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国債ポスターと戦争映画〜戦艦「マサチューセッツ」

2016-11-25 | 映画

戦艦「マサチューセッツ」には資料として
戦時中のポスターなどがいたるところに展示されていました。
今日はそんな戦時「アート」をご紹介していきます。

まず冒頭は、おなじみウィリアム・ハルゼー提督。(ですね?)
色々と逸話が多く、当ブログでも「米海軍アイスクリーム事情」とか、
「マケイン中将と台風 」などのエントリにご登場願ったわけですが、とにかく
アメリカでもこのキャラクターは大変人気があったそうです。

台風のコースを読み違い、共和党のマケイン議員のお爺ちゃまである
ジョン・マケインと一緒になって台風への対処を誤り、艦隊の駆逐艦
3隻を沈めてしまった時も、その失敗にも全く学習せず、台風の進路を読み違え、
同じ状況でまたしても大損害を艦隊に与えた時も更迭にはなりませんでした。


ひとえに国民に人気があったからです。
 
このようなハルゼー大将を使ったポスターは、その人気をうかがわせるが如く、
いくつも制作されたようで、これもその一つ。

(注:ここまで書いておきながらこれがどうやらハルゼーではなく
アイゼンハワーだったことがcoralさんのコメントで明らかになりました。
謹んでお詫びしますが、ハルゼーのことを書きたかったので
この部分はそのまま残します<(_ _)>)

bondというのは公債のことで、戦時中アメリカでは「戦時国債」
を買うことによって戦っている軍隊を応援しよう、という宣伝が
いろんな形で行われています。

この国債は「リバティボンド」といい、なんと喜劇王チャップリンなどは
これを宣伝する「THE BOND」という映画まで自費で作っているのです。

Charlie Chaplin - The Bond (1918)


仏頂面で矢を放つキューピッドの子供が笑いどころ?
 

ただしチャップリン自身は基本反戦主義者で、この映画もいわば保身のために
しぶしぶ作ったとも言われており、また、彼自身アメリカ国籍を取っておらず、
こういった要素からアメリカの保守派からは攻撃されつづけました。

さらに戦後はマッカーシズムの「赤狩り」によってアメリカを追われ、
その左寄り思想が「ナイト」位の授与を遅らせたという話もありますが、
ここでは関係ないので省きます。

ポスターの「Back 'em up!」は「彼らを支援しよう!」って感じですか。



艦内はとにかく広いので、定期的に行われる「マサチューセッツ」や、
ここバトルシップ・コーブの運営に関する会合、青少年のキャンプ、
セミナーやパーティなどのイベントのためのスペースもあります。

その壁にもこのようにポスターが飾られているわけ。



「銃後の守り」
これも戦時国債を買いましょう、のポスター。
第3次戦時国債が売り出された時のものです。


 
すべてのアメリカ国民が 1ドルの「戦時スタンプ」を買ヘば、
「ミステリイシップ」シャングリラができます

あなたの余った小銭で東京を爆撃しませう 

戦時スタンプを買いませう
あなたのアルバムをスタンプで埋めませう

(戦時調の文章にしてみました)

空母「シャングリラ」は1943年に起工し、翌年には就役、
おそらく国民のこういった寄付活動の末資金を調達したのでしょう。

「シャングリラ」という理想郷の名前が軍艦になるのは
アメリカとしては珍しいことのように思われますが、
これは、東京空襲の後、ジミー・ドーリットルが記者会見で

「(攻撃機の)発進地はシャングリラ」

と答えた直後に起工したことからきています。
ポスターに「東京を爆撃」とあるのも、そういう経緯からでしょう。



これも子供を使った公債のポスター。

「この子の未来を守りたい」

というところでしょうか。



戦時公債の名前も発売されるたびに少しずつ変わったようです。

「彼らはシーレーンを切り開き続ける
ヴィクトリー・リバティ・ローンに投資しましょう」



「火を放て!」

 

クリスマスには「自由と地の平和のために」
戦時国債をクリスマスプレゼントに。

貰った方は全く嬉しくないような気がするんですが。


さてここからは戦争映画のポスターなど。

ロナルド・レーガンとナンシー・デイビス共演の映画。
もちろんこのナンシーとは、のちにレーガン夫人となる女優です。
このとき、ナンシーは看護中尉を演じています。

なんでフランス語のポスターなのかわかりませんが、フランス語では

「日本海のコマンド」

原題は英語で

「 Hellcats On The Navy」 

日本語では「勝利への潜行」として公開されたようです。
なんとレーガンの潜水艦ものねえ・・。
冒頭にはチェスター・ニミッツもでてくるというし、
アマゾンにDVDがありましたので、注文してみました。
もし面白かったらここでご紹介しますが、アメリカのポスターには

「DOWN.....DOWN..... DOWN.....

とあります。
潜水艦なんだから沈んていくってことで、

DOWN.....DOWN..... DOWN.....

の方がいいんじゃないかな(提案)

ヘルキャット「オン」ザネイビーというタイトルからも、

このポスターからも、潜水艦ものに全く見えないと思うのはわたしだけ? 



ケイリーグラント主演、「デスティネーション・トーキョー」
ええい、どれもこれもトーキョートーキョーと(イライラ)

というのもこの一連の映画、つまりはドーリットル隊の東京空襲が
それまで押され気味だった日本軍に圧倒的な敗北のきっかけとなった、
ということを喧伝されていたからこそ生まれているのです(アメリカ的に)

映画「パールハーバー」でも、東京空襲が我々のターニングポイントだった、
みたいなことを最後に言わせていましたし、あちらもそういうことにして
目一杯プロパガンダを行ったということが映画のテーマに現れています。

で、この映画ですが、又しても主人公は潜水艦の艦長。

米潜水艦コッパーフィン(銅のヒレ)は極秘命令を受けサンフランシスコを出発。

彼らの任務は敵国日本の東京湾に潜入、途中で合流する予備役将校を
東京にスパイとして潜入させ、それらの情報をUSS「ホーネット」、
つまりドーリットル隊に送り彼らの計画を成功させることだった・・。

という内容。
その効果、日本側に与えた心理的ショックは確かに大きかったですが、
実際は結構しょぼい戦果だったことはなかったことになっております。
これは、戦後のドーリットル映画すべてに言えることですが、
これも結果よければすべてよしということなんだと思われます。


グレン・フォード主演「トルピード・ラン」



この題名からもしやと思ったら、やっぱりこれも潜水艦ものでした。
日本公開の題名は「雷撃命令」だそうです。


潜水艦「グレイフィッシュ」の乗組員士官ドイル(グレン)は、
真珠湾攻撃で日本軍の飛行機を運んできた「SHINARU」
(実際にはまっったくありえない名前。梓鳴とか?志稔とか?)
を探していました。

その護衛船団「吉田丸」にはフィリピンで捕虜となった
彼の妻と娘が乗っていたのです・・・・・って、
ここでもうツッコミどころが満載なのですが、まあいいや。

運良くシナルを見つけたグレイフィッシュですが、艦長が
吉田丸にいる妻子の命の危険から止めるのにもかかわらず、
ドイルはイケイケで攻撃を開始してしまいます。
そして、グレイフィッシュの放ったトルピードはランして、
輸送船に見事大当たり。沈没させてしまいます。

日本軍は潜水艦の救出を拒み、グレイフィッシュも
乗員を誰一人救出することができませんでした。

さらに復讐心に燃えたドイルはシナルをやっつけようとしますが、
失敗し、命からがら真珠湾に帰港しました。

彼を陸上勤務にしようとする上の命令を断っても、
ドイルはシナルと戦うことを選び、哨戒に出たアラスカで
ついにかれは宿敵シナルに再会するのです。

グレイフィッシュがシナルに魚雷を放つと同時に、シナルの護衛である
駆逐艦が撃った魚雷がグレイフィッシュに命中(あちゃー)。

しかしラッキーなことに乗員は全員マンセン・ラングを着用し、
脱出した後駆逐艦で帰国の途につくことができました。
その航路途中、彼らはこのように言葉を交わすのでした。

「俺たちはシナルを沈めた」(きりっ)


・・・・・ほんまかーい!

と観客全員に突っ込まれてこの映画は終わります。



パワーがタイトルに関係あるのかと思ったら違いました。
タイロン・パワーという俳優の名前でした(笑)



アン・バクスターと共演したこの「潜行決死隊」
「Crash Dive」という映画ももちろん潜水艦ものです。

こちらは東京という言葉が出てこないなと思ったらなんと、
バリバリの恋愛映画でした。

 意思に反して潜水艦勤務になった海軍中尉(タイロン・パワー)。
艦長つまり上司の恋人(アン・バクスター)を知らずに好きになってしまいます。
これがまた悪い女で、二人ともキープしてたりするんですが、
男たちの潜水艦はともかくもドイツの潜水艦基地を粉砕して無事帰還。



タイロンパワー、これタバコ吸ってませんかね。
潜水艦でタバコ吸うってあなた・・・。 

女の取り合いをお預けにして戦った2人は和解し、凱旋帰国後、
彼女はイケメンのタイロン・パワーを選んで
めでたしめでたし。

って、めでたくないわ!(と艦長がひとこと) 

 

おしまいですが「マサチューセッツ」シリーズは続く。 

 



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4 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
冒頭の写真 (Coral)
2016-11-25 14:02:01
エリス中尉

冒頭の写真は、制服が陸軍の多分ジャンパータイプのものだし、ハルゼーとは似ているけれど、アイクだと思いますよ。
返信する
ほんまかーい! (エリス中尉)
2016-11-27 10:40:56
と映画のオチに突っ込んでいる場合ではなかったですね。
確かに改めて調べてみるとこれは紛れもなくドワイト・アイゼンハワーでした。
ご指摘ありがとうございます。
一応「ですね?」と控えめな表現をしていたからセーフってことに・・ならないか。
返信する
同じく冒頭の写真 ()
2016-11-27 10:43:53
ご無沙汰しております。
入間航空祭は、天気予報に騙されて、他の予定を入れてしまい、おそらく、ここ10年程で一番の好天気でのブルーの演技を見損なってしまいました( 一一)

さて、冒頭の写真ですが、先のコメントにもありますが、間違いなく「アイゼンハワー」です。
返信する
そうでしたか (エリス中尉)
2016-11-27 11:35:33
天気予報は前日まであまり良くなかったですものね。
航空祭のエントリーにも書きましたが、このおかげで?当日の入場者が少なく、
実際に来た人には2重の意味で絶好のコンディションになったのです。
実は当日、今年は来ておられないのかなと思っておりましたが、やはり・・。

わたしは前日、雨が降ってもよほどでない限り中止にならないという情報を見ました。
いつもならあきらめるところでしたが、今年は招待券があったので。
結果、わたしがいままで参加した中でもっとも条件のいい航空祭になりました。
カメラを落とさず、最初の時間に電車に乗れていたらパーフェクトでしたが。
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