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てつのくじらのプロペラ〜呉・海上自衛隊資料館

2017-05-14 | 博物館・資料館・テーマパーク

「てつのくじら館」という名称は、海上自衛隊の資料博物館である呉資料館の愛称としては
親しみを感じさせインパクトがあって、何より潜水艦を表す言葉としては
ぴったりの名作であると、わたしはこの命名をした人を褒め称えたいと思います。

これ、誰なんでしょうね。
海上自衛隊の部内募集だったりしたらなんか嬉しいな。

ところで最初にここにきた時、わたしは単純に

「秘密の塊と言われている潜水艦の艦体を晒すなんて、いいんだろうか」

と何も知らないながらに不思議に思ったものですが、ご安心ください。
展示にあたっては防諜のためにいくつかの配慮がなされています。

 

今回わたしが潜水艦「せきりゅう」の引き渡し・就役の式典参加にあたり
新たに潜水艦について勉強したこともあったのですが、印象的であったのは

「潜水艦のスクリューからは性能についてのあらゆることがわかる」

ということでした。


プロペラはその形状から推進のための性能が類推でき、さらにその翼数から
水をかき混ぜている時に出す音がほぼわかるといわれています。

潜水艦そのものの性能とその被探知性を握る重要な箇所であるがゆえに、
開発に際しては、各国が技術的にしのぎを削りあっているのがプロペラなのです。

だからこそその形状は最高機密となるわけで、例えば造船所にあるときには
建造中も修理中も、プロペラの部分だけカバーで覆って隠すといわれます。

つまり「てつのくじら」として展示されている「あきしお」のプロペラは
実は実際のものではなく、展示用のダミーだということなのです。

全体写真を撮った時に惜しいところで端っこが欠けてしまいましたが、
プロペラ部分を改めてみてみますと・・・・

「ゆうしお」型には最初からかどうか知りませんが、ハイスキュード・プロペラという
三日月型のように曲がっているタイプのプロペラであったという話です。

これはプロペラがブーメランのように反り返っているのでキャビテーション(空洞現象、
気泡が生まれそれがつぶれる時に音が出る)の発生を抑える効果がありました。

このプロペラに関しては東芝ココム事件という東側への技術漏洩疑惑事件も生まれました。

「あきしお」は「ゆうしお」型潜水艦の7番艦。
「ゆうしお」型は10番艦まで2006年までに全部退役しています。 

艦長室の上には魚雷搭載口があると書いています。
写真を撮るのを忘れたのでどうなっているかわかりませんが、甲板側はこうなっています。

いやー、案外原始的というか、普通のやり方で搭載するんですね。
この後は魚雷を立てて、下に立った状態で降ろして行き・・・・

あれ?どうやって狭い艦内でこの長い魚雷を横に倒すの?

そしてこれが艦長室。

ええまあ、潜水艦の中だからこんなものだろうとは思いますが。
「そうりゅう型」の館長室は確かベッドが片付けられるようになっていました。
大きさも違うので(全長でそうりゅう型が8m長い)そのぶん余裕があるようです。

潜水艦の中で絶対の権限を持ち、唯一個室が与えられる艦長ですが、
だからと言って休憩時間に部屋でゆっくりすることはないようです。

航行中のほとんどの時間を指揮所で過ごし、いつ寝ているんだろうと
訝られるような艦長もいるとかなんとか。 

床にこのような切り込みがあったのですが、まさかここから魚雷を下に?
魚雷発射室はこの下になります。 

SNK排出弁・・・・何を排出するのだろう。

嵌脱軸・・・・はめたり抜いたりする軸。

潜水艦において排出するものというと、トイレのタンクの中身などもそうですが、
SNKが例えば「サニタリータンク」の略だとすれば((((;゚Д゚)))))))

そこで、これが正解かどうか確かめもしないでその話をしておきます。

 

潜水艦のトイレの中身は、海に捨てます。(きっぱり)

海上航走している時には行わず、必ず深度のあるところで
水圧以上の圧力をかけて排出します。
その際、中身を全部出してしまうと空気も一緒に出てしまうので、
海上に気泡を出してしまい、艦の所在を知られてしまうので、
中身は寸止めで少し残ることになります。

排出後はタンク内の圧力を下げるわけですが、その前に
悪臭が艦内に流れ込むのは避けられず、潜水艦乗りは
この悪臭に耐えるのが宿命となっているといわれています。

もっともこの情報が今現在のものかどうかまでは確かではありません。
最新型の潜水艦ではこれが改善されていることを祈るばかりです。

チャートテーブルには基礎知識が書かれた案内資料が少し置かれていました。
少し見てみましょう。 

「あきしお」の展示はこれでいうと士官室と発令所の部分だけということになります。
エンジンルームの手前から入り、士官室から発令所に抜けて前方から外に出る仕組み。 

アメリカの潜水艦なら階段をつけて食堂と発射管室も見せてしまうところですが・・・。 

取っ手のついた大きなバルブと各々圧力計らしきものがついた機器の数々。

発令所の部分の床はくり抜かれ、アクリルガラスで下が覗けるようになっています。
ここが魚雷発射室。 

上の階から覗き込んだ魚雷発射室の床。
信管を不活性化した魚雷がいくつか展示されているのが見えます。 

アクリルの床にカメラを押し付けて撮った写真。
こちらのラックは全て空っぽのようです。
 

「あきしお」はHU-603 533mm魚雷発射管 が6門備え付けられており、
89式長魚雷およびハープーン対艦ミサイルが発射可能となっています。

これは艦内に展示されていた装填中の魚雷。

同じく魚雷発射室。

今いるところは司令室です。
まるでゴーカートのような操舵席。
舵の右側には「横舵」「縦舵」の電源スイッチがあります。
これでスイッチをぽちっとして電源を入れていたなんて・・・。

もう一つ緑の操舵席があります。

艦内各所の情報はここに集まってきて統括されます。
潜行準備のとき、第一居住区、発令所、発射管室、食堂、機械室など
潜行準備オーケーのところにランプがついていくという仕組み。 

お節介ながら、これは台に上がらない方が良かったのでは・・・・。 

バラストコントロール、すなわち潜行の際必要な情報が集約されています。
メインタンクのベント弁は1から9番まであります。

あとは全部で4つあるハッチの状況もここでわかります。 

もしかしたらこれでベントを開けたり閉めたりするんでしょうか。

潜望鏡からは外を見ることができます。
この区画にはいつも説明の方が立っていて聞いたらなんでも答えてくれます。
昔海自で実際に潜水艦に乗っていたという人たちかもしれません。 

もちろん解説のためにいるのですが、旧型であっても一応武器装備なので、
警備をするという役割も負っておられるようです。 

レーダー室。
現在のものから見ると、色とりどりのアナログボタンがキッチュな感じでもあります。
「潜望鏡」なんていうスイッチもあったりするんですが・・・。 

それに比べるとこの天気図を受信する機械は比較的年代が新しいような。
少なくともパネルボタン式になっています。
運用の途中で新しい機器を導入するということもあったのでしょう。 

というわけで、さっきとは反対から外に出てきました。
展示館と潜水艦の間には非常階段が挟まるように設置されています。 

深海での救助の際これをきて外に出るミシュラン人形。
ポーズが「おー!」って気合を入れている感じですね。

わたしとしては「触手厳禁」という注意書きに大いにウケました。
意味はよくわかりますが。 

ここには結構充実の売店とレストランがあります。
平日などは空いているので、呉の海を見ながらのんびりカレーなど食べるのもよし。

ここで食べられる「あきしおカレー」は海自カレーラリー以前からのもので、
本当ならこういうところではどこかの潜水艦カレーがラリー用に出されそうですが、
「あきしお」に配慮したのか、ラリー参加カレーはメニューにありません。

載せるのを忘れたので最後になりますが、潜水艦での食事例写真を上げておきます。
カレーに半熟卵が乗っていて、ミルクが添えられ、サラダも。

昼食なんておかずが何品もあっていいですよね。


というわけで久しぶりのてつのくじら、前とは少しだけですが見える範囲が広がっていました。
何度行ってもこちらのレベルに応じて見えてくるものが違っていて、
それがまた装備や博物艦に足を向ける理由でもあります。