ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

映画「パール・ハーバー」間違い探し第三次攻撃

2012-05-09 | 映画


というわけで、「パール・ハーバー」について書くのも4日目になりました。
やっと真珠湾攻撃の部分にたどり着いたので、今日は寄り道せずに参ります。
出撃前夜、日本軍の搭乗員たちが遺書をしたためる艦内が映され、日本語で

「父上様 自分は使命を果たすため出撃します。
喜んでお国にわが身を捧げる覚悟でおります。

たとえこの身が滅ぶとも我が一族の誉れとなることを祈ります」

というナレーションが重なるこのシーン、ただでさえ狭く空気のすくない艦内で
蝋燭をボーボー燃やしているのも謎です。
連中にはアジアの人々は蝋燭燃やす、というイメージがあるんですかね。



で、これ見てくださいよ。
これは、艦内の神棚ではなく、どうやら隊員個人の「マイ・仏壇」ですね。
どこの東南アジアの祭壇?みたいな寝殿造りのミニチュアの前に並べられたのは

仏像
開きっぱなしの(多分)お経の本とそこに乗っけた数珠
仏壇の前にあるような鐘
甕に入った、おそらく焼酎かドブロク
画鋲で留められたお経の文句
日本刀
蝋燭は確認できるだけで14本

おーい!だれかこいつらに艦内にあったシンプルな神棚の写真を見せてやってくれ!
「雷撃隊出動」でも、実写フィルムでもいいから。
そして、仏壇と神棚の違いを説明してやってくれ!

そして、仮にこんな仏壇があったとしても、仏壇に褌のお尻を向けて着替えをするような
不信心な日本人は少なくともいないということも教えてやってくれ!

・・・・・全くもう・・・これ、わざとやってるでしょ?褌と日の丸と仏壇のコンボ。
褌の締め方もさることながら、この隊員がこの後お腹に巻きつける日の丸に書いていある
日本語が、全く解読不明。
漢字でもひらがなでもない、象形文字。
そういえば、この酒びんに書いてあるのも漢字のようで全く読めませんね。



ごまかしているけど、栗という字だけ、アップにしても大丈夫だったんでしょう。
よくよく見ると、一つとして正しい漢字はありません。
どうやら中国人スタッフすらこの場にはいなかった模様です。
おまけに、寄せ書きの上にわざわざ杯を置いて、先般仏壇に供えてあったどぶろく瓶から
お酒を注いでいます。
ワインじゃないんだから、お酒を注ぐ時は、隊員に猪口を持たせてやってくれ!
ちょっと調べれば、特攻隊出撃のシーンで、指令が隊員に酒をついでいるシーンぐらい
すぐ出てくるだろうに・・・。



思わず目が釘付けになってしまった不思議な乾杯シーン。
皆、杯を目の上に持ちあげ、それを全く動かさずに、頭だけを下げるという、
やってみたら非常に難しい乾杯をしています。

それにしても、民族独特の動きや、ある場合の身のこなしというのは、ことほどさように、
他の民族には決して真似できないものなのですねえ。
日本に住んでいて同じような風体をしていても、民族が違うと、考え方、行動、倫理や道徳、
その他感情の表わし方やなんかまで全て「日本人ぽくない」部分は分かってしまうようなもので、
ましてや海を越えた別人種ともなると、酷いものです。
まあ、要するにそう言う奴が他文化を描くな、って話なんですが。
(さすがクリント・イーストウッドは、賢明にも製作を日米で分けたということで、偉大でした)

 

出撃前、鉢巻きを締める隊員・・・・はいいんですが、鉢巻きの字が意味不明。
もう、わけわかんない漢字を創作するのやめてくれんかな。
でもって、この隊員は、幾らなんでもこんな鉢巻きに何も意見具申しなかったの?
漢字の無い国の出身?それとも、英語しかできない三世?

 

搭乗員の出撃シーンに続き、なぜか参謀飾緒をつけた士官が、事業服の整備員に挟まれて
帽振れをするの図。
この帽振れシーンの並び方は、全く順不同のようで、カオスです。



 

朝もやの開けたパール・ハーバー。
ここに、戦前は存在しなかった艦船が見えるらしいです。



問題のシーン。野球場で上を見上げる子供たちに向かって
「逃げろ!」と叫ぶ後部銃席の搭乗員。
いくら日本人でも、しかもアメリカ人に向かって声をかけようかって人なんだから、
「Get Away!」
でいいんじゃないかなあ。
この作戦に参加しているのは海軍のエリート搭乗員で、英語教育もある程度受けていたはずだし。
このシーンが「アメリカで行われた試写会には無かった」という件ですが、もっと悪質な説もあり、
それはシーンはカットされなかったけど、そのかわり隊員は
「Fu○K You!」
と叫んでいた、というものです。
でも、まあこれは悪意が回りまわって派生した噂だと信じたいですね。
何より隊員の顔がそんなことを言っているようにはとても見えない。



いよいよ攻撃開始。
99式艦爆ですね。こっちのは小隊長機、で、向こうも小隊長機?
ブルーの認識ラインを巻いた飛行機が、赤のと一緒に飛んだのですか?
そもそも、車輪カバーの塗装がブルーというのを、わたしは見たことが無いのですが・・・。
真珠湾攻撃のときの認識ラインはみんな赤でしたよね?



わたし、ここ、知ってまーす。
確か、マウイのどこやらホテルのドライブウェイ・エントランスだったと思います。
逃げ惑う一般人、執拗に攻撃を加える日本機。



この映画では、日本軍は徹底的に病院や一般人、海上に浮かぶ兵を射撃したことになっており、
このあまりに悪辣な創作が、過剰な演出としてまた不評を買いました。
このあたりについては、また稿を別にします。(って『まだやる気なのか?』)←イヤミ



ちょこちょこ出てくるメイド・イン・ジャパンのものにも、ふんだんにヘンな表示が書かれています。
これは・・・三号爆弾だと思われますが、爆弾の表面に「型式」「製造番号」とだけ(しかも誤字で)
書かれているものの、それだけなので、型式も製造番号も当然ナゾのまま、爆発しました。
どこかで「投下しても爆発しないのはおかしい」という説を読みましたが、もしこれが
三号爆弾であれば、遅延信管を採用していたので、一定の秒数後爆発するという、
この爆弾の正しい爆発のしかたをちゃんと再現しているということになります。

この同じ爆弾がアリゾナで芋を剥いていた黒人の兵隊の目の前に落ちて、後ろのペラが
「ぴ」
と止まり、兵隊が「さのばび」まで言ったところドカン、と爆発していました。

余談ですが、日本の戦闘機エース岩本徹三は、この三号爆弾を扱ってラバウルやトラック島
付近で大きな戦果をあげたと言われています。
かれの卓越した飛行技術が、この爆弾の性能を最大に引き出した模様。



91型魚雷(のつもり)を搭載した飛行機・・・はいいんですが、なぜか機体に
「鳥海」と、ヘタな字で、しかも左から右に向かって書かれています。
鳥海所属機っていう意味(のつもり)かな?

 

零戦隊のコクピットに貼られた「アリゾナ」の写真と、彼女のポートレイト。
日本の搭乗員も一人一人には家族がいて恋人がいて・・・、と、
取ってつけたように表現して、全体的にバランスを取ろうとしています。(取れてませんが)
それにしても、この女性は、妙な服装ですね。
チャイナ服のような立ち襟の色ものブラウスの上にブレザージャケット。



さて、ここで前回も触れた欺瞞的ディズニーの、この映画でのアフリカ系に対する扱いについて。
艦内で行われるボクシングの試合。
黒人兵が皆で自分たちの代表の賄い兵を応援し、通りかかったダニーも彼を応援します。

この黒人や、前回指摘したルーズベルトの執事にわざわざ黒人を配した理由。

これは、一概にディズニーの偽善的キャスティングとばかり言えない事情があります。
現在、アメリカの映画界には、「すべて白人だけで映画を作ってはいけない」
というとんでもないルールがあるのをご存知ですか?
俳優協会だか、人権協会だか知りませんが、何しろそういう協会の指導により、
「必ずどこかに黒人をキャスティングすること」
と決められていて、例えばチームがあればその中に何人か、組織上層部も白人だけではだめ、
と言う風に必ず一定の人数黒人を入れないといけない訳です。

(皆さん、警察などのボスに、やたら黒人が多いと思ったことはありませんか?)

「パール・ハーバー」を映画で描くことになったとき、本来なら全くありえなかった黒人の出演者を
どこかで使わなくてはいけない、というこの縛りは、当初スタッフを困らせたことでしょう。

ところがどっこい、実際にウェスト・バージニアで雑用をしており、日本軍の襲来の際、
死亡した水兵の代わりに機銃座に座り日本軍機と戦い、その功績により黒人初の
海軍十字章が贈られた、ドリス・ミラーという黒人兵が実在しました。

そこでわざわざこの黒人を採用。ディズニーにとって一石二鳥ですね。



艦長にボクシングのチャンピオンになったことを「艦の誇りだ」と言われ、涙ぐむドリス。
さすがにここまで露骨なのはやり過ぎでは・・・・。

もし、当時、アメリカでこの映画に描かれているように黒人が扱われていたのなら、
公民権運動は起こらずにすんだかもしれませんね。



この映画では撃墜された日本機が、わりと原型をそのままとどめていることが多いのですが、
この零戦も、地面に激突したのに、どうやら胴体着陸でもしたらしく翼が無いだけで無傷。



全くこちらも原形をとどめたままの搭乗員の白いマフラーが、相も変わらず訳のわからない、
解読不明の機体に書かれた漢字の上になびきます。

アメリカに住んでいると、よくドアのノブに引っ掛けられている、インチキジャパニーズや
チャイニーズの宅配デリのメニューのロゴが、こういう雰囲気です。
アメリカにおいてアジア風と言うと使われるのがこの字体ですが、日本では見たことがありません。



恐る恐る近寄ったアメリカ兵が、機体の日の丸を蹴飛ばすシーン。
自爆した飯田大尉の遺体はアメリカ軍によって丁重に埋葬されたということで、
今でも突入地点には碑が建てられています。
「相手の勇気に敬意を表する」シーンを入れれば、単純なアメリカ人は
「これだけやられたのに懐の広い俺たちのアメリカ!」となったのではないかと思うのですが、
それより何より「憎しみをあおる」のが映画の目的だったってことなのでしょうか。


 

やたら運動性能のいい99式艦爆の雄姿。
これだけ運動性能が良ければ、零戦必要ありませんよね。


 

聯合艦隊とハワイで日本軍の襲撃を受ける米艦隊。
わたしにはまったく認識できませんが、どうやら多数のシーンに、当時無かった艦船が
多数映っていた模様。

 

何となく嫌だったシーン。
多数運ばれてくる負傷者をトリアージするために、看護婦のイヴリンが得意になって取りだす、
真っ赤な口紅。
これで額に「M」(minor)歩ける傷、とか、この人のように「F」(fatal)致命傷、などと
書きこむんですが、こんなもんで額にFとか描かれたまま死ぬのって、すごくイヤ。
男の人なら、許せるのかしら。

それにしても、この頃の口紅って、こんな色ばっかりだったの?

 

真珠湾攻撃の知らせを受け、手に持っていた書類を落として驚いて見せるルーズベルトと、
俳優協会の取り決めで、もう一人くらい黒人を出さないといけないため、
無理やり黒人であったことにしたらしい、ルーズベルトの執事。

そして、このシーンです。
少し長いですが、ちょっと読んでみてください。


ル「今すぐ反撃を負わせなくてはならない 同等の痛手を日本に負わせるのだ」
陸「大統領閣下 事実を無視した結果が真珠湾です 過ちは繰り返せません
  長距離爆撃機の発進基地は?ミッドウェイは遠すぎ、ソ連は設置を拒否」
海「海軍旗の航続距離は短く 空母を敵地に接近させると失う危険があります
  空母なくして侵略は防げません」
ル「リスクを冒さず勝利を得られるとでも?戦争にリスクは付き物だ」
陸「大変なリスクです 今侵略を許せば奴らは4週間でシカゴまで攻め入ります」

ルーズベルト、一瞬押し黙ってから

ル「諸君はー脚が悪くなる前のわたしを知るまい私は頑強で誇り高く傲慢だった
  今の私は絶えず自問してる ”なぜ神は私を車いすに?”
 今の君らの目と同様 米国民の目に敗北の色を見るとき私は思う
 “神はこのために私に試練を与えたのだ 我々は挫けぬとおもいおこすために”」
軍「閣下のご要望は実行不可能です」

ルーズベルト、いきなり驚く皆の前で車いすから立ち上がる

「この私に不可能と言うな!」(ぜいぜい)

これがルーズベルトシーンの見せ場なのですが、こうして見てもどうもわかりません。
陸海軍共に、一体何を主張しているのか?
ルーズベルトの言っていることの、何が不可能なのか?
ルーズベルトが敵地に攻め込めといっているのに対し、提督は
「いま侵略を許せば・・・・」
全然話が噛みあっていないように思うのはわたしだけでしょうか。

映画でさらりと一度見ただけでは、ルーズベルトが車いすから立ち上がってパフォーマンスを
するシーンで圧倒されて、何しろ彼は自分のリーダーとしての意志を貫いた(らしい)と
わかるものの、内容がさっぱり意味不明。

なんだか、SF活劇映画の、悪者たちの会議(それらしいけど全く中身が無い)みたいです。
雰囲気だけは理解できる、という知的レベルのアメリカ人に向けた、
「強いリーダー、ルーズベルト」を表現するためのシーンだったのでしょうか。

だいたい、大統領が「戦え」といってるのに、閣僚でもあるまいに、
軍人たちが大統領に「不可能です」なんて、言うわけないと思うんですが。
軍人は戦えと言われれば戦うのが使命でしょ?

とはいえ、わたしはルーズベルトの開戦に際しての軍指令について何も知りません。
本当にこんなやり取りがあったのだったら謝りますが。



人形のように死体の漂うアリゾナの付近。
閉じ込められた艦内から通風口に手だけ出し、次々と溺れた者の手が力を失ってだらりと
垂れていく、それはもうこの世の地獄で、実際にあのようなものを見たら、彼らが生涯
「リメンバー・パールハーバー」と叫び続けたとしても仕方がないことに思われます。

今から溺れて死ぬのだと悟る機関部の兵士の表情、「That’s it!」(もうだめだ)と叫ぶ声、
いきなり死に直面した兵士たちの死の恐怖がこれでもかと描かれ、おそらく何も知らない
アメリカ人なら、これを観終わった直後、日本にもう一発核を落としたい、というくらい、
憎しみと復讐心に心が燃えあがったのではないかと思われます。

ここまではよろしい。
実際の死の恐怖など、映画ではとても表せるものではないし、その史実の片鱗でも映画で
伝えることに努めた、この映画の姿勢そのものは、非難されるものでもありません。

ただし

これに続く東京大空襲で多数犠牲になった日本の一般市民の被害をもちゃんと、
公平に描いていれば、の話ですが。



と言うわけで、次回「パール・ハーバー」特別編「東京大空襲の巻」に続く!



 



最新の画像もっと見る

post a comment

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。