前田さんの西隣り、金城さんの家では、三人の娘たちがこどもを連れて、実家に帰っていたため、十三名の大家族だった。西隣りは空屋敷で、後は竹林になっていて、その中に防空壕を二つ掘って、長女、二女とその子供たち、母親と十三歳のトミさんが一つの壕に。もう一つの壕には、防衛隊に入っていた三人の義兄が解散になって帰っていたため、父を含めて、四人の男が入っていた。そして、三女の金城ユキさんが、前隣りの前田さんの壕に入っていたのだった。
金城さんの家の壕の一つ、女、こどもばかりが入っていた壕に時を同じくして、入口から日本兵によって手榴弾が投げられ、入口に置いてあった大きな水瓶が割れ、中の水がこぼれて、壕の中がビショビショにぬれてしまった。金城さんのお母さんは、誰も声を発しないように指示した。二女の姉が
「どうせ、こんなにしていても殺されるんだから、自分たちで死のうね。舌をかんだら死ねるからやってみようね」といったので、やってみたが誰も死ねなかった。三女の姉(ユキさん)母子が隣の壕に入っているため別れ別れになっていたのでお母さんは、
「家族みんなでいっしょだったら、もう死んでもいいか」とポツンといった。
そこへ、三女の母子が、血相変えて壕に転がり込んで来たのだ。前田さんのお母さんの斬首の血を浴びて──。
「また、手榴弾が投げられる」というので、壕の中にある荷物を入口に全部積み上げた。じきに、二発の手榴弾が投げ込まれ、こどもたちが、怪我をした。
このさわぎを聞きつけ、隣の壕にいた金城さんのお父さんが、「家族がやられたらしい」ということで飛び出して来た。外で見張っていた兵隊がばらばらとかけ寄り、金城さんの両腕をおさえつけ、前の家までじりじりと引っ張っていった。ガジマルの切り株の上に「坐れ」と命令した。瞬時にスパッと白剣が首をはねた。
金城さんの家の壕の一つ、女、こどもばかりが入っていた壕に時を同じくして、入口から日本兵によって手榴弾が投げられ、入口に置いてあった大きな水瓶が割れ、中の水がこぼれて、壕の中がビショビショにぬれてしまった。金城さんのお母さんは、誰も声を発しないように指示した。二女の姉が
「どうせ、こんなにしていても殺されるんだから、自分たちで死のうね。舌をかんだら死ねるからやってみようね」といったので、やってみたが誰も死ねなかった。三女の姉(ユキさん)母子が隣の壕に入っているため別れ別れになっていたのでお母さんは、
「家族みんなでいっしょだったら、もう死んでもいいか」とポツンといった。
そこへ、三女の母子が、血相変えて壕に転がり込んで来たのだ。前田さんのお母さんの斬首の血を浴びて──。
「また、手榴弾が投げられる」というので、壕の中にある荷物を入口に全部積み上げた。じきに、二発の手榴弾が投げ込まれ、こどもたちが、怪我をした。
このさわぎを聞きつけ、隣の壕にいた金城さんのお父さんが、「家族がやられたらしい」ということで飛び出して来た。外で見張っていた兵隊がばらばらとかけ寄り、金城さんの両腕をおさえつけ、前の家までじりじりと引っ張っていった。ガジマルの切り株の上に「坐れ」と命令した。瞬時にスパッと白剣が首をはねた。