POWERFUL MOMが行く!
多忙な中でも,美味しい物を食べ歩き,料理を工夫し,旅行を楽しむ私の日常を綴ります。
 





 「磁器」と「陶器」の違いはどこにあるのでしょう。磁器は「陶石」、陶器は「陶土」からできています。「陶石」を砕き、その粉を練り合わせ、焼いた物が「磁器」です。地球の火山活動によって溶岩が流れ、岩石が熱水変質作用を受けると「陶石」となります。岩石が風化し、風や降雨によって流され、鉄分や有機物が混ざり込み、蓄積され粘土となった「陶土」と比べると、鉄分やその他不純物の含有量が少なく、長石や珪石の含有率が少し高いのだそうです。

 陶石の産地は、九州地方が多く、熊本県の天草(あまくさ)、長崎県波佐見(はさみ)の三股(みつのまた)、長崎県佐世保市針尾の網代(あじろ)、佐賀県有田の泉山(いずみやま)などがあります。そのほかに石川県の服部(はっとり)、愛媛県伊予郡の砥部(とべ)、兵庫県豊岡市の出石(いずし)などもあります。

 天草に産出する「天草陶石」は、2003年の年間の出荷量は3万トンで、全国の陶石生産量の8割を占めているそうです。天草陶石は有田焼、波佐見焼、清水焼等の陶磁器の原料となり、また、高圧送電用の碍子(がいし)になるそうです。天草陶石は国内の他に台湾や韓国等に輸出もされているようです。

 磁器の大きな特徴は、水を吸わない器である(吸水性がない)ことです。その特徴を出すために、磁器は900度くらいで一度「素焼き」をします。この素焼きで素地に含まれる水分と不純物が焼き飛びます。でも、この状態では不純物が飛んだ隙間から水漏れがするので、この粒子の隙間を埋めるのに「釉薬」(ゆうやく、うわぐすり、珪石や長石などガラス化する成分を含んでいる)を塗って、1200度前後で「本焼き」をします。

 釉薬をかけて焼く(「本焼き」)と、(1)水が漏らないようになる、(2)汚れが付きにくくなる、(3)様々な色を出せることになります。釉薬は、(1)長石、粘土、珪石などのガラス質を作る成分、(2)ソーダ、カリ、石灰など熔ける温度を調整する成分、(3)鉄、銅、マンガン、コバルトなどの色をつける成分からなります。

 「ものづくり工房」の展示

 磁器の製造工程を単純化すると、成形工程→施釉工程→焼成工程となります。しかし、成形された粘土を乾燥させずに焼くと粘土中に含まれている水分が水蒸気になって体積を大きく増しますから、砕けてしまいます。そこで、十分に乾燥させる必要があります。成形工程の後に乾燥工程が入ります。さらに、結晶中の結晶水も焼成工程で放出されるので、粘土は大幅に収縮します。そこで、施釉工程の前に粘土を焼き縮める必要があります。これを素焼工程と言います。



 「陶石」から始めると、成形工程→乾燥工程→素焼工程→施釉工程→本焼成工程となります。絵付工程を除いてありますが、下絵付工程が素焼工程の後に、上絵工程が本焼成工程の後に入ります。その場合、上絵工程の後に2次焼成工程が必要になります。成形工程→乾燥工程→素焼工程→下絵付工程→施釉工程→本焼成工程→上絵工程→2次焼成工程、となるわけですね。



 焼成工程には「窯」が使われます。日本六古窯の一つ「常滑」は、かつては「土管の町」として知られ、多くの窯が焚かれていました。常滑の土管は、素焼の土管ではなく、真焼(まやけ)の土管でした。真焼とは通常より高温で焼き締められることを言います。強度があり、水漏れしません。「連房式登窯」を採用したことで、窯の中の温度分布が均一になり、従来の「大窯」のように燃焼室寄りに置かれたものは「真焼」になるが、奥の煙道寄りのものは温度が上がらず「赤物(あかもの、不十分な焼成のため軟らかい)」ということがなくなったのです。「INAXライブミュージアム」は広い敷地の中にいくつかの建物から構成され、「窯のある広場・資料館」はれんが造りの大煙突、そして窯とそれを納める建物からなります。煙突と窯を含む建物は往時のたたずまいを残す数少ないものの一つとして、1997年、国の登録有形文化財に指定されています。

 「窯のある広場・資料館」の中にあるこの窯は1921年(大正10年)に築かれ、土管や焼酎瓶、クリンカータイルが製造されていました。「両面焚(りょうめんだき)倒焔式(とうえんしき)角窯(かくがま)」という長い様式のこの窯は、焚口が片面7か所、両面合計14か所あります。「両面焚」という理由がここにあります。

 「両面焚倒焔式角窯」の内部

 「登り窯」は階段に「板付きかまぼこ」を数個並べたような形をしていますが、この窯は、巨大な1個の「板付きかまぼこ」です。「倒焔式角窯」は、通称「石炭窯」と呼ばれ、石炭を燃料とします。薪よりも安価な石炭を燃料とでき、坂を昇り降りする「登り窯」の重労働から開放されます。窯入れ(窯詰め) 1日、焼成 3~4日間、冷却 10日間、窯出し 1日。この各工程の所要期間を合計した最短サイクルは、15日だったようです。

 「両面焚倒焔式角窯」の外観

 我が子「健人」が籤(くじ)に外れて第3希望で入ることになった「やきものクラブ」ではどんなことをするのでしょうか。まさか「オーブン粘土」で作るなんてことはないでしょうね。オーブン粘土(ポリマークレイ、オーブンクレイ)とは、陶土とプラスチックが主成分の粘土です。成形したオーブン粘土を家庭用のオーブンで約130℃で20~30分程度焼くと固まります。焼き固めた後でも、削ったり、さらに上からオーブン粘土を付け足したりできます。しかし、日常的に使用するお茶碗や湯飲み、100度以上の食品をのせるお皿などはこれでは作れません。



 常滑西小学校の生徒は全員、「やきものクラブ」に所属しているかのようです。校舎敷地の外周にずらっと「陶彫」が並んでいます。

「常西小児童、陶彫を飾る」(2006年11月27日)
 常滑西小学校の児童が、常滑焼の彫刻「陶彫」を校舎敷地の外周に設置し、通り行く人達を楽しませています。これは、地元の陶彫会メンバーの指導により児童が製作し、陶業試作訓練所で焼成したもの。児童らは、この日、自らの作品を接着剤で取り付けました。常滑西小学校に近い中央商店街では、「陶彫のある街づくり」が進められており、この一帯では、新たな魅力が増えることになりました。
 (「常滑市役所ニュース」から)

 「陶彫のある風景」

 天職を見つけるのに何がきっかけになるかは分かりません。将来、陶芸家として大成したならば、「小学校のとき、クラブ選びで籤に2度も外れたことがこの道に入るきっかけになったんですよ。」などとインタビューで語ることになるのでしょうか。未来を見ているようで面白いですね。

 でも、そんなことになる可能性は極めて小さいでしょう。健人が陶芸教室で作ったマグカップは成形の後にもいろいろな工程があるため5月にならないと我が家に届きませんが、届いても無事にコーヒーが飲めるかどうか不安です。そんな技量ですから、我が家の歴史の中では今回の名古屋の旅は忘れ去られていきそうです。

 作陶中

(参考) 「名古屋へ」-常滑の「陶芸教室」で我が子の才能を知ったかな。

      (この項 健人のパパ)

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