2009年5月27日の国立感染症研究所感染症情報センターの報告からです。
2008年第36週以降2009年第21週(5月18日~5月24日)までに、インフルエンザウイルスの検出はAH1(Aソ連)型3,493件(全体の49.8%)、AH3(A香港)型1,808件(全体の25.8%)、B型1,714件(全体の24.4%)が報告されている。尚、新型A/H1N1vは第21週までに24件の報告があり、これは全体の0.34%にあたるが、季節性インフルエンザの病原体サーベイランスとしてランダムにサンプリングされたものではなく、新型インフルエンザの診断のため検査されたものであり、このウイルスが季節性インフルエンザ全体の中に潜行していることを示すものではない。また、全体の検出数も新型インフルエンザの鑑別診断のために提出されたものが含まれており、全体の数を押し上げる結果となっている。しかしながら、新型A/H1N1vのくすぶり流行を考慮する上では、病原体サーベイランスを強化することは必要不可欠である。
この報告をどう読むべきなのでしょう。「全体の検出数も新型インフルエンザの鑑別診断のために提出されたものが含まれており、全体の数を押し上げる結果となっている」とは、例年よりはインフルエンザの報告数が多いのは、インフルエンザウイルスの検出はランダムにサンプリングされるものであって、それに今回のいわゆる「新型インフルエンザ(インフルエンザA)」の鑑別診断によるものも加算されているためであるということでしょうか。つまり、例年と検出数は大きく変わらないということでしょうか。
また、全体の検出数は7,015件で、そのうち24件は新型の「A/H1N1v」であることから、新型インフルエンザは全体の0.34%にあたるが、「このウイルスが季節性インフルエンザ全体の中に潜行していることを示すものではない」とは、「新型インフルエンザの鑑別診断のために」割合が高くなっているのであって、実際はもう少し割合が低いということなのでしょうか。
「くすぶり流行」という言葉が使われています。これは大きな火の手(「大流行」)は上がっていないが、火は広がっている(「感染は拡大している」)ことを意味しているようにとれます。くすぶっているのですから、「強い風」(低温、低湿度)が吹くと一気に燃え上がる可能性があります。いまは風が凪いでいる(高温、多湿)ので、火の手は上がりにくいだけのようです。
2009年6月5日配信の時事通信からです。
厚生労働省は5日、東京都内で先月開かれた結婚パーティーで、新型インフルエンザに2次感染した参加者はこれまで9人に上ったことを明らかにした。米国に渡航歴がある墨田区の女性から感染した可能性があるという。想定より感染者が多く、都や区の担当者は「狭い場所で大勢が会話したためでは」「飲料の回し飲みでうつった可能性がある」などと分析している。
厚労省と墨田区によると、先月30日に披露宴と2次会、3次会が行われ、計100人程度が参加。このうち同区の女性が翌31日に、ほかの9人が今月1~3日に発症した。9人は東京都、千葉県、神奈川県に住む20~30代の男女。
同区によると、披露宴は参加者同士の距離が遠く、感染の恐れがある濃厚接触はなかったと認定した。しかし、2次会では飲食店の1部屋に、定員を上回る90人が集まって立食、3次会では飲食店の小さいテーブルに着き、6人が会話していた。
それでも、インフルエンザは「閉鎖環境(濃厚な接触、“close contact”)」が与えられると、感染を拡大します。いままで、私たちは季節性のインフルエンザへの感染を恐れて外出を控えるという行動はしてきませんでした。今後もそれをする必要は、「ハイリスク群」に属さないのであれば、ないのでしょう。「インフルエンザA(A/H1N1v)」も「季節性のインフルエンザ」とその症状の重さに大きな変わりがないからです。症状の重さを「軽微(mild)」、「中間(moderate)」、「重度(severe)」の3段階に分けると、「中間(モデレート)」に分類できるようです。
(参考) 「新型インフルエンザ」と「ハイリスク群」と暑さに弱いウイルス
2009年6月4日配信の時事通信からです。
厚生労働省は6月4日、新型インフルエンザの感染が確認された神戸市の男子高校生について、5月5日に発症していたと発表した。男子生徒に海外渡航歴はなく、同省は他人から感染したとみて追跡調査を進めている。
成田空港の検疫でカナダから帰国した大阪府の高校生らの感染が見つかった同9日が最初のケースとされていたが、少なくともその4日前からウイルスが国内に流入していたことになる。
同省によると、男子生徒は同5日に発症し、翌日に同市内の医療機関を受診。簡易検査でA型陽性反応が出たが、詳細な検査は行われなかった。
その後、同17日をピークに神戸市などで国内発生が相次ぎ、医療機関側から連絡を受けた同市が残っていた男子生徒の検体を詳細検査したところ、同20日に新型感染が確認されたという。
厚生労働省が行った追跡調査によると、「インフルエンザA」はすでに5月5日の時点で日本国内に侵入しており、少なくとも2次感染を起こしていました。それが神戸市などの学校内で限定的な「感染爆発」を起こすのに2週間ほどかかったと言えるのかも知れません。
2009年6月5日配信の読売新聞からです。
厚生労働省は4日、年内に2,000万人分の新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)用ワクチンを製造する方針を固めた。米国から入手したウイルス株を、近くワクチンメーカーに配布する。メーカー側は7月上旬にも製造を開始し、11月ごろからワクチンの接種が可能になる見通しだ。
国内のワクチンメーカーは4社・団体しかなく、製造量に限りがある。新型用ワクチンを製造するには、毎冬流行する季節性インフルエンザ用ワクチンの製造設備を切り替える必要があり、厚労省が新型用と季節性用のワクチン製造割合を検討していた。
毎年1,500万人程度が感染する季節性インフルエンザ用ワクチンは、「今月中に3000万~4000万人分を確保できる見通し」(厚労省幹部)とされる。例年の製造量(約5,000万人分)よりは少ないものの、同省は一定量は確保できたと判断し、新型用ワクチンの製造に切り替えることにした。
2,000万人分のワクチンがあれば、国民の6人に1人が接種できる。厚労省は持病があるなど、感染した場合、重症化しやすく、優先的なワクチン接種が必要な人には十分行き渡ると見ている。新型インフルエンザ用ワクチンは、季節性用ワクチンと併用しても害はないとされている。
くすぶっている火を燃え広がる前に小さくするには「ワクチン」しかないのでしょう。火の手があちこちから上がる前に、「ワクチン」が間に合うことを期待したいものです。そして、それは「ハイリスク群」に優先的に接種されることを制度的にも考えてもらいたいものです。私たち、非ハイリスク群に属する者にとっては、感染が死に至るものではなく(適切な治療を受ければ、ですが)、また間に合わず感染してしまっても期間的に長い「免疫」を獲得することにはなるのですから、「ハイリスク群」の次でもいいのでしょう。
(この項 健人のパパ)
Influenza A virus (A/Texas/05/2009(H1N1)) segment 4 hemagglutinin (HA) gene
1 atgaaggcaa tactagtagt tctgctatat acatttgcaa ccgcaaatgc agacacatta
61 tgtataggtt atcatgcgaa caattcaaca gacactgtag acacagtact agaaaagaat
121 gtaacagtaa cacactctgt taaccttcta gaagacaagc ataacgggaa actatgcaaa
181 ctaagagggg tagccccatt gcatttgggt aaatgtaaca ttgctggctg gatcctggga
241 aatccagagt gtgaatcact ctccacagca agctcatggt cctacattgt ggaaacatct
301 agttcagaca atggaacgtg ttacccagga gatttcatcg attatgagga gctaagagag
361 caattgagct cagtgtcatc atttgaaagg tttgagatat tccccaagac aagttcatgg
421 cccaatcatg actcgaacaa aggtgtaacg gcagcatgtc ctcatgctgg agcaaaaagc
481 ttctacaaaa atttaatatg gctagttaaa aaaggaaatt catacccaaa gctcagcaaa
541 tcctacatta atgataaagg gaaagaagtc ctcgtgctat ggggcattca ccatccatct
601 actagtgctg accaacaaag tctctatcag aatgcagatg catatgtttt tgtggggtca
661 tcaagataca gcaagaagtt caagccggaa atagcaataa gacccaaagt gagggatcaa
721 gaagggagaa tgaactatta ctggacacta gtagagccgg gagacaaaat aacattcgaa
781 gcaactggaa atctagtggt accgagatat gcattcgcaa tggaaagaaa tgctggatct
841 ggtattatca tttcagatac accagtccac gattgcaata caacttgtca gacacccaag
901 ggtgctataa acaccagcct cccatttcag aatatacatc cgatcacaat tggaaaatgt
961 ccaaaatatg taaaaagcac aaaattgaga ctggccacag gattgaggaa tgtcccgtct
1021 attcaatcta gaggcctatt tggggccatt gccggtttca ttgaaggggg gtggacaggg
1081 atggtagatg gatggtacgg ttatcaccat caaaatgagc aggggtcagg atatgcagcc
1141 gacctgaaga gcacacagaa tgccattgac gaaattacta acaaagtaaa ttctgttatt
1201 gaaaagatga atacacagtt cacagcagta ggtaaagagt tcaaccacct ggaaaaaaga
1261 atagagaatt taaataaaaa agttgatgat ggtttcctgg acatttggac ttacaatgcc
1321 gaactgttgg ttctattgga aaatgaaaga actttggact accacgattc aaatgtgaag
1381 aacttatatg aaaaggtaag aagccagcta aaaaacaatg ccaaggaaat tggaaacggc
1441 tgctttgaat tttaccacaa atgcgataac acgtgcatgg aaagtgtcaa aaatgggact
1501 tatgactacc caaaatactc agaggaagca aaattaaaca gagaagaaat agatggggta
1561 aaactggaat caacaaggat ttaccagatt ttggcgatct attcaactgt cgccagttca
1621 ttggtactgg tagtctccct gggggcaatc agtttctgga tgtgctctaa tgggtctcta
1681 cagtgtagaa tatgtattta a
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