蘭の国から

富貴蘭を中心に我が家の植物栽培や自生地紹介等など

紫水~墨の話~

2014年06月11日 | 富貴蘭(墨)


今日は、昨日の墨の話の続きです。


墨の部分は、人間で言えば傷が治ってカサブタがポロッと剥がれた肌の状態によく似ています。

皮膚の表皮が欠損しており、その下の真皮の血が透けて見えるため赤みを差し、
また表面が滑らかで乱反射しないので、その色は一際鮮やかに見えます。

植物では血ではなく、葉緑素に置き換えて考えてください。

摺墨の墨を観察すると、墨の部分は濃緑の鏡のように見えます。
人間の肌だと、この部分は強光線に弱く、すぐに赤くなりますよね。

植物はアントシアニンを集積することによって、防御機能を働かせます。
泥軸の品種の墨は、濃緑にアントシアニンが重なり、暗紫色に見えます。

さらに表皮がめくれた弱い肌だとすぐに組織が傷つき、カサブタが出来やすくなります。
建国系などに見られるヤニは、この状態です。墨とヤニはしばしば混同されますが、物質としては全く別ものです。

そして栽培上重要なことは、この墨にはその部分に気孔が正常にある場合と、
異常(数が少なかったり、機能に異常があったり、気孔がなかったり)が見られる場合があります。

墨がきつくなっても成長が鈍らないタイプは気孔が比較的正常で、
成長が鈍るタイプは気孔の異常が見られます。

後者のタイプは、ベタ墨状になると窒息してしまいます。





写真は、紫水です。
















この紫水はあまり成長が鈍らないタイプで、筆で黒紫色を塗ったかのような墨を流します。

最近は墨芸のタイプがさらに増えつつあり、新登録の古朝鮮は何とも説明しづらい芸で、
私は『錆墨』と呼んでいます。

また従来墨と呼ばれている芸の中には、柿渋に近いフェノール系色素が沈着したタイプもあります。
このタイプだと青軸であっても黒い墨が流れているように見えます。

墨を語ると果てしなくなるので、今回はこの辺りで。
また品種ごとにご紹介したいと思います。

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