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p.27「友軍がいちばん恐ろしかった」。

2010-07-06 11:11:40 | ・本・記事。
リード文「あの日のことをおもいだすと、とてもねむれません。日本政府はこの責任をどうしてくれるのですか!?」

遠くに、近くにひっきりなしに聞える、迫撃砲。敵の砲弾をくぐりぬけ、飢えをしのいできた人びとは、昼の緊張と疲れとで防空壕の中で、泥のように、眠りこけていた。
 沖縄は南部にある糸満市字前栄平での出来事。夜も十一時頃の事であろうか、突然、バラバラッと、数名の人かげがあらわれた。軍刀を腰につけた日本兵であった。庭先に掘ってあるあっちの壕、こっちの壕の入口を足でけり、ドンドンたたき、口ぐちに何かわめいている。
 前田さんの庭先に掘られた壕の一つに、前田さん母子四人、与那城のよし子さん、そして金城ユキさん(当時、二十四歳、主婦)母子三人が、身体を寄せあって入っていた。この庭には、ガジマルがうっそうと生い茂り、根をはっているため、この壕の入口は、大人がやっと一人出入りできるくらいの狭さだった。外のただならぬ気配に入口近くに寝ていた前田ハルさんの母親が、電げきを受けたようにとび起きた。
 「この壕には何名いるか」
という、男のするどい怒声。
  前田さんのお母さんは、びっくりして、ろくに口もきけず、
 「フィフィ」
と、言葉にはならない声を発しながら、壕の入口に首をのぞかせた。そのとたん、日本兵の長い軍刀がくらやみにおどり、前田さんのお母さんの首が闇の中にとんでいった。

* 用字は原典どおり。入力ミス以外は…。

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