平成6年に出版された富貴蘭図鑑は、毎日日にち眺めてはあれも欲しいこれも欲しいと、夢見た事でした。

その中で私が一番気になって仕方なかったのが、153ページの天山でした。
ある業者さんに気になる品種があるかと聞かれ「天山が欲しい!」と答えると、
「変な物を欲しがるねぇ、どこがいいの?まぁ聞いといてやるよ。」と言われ返事を楽しみにしてました。
返ってきた返事は「3百だって。」・・・と手も足も、グウの音も出ませんでした。
それから随分と経った頃、墨だけのこの品種を見掛けるようになり、やっと手に入れることが出来ました。

縞はなくてもあの時の10分の1くらいの価格でしたから、決して安いものではありませんでした。
その後見掛ける度に、確か3度購入し、少し殖えた頃に縞が見えたりもしましたが、
数年でまた引っ込んでしまいました。
なかなか縞の木を見掛ける機会がなく、本に掲載されている木もその後縞が消えてしまったと聞きましたが、
一度だけ良い縞の木を見たこともありますし、どこかでひっそりとしていることでしょう。
この黒い部分がよく墨だと勘違いされますが、厳密に言えばこれは墨の部分が焼けたヤニのようなものです。
でも墨の範疇も広くとらえられるようになってきましたから、今日では広義の意味の墨と言えるでしょう。
黒墨とでも呼びましょうか。
墨については
以前長々と解説しましたから、興味のある方は読んでみてください。
さて現状色彩的には寂しいこの木ですが、これだけでも十分楽しめますし、おいそれと柄が出ないからこそ、
一生夢を見続けることの出来る品種だと思います。