジアやインドなどの地域によっては食用とする。
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