長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

突然炎のごとく……!!  総力特集 「せかいのサメ」 第8集

2013年11月14日 23時11分25秒 | 日記
ここでは、世界に400種生存していると言われるサメのうち、代表的な種を紹介します。

 ドス暗い深海の底から、地味に怖い顔と気持ち悪い攻撃法のサメ軍団、登場! かじっちゃイヤ~ン!!


ノコギリザメ目(ノコギリザメ・シックスギルソウシャーク)
 この、幅広いサメ類の中でも非常に独特なグループの特徴は、なんといってもその鼻先である。小さな突起がエッジに並んだ鼻先は、ちょうどノコギリを連想させる。しかし、この薄くて鋭利な突起は、実は歯が横に突き出したものである。また、この鼻先からはヒゲが2本生えている。ヒゲは味覚器官として働き、海底に隠れた獲物を探すのを助ける。ノコギリ状の鼻先は獲物を掘り出したり、エサを殴りつけて殺すのに用いると思われる。
 体型は平べったく、主に海底に生息している。また、このサメ類は通常、水深50~900メートルの海域にいる。一見ノコギリエイに似ているが、ノコギリエイの場合、エラは腹側にあり、ノコギリザメのようなヒゲは生えていない。また、ノコギリエイは非常に大型(最大体長8メートル)である。


ノコギリザメ(鋸鮫) Pristiophorus japonicus
ノコギリザメ科ノコギリザメ属

英名 …… Japanese saw shark (ジャパニーズ・ソウシャーク)
体長 …… 1.4~1.7メートル

体型
 細長くてやや平べったい体型をしている。尻ビレは存在しない。
 ノコギリザメの吻(ふん 頭部の先端)は著しく変形し、ノコギリ状になっている。長く伸びた吻は平らで、両側にトゲのような歯が多数並ぶ。歯は長いものと短いものとが交互に並ぶのが通常である。また、吻からは2本の長いヒゲがはえており、口は小さい。
 類似した形態をもつノコギリエイ(エイ目ノコギリエイ科)とは分類上まったく異なるので、注意を要する。

体色
 やや茶色っぽいが、腹にかけて明るくなっていく。

分布
 日本列島、朝鮮半島、中国北部付近に生息し、水深40~200メートルの砂泥質の海底付近でよく発見される。大陸棚や傾斜面の海底に生息し、また沿岸の砂状や泥状の底にも棲んでいる。日本近海に生息しているノコギリザメ科のサメ類は、本種のみである。

生態
 ノコギリザメは、その吻を振り回すことで餌となる生物に傷を負わせて気絶させたり、あるいは真っ二つに切り裂くという特異な習性を持っている。主な餌となるのは、小魚やイカ、甲殻類などである。また、面積の広い吻の下側には生物の発する微弱な電気をキャッチする小さな孔「ロレンチーニ器官」が多数あいており、砂底や泥底に隠れているエビやカニなどを見つけて掘り起こして食べる。吻にある2本の長い肉質のヒゲも、味覚を感知できることから、捕食行動になんらかの関連があると考えられる。
 夜に活発に活動する。ノコギリエイのように巨大になる種は知られていない。エラは5対である。2枚の背ビレをもち、尻ビレはない。身体はやや縦に扁平で、底生生活に適応している。あまり速く泳ぐことはできない。

 胎内で卵をかえす卵胎生である。子宮内の胎児の吻は柔らかい膜に覆われており、母体を保護する役目がある。

人との関わり
 人間には危害を加えず、また、野生のノコギリザメを目にする機会もほとんど無いと思われるが、ノコギリ状の鼻先で攻撃されないためにも、余計ないたずらは控えるべきである。

 本種は漁業上重要で、ノコギリザメの肉はサメの中でも上等とされている。日本産のものの肉は加工されて、かまぼこなどの練り製品の原料になる。


シックスギルソウシャーク Pliotrema warreni
ノコギリザメ科 Pliotrema 属

英名 …… Sixgill saw shark
体長 …… 0.9~1.4メートル

体型
 サメ類としては珍しく、エラが6対存在する(他のノコギリザメ類のエラは全て5対)。2本のヒゲの生えた、長いノコギリ状の鼻先を持つ。

体色
 背中は茶色く、腹にかけて白くなっていく。

分布
 西インド洋のモルディブから南アフリカにかけて、水深60~450メートルの大陸棚から傾斜面の海底付近に生息する。

生態
 詳しい生態は分かっていないが、成体は幼体と分かれて生息するらしい。小魚やカニ類、イカなどを捕食する。卵胎生で、1回に5~7尾の、体長35センチメートルほどの幼魚を産む。オスは体長0.9メートル、メスは体長1.1メートルほどで成熟する。



ツノザメ目(アブラツノザメ・ヨロイザメ・ダルマザメ・オオメコビトザメ・ツラナガコビトザメ)
 90種にものぼる非常に多種多様なサメ類で、主に深海に生息するサメ類の代表である。ツノザメの名のとおり、背ビレの前方に突起が見られるものが多い。


アブラツノザメ(油角鮫) Squalus acanthias
ツノザメ科ツノザメ属

英名 …… Spiny Dogfish (スパイニー・ドッグフィッシュ)、 Piked dogfish
体長 …… 0.6~1.6メートル

形態
 細長い流線型。2枚の背ビレの前方に弱い毒をもったトゲが生えている。尻ビレはない。尾ビレの付け根には隆起線がある。両アゴの歯は同形で、歯には深い欠けがあり、先端は口角を向く。歯列全体でひとつづきの刃を形成している。

体色
 背側は灰色から褐色で、腹は白い。側面に沿って白い斑点が多数並ぶ。胸ビレ、腹ビレ、尾ビレの先端には白い線が走っている。

分布
 南北の太平洋、大西洋の温帯や、寒帯域の大陸棚付近に分布する。生息水深帯は海表面から900メートル以深で、海底付近に多い。サメ類の中で最も分布海域が広く、さらに最も個体数が多く、人間に最も利用されていることで有名な種であり、人間社会に最も密接につながっている馴染み深いサメだといえる。回遊魚であり、群れを作って分布範囲を拡げることもある。低温海域では、比較的浅い深度にも上がってくる。

生態
 ツノザメ目を代表するサメで、北半球と南半球の冷たい海のどちらにも生息している。現在よりも水温がずっと低かった氷河期時代に世界中に分布していたものが、水温の上昇によって南半球と北半球に分断されてしまったものと考えられる。海底付近によくおり、場合によっては何千尾という群れを組むが、その際は年齢や性別で分離して行動するようである。日本列島の沿岸沿いでの季節回遊が報告されている。
 深海の海底と北方海域の浅い海の沖合に生息し、海底に棲む生物や魚類、甲殻類や軟体動物(イカ、タコ)などを主食にしている。

 胎盤を形成しない胎卵生。妊娠期間は18~22ヶ月で、これは現在知られている脊椎動物の中では最も長い。1回に産む個体数は1~15尾で、平均では6~7尾ときわめて少ない。産まれたときの幼体の体長は20~33センチメートル。胎児の背ビレのトゲは軟骨性の膜で覆われており、母体を傷つけないようになっている。
 メスは体長75~80センチメートル、12歳で成熟し、オスは体長60センチメートル、6歳で成熟する。寿命は平均25~30歳である。
 天敵は自分よりも大型の魚類や、アザラシ、トドなどの海生哺乳類の他、ミズダコにも捕食されることがある。

人との関わり
 本種は非常に個体数が多く、世界で最も漁獲されているサメ類で、食用に大量に漁獲されている。かまぼこなどの魚肉練り製品や、フカヒレや肝油の他、肉は市場にも出され、卵など多くの部位が食用となる。味は、サメ類全般の中でも非常に美味な種であり、日本では煮付けや照り焼き、フライや唐揚げなどにも使われる。ヨーロッパでもよく漁獲されており、イギリスでは本種の肉が伝統料理「フィッシュ・アンド・チップス」の材料のひとつとして使われ、フランス料理の材料にもされている。また、観賞魚用の餌、魚粉の材料としても用いられている。
 しかし、自然保護団体によって個体数の減少も指摘されており、水産業関係者との議論が耐えない。

 本種は丈夫な種であるため、水族館や実験施設などでも多く飼育されている。


ヨロイザメ(鎧鮫) Dalatias licha
ヨロイザメ科ヨロイザメ属(1属1種)

英名   …… Kitefin shark (カイトフィン・シャーク)、Seal shark (シール・シャーク)
体長   …… 0.8~1.8メートル
生息年代 …… 始新世(約5500万年~3800万年前)中期から現在

 和名は硬い皮膚に由来する「ヨロイザメ」で、英名の「 Kitefin shark 」はヒレの形にちなんでいる。

系統と進化
 分岐学の研究によって、本種やヨロイザメ属全体と系統上最も近いのはダルマザメ属であることが分かっている。ヨロイザメ属とダルマザメ属は、似通った歯や骨格、筋肉の構造を持つ。これらが分岐した時期は、中生代と新生代との境目「K-T 境界」の直後、およそ6500万年前頃だと考えられている。この分岐は、ツノザメ目のサメ類が深海から比較的浅い海へ進出する際に起こった大規模な適応放散の一部であるとみられている。

分布
 ヨロイザメは、ほぼ世界中の熱帯や温帯域の海に散在する広い生息域をもっており、それらの間での個体の移動も起きていると考えられている。本種は、東部太平洋と北部インド洋では確認されていない。北部大西洋ではメキシコ湾、イギリス沿岸を含む北海から中部アフリカ・カメルーンまでの海域、そして地中海、マデイラ諸島と中央大西洋アゾレス諸島沖などで見つかっている。インド洋では南アフリカやモザンビークの沖で確認される。太平洋では日本やジャワ島、オーストラリア、ニュージーランドやハワイ諸島で見つかっている。南大西洋でもブラジル沖で発見例がある。

 外洋の深海にすむヨロイザメは水深200~600メートルの地点で最も多くみられるが、海表面から水深1800メートルほどまでで発見例がある。アゾレス諸島沖では性別によって生息域が異なっており、メスは水深230メートルほど、オスは水深410~450メートルほどの地点に生息している。大陸棚の端から大陸斜面、または島や海山の周辺などに生息する。ヨロイザメ科の中で、深海の海底近くで発見されることが多いのは本種だけである。時折、海底よりも浅い地点で多く漁獲されることもある。

形態
 ヨロイザメは、適度に細長い身体にとても短く丸みを帯びた鼻先を持っている。目と噴水孔が大きく、唇が厚いことが特徴である。上アゴには16~21本、下アゴには17~20本の歯がついている。上アゴの歯は短く幅が狭く、口の端に向けてわずかに湾曲している。下アゴの歯はとても大きくノコギリ状になっており、基底部はつながってひと続きの刃になっている。
 第1背ビレは第2背ビレに比べてわずかに小さい。また、第2背ビレにはトゲが無い。第1背ビレは、胸ビレの最後部にあたる位置の上方からつく。第2背ビレは腹ビレのわずかに後方に当たる位置についている。尾ビレの上部は丸く長く突出し、先端には欠けがある。尾ビレの下部にもわずかに丸い突出が見られる。皮膚は他のサメ類と同じく皮歯(鮫肌)で覆われている。

体色
 濃い茶色か灰色であり、背中にわずかに黒色の斑点が見られる。各ヒレは白色か半透明にふちどられ、尾ビレの頂点は黒くなっている。

生態
 ヨロイザメの下アゴの歯は切れ目無い刃を形成し、自分より大きな生物の肉を噛みちぎることが可能である。
 本種は単独で行動することが多いが、小さな群れを形成することもある。ヨロイザメは、水よりも低密度である脂質のスクアレン(肝油)で豊富に満たされた大きな肝臓を持ち、ゆっくりと泳ぎながら水深の深い海域に潜る際に役立っている。また、中性浮力(浮きも沈みもしない状態)を保つことができ、水中での静止も容易である。自分よりの大型のサメや肉食魚に捕食される。また、マッコウクジラも本種を捕食することが確認されている。

 深海における強力な捕食者であり、小さいながらも大きな歯と頑強なアゴは、噛む力が非常に強い。主にタラ、ハダカイワシ、ニギスなどの深海に住む硬骨魚を捕食するが、他にも小型のサメやイカ、タコ、クラゲ、甲殻類などの様々な生物を捕食対象とする。近縁のダルマザメと同様に、本種もクジラやサメなどの自分より大型な標的から、生きたまま肉を削り取って食べることができる。また、泳ぎの遅い本種が捕食した魚の中に泳ぎの速い種が含まれていることから、本種が腐肉食動物(スカベンジャー)であるか、または自分よりも動きの速い魚を捕食できる何らかの未発見な手段を持っていることが推測される。

 ヨロイザメは胎卵生であり、胎児は子宮内で卵黄の栄養を消費して成長する。メスは2つの卵巣と2つの子宮をもつ。地中海では春と秋を最盛期として、繁殖は一年中ある。一度妊娠したメスは、次の妊娠までに1年間ほど間があくとみられている。胎児の数は1回の妊娠で10~16尾ほどで、個体数はメスの体長が大きいほど多くなる。幼体は最大で2年間の胎内期間を経て、体長30~45センチメートルほどで生まれる。オスは体長0.8~1.2メートルほど、メスは1.2~1.6メートルほどで性成熟を迎え、10歳から14歳ごろに繁殖可能となる。

人間との関係
 ヨロイザメの生息域は深海であるため、人間に直接危害を及ぼすことはない。しかし、本種の上アゴの歯が突き刺さっている海底ケーブルが見つかっており、被害が及ぶ可能性はある。
 本種の人間による利用の歴史は長く、経済的に重要な魚であった。肉は東大西洋岸の国々や日本で消費され、内臓肉も魚粉の原料とされる。また、肝油はポルトガルや日本、南アフリカで利用され、皮膚は鮫皮としてヨーロッパなどで家具や装飾品に使われる。しかしながら、西大西洋岸の国々では商業的価値をもたない。

 人間による漁獲の深海域への拡大によって、成長と繁殖の周期が遅い、本種を含めた深海性のサメの乱獲への懸念は強くなった。この懸念は、ポルトガルのアゾレス諸島における本種の漁獲量の急激な減少によって裏づけられる。アゾレス諸島における本種を目的とした漁獲は、1970年代初頭に肝油を採るために始まった。1980年代初頭には底引き網漁などによって漁業規模が拡大し、その結果、1983年には漁獲量のピークに達し937トンを水揚げした。しかし1991年以降に漁獲量は急激に減少して年間15トンほどにまで落ち込み、1990年代の終わりには漁獲はほとんど行われなくなった。生息数は、大西洋においては乱獲前の50%にまで減少したとみられている。

 現在の本種の水揚げは、主にポルトガルと日本の近海で行われている底引き網漁などにおける混獲によるものである。イギリスの東部海域で行われている深海刺し網漁で漁獲されることもあるが、この海域でも個体数は1970年代に比べて減少していることがわかっている。地中海では底引き網や刺し網にまれにかかる。現在では本種は通常、網にかかっても生きたまま海に返されるが、その多くは深海にまで帰ることができずに死んでしまう。2006年に IUCN(国際自然保護連合)は、本種の保全状態評価を全世界において「準絶滅危惧」、北東大西洋の個体群については「危急」と指定した。


ダルマザメ(達磨鮫) Isistius brasiliensis
ヨロイザメ科ダルマザメ属

英名 …… Cookiecutter Shark (クッキーカッター・シャーク)、Luminous Shark (ルミナス・シャーク)、Cigar Shark (シガー・シャーク)
体長 …… 30~56センチメートル

体型
 ひょろ長い葉巻型で、頭部は短く丸く膨らんでおり、鼻孔には非常に短い皮弁(ヒゲ)がある。緑色の大きく丸い目が頭部の前方にあるが、視力はよくない。目の後方の頭部上面に大きな噴水孔がある。口は短くほぼ真横に伸び、伸縮する吸盤状の唇に取り巻かれる。上アゴの歯列は30~37本、下アゴは25~31本で、本数は成長すると共に増える。上アゴと下アゴの歯の形状は極端に異なり、上アゴの歯は小さくて細く直立し、なめらかに尖っているのに対し、下アゴの歯は大きくて幅広くナイフ状で、全ての歯がつながってノコギリのような刃を構成している。エラは5対で小さい。

 いずれのヒレも小さく、おおむね台形である。第1、第2背ビレともにトゲは無く後方に寄っており、第1背ビレは腹ビレのすぐ手前、第2背ビレはそのすぐ後ろにある。第2背ビレのほうがわずかに大きく、腹ビレはどちらの背ビレよりも大きい。。尻ビレはない。尾ビレは広く、下葉と上葉の大きさはほぼ同じで、上葉には明瞭な欠けがある。皮歯(鮫肌)は角張って平たく、若干中央がへこんで周囲が持ちあがる。

体色
 背側が黒っぽい茶色で、腹側にいくにつれて明るくなり、腹は白い。よく目立つ黒色の帯が、首まわりのエラの辺りで衣服の襟のように身体を一周している。これは、小魚の影に見せかけるための「疑似餌(ぎじえ)」だと推測されている。群れを作ることで疑似餌の効果は上がると思われ、この仮説が正しいとすれば、ダルマザメは自身の影で大型の獲物をおびき寄せる、珍しいタイプの海洋生物であることになる。

 腹面には鮮やかな緑色の光を発光させる器官が密に並んでいる。この発光器官は深海の生物ではよく見られるが、下方からから見られたときに海面表層部からのわずかな光に同調して溶け込み、自分の影を消す「カウンターイルミネーション」という効果がある。この自力発光はあらゆるサメ類の中で最も強く、水揚げの3時間後にもまだ光っていたという記録がある。個々の発光器は皮歯(鮫肌)を取り巻き、肉眼で視認できないほど小さいが、これは至近距離でも発見されないようにするためであると見られる。
 この効果に対応できる光強度の範囲は限られているので、ダルマザメは日周鉛直運動によって、その時刻や天候での最適な光強度を探索していると見られる。

 ヒレのエッジは透明に近いが、尾ビレの先端だけは黒い。

分布
 全世界の主要な熱帯、亜熱帯、温帯の外洋、特に水温摂氏18~26℃の海域に分布する。大西洋では、西はバハマ沖・ブラジル南部、東はカーボベルデ諸島から南アフリカまで。インド洋から西太平洋では、モーリシャス諸島からニューギニア・タスマニア・オーストラリア・ニュージーランド・日本沖合まで。東太平洋では、オセアニアのフィジー諸島からハワイ諸島・ガラパゴス諸島・イースター島までで採集されている。温暖な年にはアメリカのカリフォルニア州まで進出すると推測される。

 捕獲記録から、一日に水深3000メートルもの日周鉛直移動を行うことが分かっている。日中は水深1000~3700メートルの海域にいるが、夜は水深80~90メートルにまで浮上する。だが、海面にまで出ることは珍しい。他のヨロイザメ類に比べて、低い酸素量の水域にも耐える。島の周辺でよく見られるが、これは繁殖のため、または大型の獲物が集まるためと考えられている。北東大西洋では、小型な個体は南方、大型な個体は北方に分布する。雌雄で棲み分けているというデータはない。

生態
 深海に生息する、比較的珍しいサメ類である。
 主にイカなどを常食とするが、自分よりはるかに大きい動物も攻撃し、生きたまま体表の一部の肉を削り取って食べるという特異な生態を持つ。まるでディッシャーかクッキーカッターですくいい取ったように、きれいに半球状にくぼんだ傷跡ができることが英名の由来であるが、これを可能にしているのは、ダルマザメの吸盤型の口の強い吸引力と、特殊に発達した下アゴの、鋭いノコギリのような形状の歯列である。ただし、このサメ類は体長30~50センチメートルほどの大きさであるため、スプーン1杯分(直径5センチメートル、深さ7センチメートルほどのクレーター状)の大きさの肉しかかじり取ることができない。
 このような摂餌方式であるため、口やノドは高度に特殊化している。まず、頭部の噴水孔を閉じてノドの基舌骨を引き込むことで口内の圧力を減少させて、獲物の体表との隙間を吸盤状の唇で塞いで身体を固定する。次に、細い上アゴの歯でささえながら、下アゴの歯で肉に切り込む。最後に、獲物が暴れる力をうまく利用して自分の身体を回転させることで、肉を丸くえぐり取る。このとき、下アゴは細かく振動し、電動ナイフに似た原理で肉の切断を助ける。強力な吸引能力は、イカなどの小型の獲物を捕える時にも役立つ。

 餌の対象となるのは、全ての中~大型海洋生物が狙われる可能性があるが、カジキ、マグロ、サメ、マンボウ、クジラ、イルカ、オットセイ、アザラシ、ジュゴンなどの大型の海産魚および海産哺乳類である。さらには、潜水艦でさえ攻撃を受けた記録がある。ダルマザメの攻撃は、大型の動物に致命傷を与えるには至らないどころか、攻撃されたことにさえ気づかせない程度であるため、多くの場合、生き延びることができる。それゆえ、マグロなどがこの独特な傷跡を残したまま市場に並べられることも少なくない。過去にはこれがダルマザメによるものだとは分からず、市場関係者や研究者を悩ませていた。当時はその原因として、ヤツメウナギ、細菌、寄生虫など様々な仮説が提唱されてきたが、1971年にアメリカ商業漁業局(のちのアメリカ海洋大気庁)によって、本種が原因であることが発見された。

 食害頻度が非常に高い地域もあり、ハワイ沖ではほぼ全個体のハシナガイルカの成体が食害痕を持っている。病気などで弱った個体はより襲われやすいが、食害された個体の成長や繁殖への影響は不明である。なお、本種がクジラ類の体表につけた傷は、個体の識別に有用なものとなっている。

 サメとしては小型の体格でありながらも、自分よりも大きくて力の強い大型の動物から食物を得ることができるダルマザメの戦略は、餌の少ない深海という環境に適応したひとつの有効な手段と言える。
 似ている食性の魚類としては、イソギンポ科で「掃除魚」と呼ばれるホンソメワケベラに擬態して、掃除屋のふりをして近づき相手の皮膚やヒレを食い千切るニセクロスジギンポがいる。

 しかし、その一方で小型の魚類を丸ごと食べることもあり、自身の体長に匹敵する体長30センチメートルのイカを丸ごと食べることもある。頭部の軟骨が高度に石灰化しているため、強く噛みつくことができる。小さなヒレと弱い筋肉を持つ待ち伏せ型捕食者で、ほとんどの時間を水中に漂って過ごす。浮力を保つために、肝臓重量の35% は密度の低い脂質である。他のヨロイザメ類に比べて骨格密度が高いため、肝臓はより大きく、脂質含有率も高い。大きな尾ビレにより、高速で移動する獲物にも瞬時に襲いかかることができる。

 歯はよく生え変わるが、下アゴの歯は1本ずつではなく一度に抜け落ちる。計算上、ダルマザメが幼体から体長50センチメートルに成長するまでに下アゴの歯は15回生え変わり、435~465本の歯が抜け落ちることになる。カルシウムを再利用するため、抜けた歯は飲み込む。普通のサメの網膜は網膜神経節細胞が水平線状に並ぶが、このサメは円状に集合し、前方の獲物を注視しやすい。群れで揃って泳ぐことが知られており、疑似餌の効果を増大させるだけでなく、大型捕食者からの反撃も防いでいる。

 他のツノザメ類のように、胎盤を形成しない胎卵生で、胎児は卵黄で育つ。メスは機能する子宮を2つ持ち、1回に産む個体数は6~12尾である。胎児の卵黄の吸収速度は遅く、長い妊娠期間を必要とすると推測される。出生時の幼体は体長12~15センチメートル。オスは体長36センチメートル、メスは体長40センチメートルで性成熟する。

人との関わり
 身体が小さく、外洋性で人と遭遇する可能性が少ないため、危険だとは考えられていない。本種が人間を襲ったと考えられる事故は数例あるが、食害痕は治癒可能である。

 1970年代に、アメリカ海軍の潜水艦が用いていたソナードームの合成ゴム製カバーが食害され、中のオイルが漏れるという事故が発生した。発生当初は敵国の未知の兵器による攻撃も疑われたが、ダルマザメの仕業と判明したため、繊維強化プラスティック製のカバーに換えることで解決した。1980年代にも潜水艦の電線ケーブルが攻撃されたが、これも繊維強化プラスティックによって解決された。海洋学研究の機材や海底ケーブルが攻撃された例もある。
 魚網やマグロなどの重要魚種を食害し、商業漁業に悪影響を与えている。このサメ自体は小さいために経済価値はなく、遠洋延縄(はえなわ)漁、中層トロール漁、プランクトンネットなどでまれに混獲されるのみである。個体数の減少は確認されていない。


オオメコビトザメ(大目小人鮫) Squaliolus laticaudus
ヨロイザメ科ツラナガコビトザメ属

英名 …… Spined Pygmy Shark (スピンド・ピグミー・シャーク)
体長 …… 15~28センチメートル

体型
 身体は細長く紡錘型で、円錐形に大きく尖った鼻先が特徴である。
 第1背ビレにはトゲがあるが、直立していない第2背ビレにはトゲがない。第1背ビレにしかないトゲと直立しない第2背ビレを持つサメ類は、本種と、同属のツラナガコビトザメだけである。
 第1背ビレのトゲは、メスでは皮膚に覆われているが、オスでは露出している。第1背ビレは小さく、胸ビレの後部にあたる位置からつく。第2背ビレは第1背ビレよりも長いが直立していない。胸ビレは短く三角形状で、腹ビレは長いが、尻ビレは無い。尾ビレは大きく、その上部と下部は大きさと形がほぼ同じだが、上部にはV字型の欠けがある。

 目は大きく、口には薄く滑らかな唇と、上アゴに22~31本、下アゴに16~21本の歯がある。上アゴの歯は幅が狭く尖っているが、下アゴの歯は基部が隣の歯と結合して、つながった刃を形成している。

体色
 全身が濃い茶色から黒色で、ヒレには白っぽい透明なふちどりがある。非常に優れた発光体が腹部を密に覆っており、これは鼻先や目、鼻孔の周辺にまでみられるが、背中にはほとんど無い。この発光器官は、下方から見たときに海表面からのわずかな環境光にとけ込んで自分の身体の輪郭を隠し、外敵からの発見を防ぐのに役立っていると思われる。

分布
 ほぼ世界中の熱帯に分布し、西大西洋ではバミューダ諸島からアルゼンチン北部、東大西洋では北フランス沖やマデイラ諸島などで見られる。インド洋では西部のソマリア沖でのみ報告がある。西太平洋では南日本、台湾、フィリピンで確認されている。深海魚によく見られる「日周鉛直運動」をおこない、日中は水深500メートルほどに位置し、夜間は餌を求めて水深200メートルほどの浅い海域に移動する。
 近縁種のダルマザメなどとは違って、海表面に近づくことはほとんど無い。生物の多い大陸棚に好んで生息するが、外洋に出ることは避ける。

生態
 サメという種族の多様性を示す見本のようなもので、現存するサメの中ではおそらく最小である。オスは体長15センチメートル、メスは体長17~20センチメートルで成熟する。栄養豊かな大陸棚の海に生息し、主に小型の硬骨魚やイカなどを捕食する。

 本種は同科の他種と同様に卵胎生であり、母親の胎内で胎児は卵黄を消費して成長する。メスは2つの卵巣を持ち、最大で12個の卵を持つとされているが、実際に1回に産まれる幼体の数は少なく4尾ほどであると推測される。幼体は体長10センチメートルほどで生まれる。

人間との関係
 オオメコビトザメは人間にとっては経済的価値を持たず、トロール漁での混獲によって捕らえられることもあるが、小型であるため普通は網にかからない。


ツラナガコビトザメ(面長小人鮫) Squaliolus aliae
ヨロイザメ科ツラナガコビトザメ属

英名 …… Smalleye pygmy shark (スモールアイ・ピグミー・シャーク)
体長 …… 15~22センチメートル

形態
 現存するサメ類の中で最小の種のひとつである。体型は葉巻型で鼻先は丸い。目は比較的小さく、その直径は頭部の大きさの40~70% ほどで、同属のオオメコビトザメの目の場合は60~82% である。鼻孔はほぼひとつで、口はほぼ一直線で薄い唇を持つ。上唇に2つの小さな突起があるが、これはオオメコビトザメには無い。上アゴの歯列は20~27本で、下アゴは18~23本である。上アゴの歯は細長く直立し、下アゴの歯はより大きくて幅広く、内側に向かって傾き鋭い先端を持ち、全体でつながった一枚の刃となる。5対のエラは小さい。

 ツラナガコビトザメとオオメコビトザメが属するツラナガコビトザメ属は、サメ類としては唯一、第1背ビレにトゲがあり第2背ビレに無い。トゲはオスでは露出するが、メスでは皮膚に覆われている。小さな第1背ビレは胸ビレの後端から始まる。第2背ビレは長くて低く、腹ビレ基底前半の上部に位置する。胸ビレは短くて丸く、腹ビレは長くて低い。尻ビレはない。尾ビレの付け根は細く、わずかな隆起線がある。オスはメスより胴体が短く、尾の部分が長い。尾ビレはほぼ上下対称な大きな三角形だが、上葉の先端には明瞭な欠けがある。皮歯(鮫肌)は平たい。

体色
 暗い褐色から黒色で、ヒレのエッジは少し明るい。腹面は発光器で覆われており発光する。

分布
 西部太平洋に散在し、南日本沖合、フィリピン、オーストラリア北部と東部から報告がある。陸地に近い海域の表層から中層、水深150~2000メートルの範囲で日周鉛直移動を行い、昼間は深部、夜間は浅部に移動する。

生態
 その生態はほとんど知られていないが、餌は主に深海に棲む遊泳性のイカ、オキアミ、エビ、またはハダカイワシのような小魚である。腹面の発光器は、捕食者から自身の影を隠す「カウンターイルミネーション効果」がある。他のツノザメ類のように無胎盤性の胎卵生で、出生時の幼体の体長は10センチメートル以下である。体長15センチメートルほどで性成熟する。

人との関連
 まれに漁獲されるが、身体が小さいために人間にとっての経済的価値は無い。
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