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 インフルエンザを発症すると、風邪様症状(風邪症候群。咳、のどの痛み、鼻汁・鼻づまりなど局部症状や発熱、倦怠感、頭痛など全身症状)とともに、38℃を越える高熱を出します。新型インフルエンザ(AH1pdm)での報告では、38℃以上の発熱は82.8%、咳は81.0%、のどの痛み65.1%、鼻汁・鼻づまり60.3%、倦怠感58.1%、頭痛50.0%の症状がありました(「新型インフルエンザの大阪府下の2つの学校における臨床像」から)。

 風邪(普通感冒)には、下痢、腹痛、嘔吐などの腹部症状を伴うことがありますが、上記の新型インフルエンザの報告では、下痢12.9%、腹痛10.3%、嘔吐6.5%と低かったようです。

 インフルエンザの発症は、インフルエンザウイルスが鼻の粘膜などを介して体内の細胞に入り込んで増殖し、最後に細胞を破壊し、次の細胞に入ることを繰り返して、細胞の破壊が急速に進行することで起ります。細菌感染では、細菌が菌体外に放出した毒素(外毒素、エクソトキシン、exotoxin)や細菌の成分である毒素(内毒素、エンドトキシン、endotoxin)で、発症するのとは異なります。

 インフルエンザのようなウイルス感染症の発症や重症化を防ぐには、体内でウイルスが増殖するのを防ぐことです。「オセルタミビル(商品名:タミフル)」などの「ノイラミニダーゼ阻害薬(Neuraminidase inhibitors)」は、A型やB型のインフルエンザウイルスに入り込まれた細胞が破壊されるのを防ぎ、ウイルスの放出を妨げることで、ウイルスの増殖を阻止します。既に破壊された細胞は新たな細胞が作られ、症状は改善していきます。

 「抗体(antibody)」は、「マクロファージ(macrophage、貪食細胞、白血球の1つ)」などと協力して、体内に侵入してきた細菌やウイルスなどを体内から除去します。血液中や体液中に存在する抗体は、特異的にタンパク質などの分子(「抗原(antigen)」)を認識して結合する働きを持っています。「特異的」とは、例えば、新型インフルエンザウイルス(AH1pdm)用の抗体があって、この抗体は新型インフルエンザウイルス(AH1pdm)にしか結合しません。

 抗体に結合された抗原(例えば、インフルエンザウイルス)は、マクロファージに見える(認識される)ようになり、パクッと食べられてしまいます。この結果、ウイルスの増殖は抑えられることになります。しかし、抗体(「免疫グロブリン、immunoglobulin、Ig」)はあらかじめ人体に存在するものではありません。リンパ組織に存在するB細胞(“B”は骨髄(bone marrow)のB? ファブリキウス嚢(brusa of Fabricius)のB?)が、ヘルパーT細胞(“T”は胸腺(Thymus)のT)によって活性化されて抗体を産生するのです(一次応答)。

 B細胞に抗体を作らせるには、自然感染かワクチン接種が必要になります。一度抗体を産生した経験をB細胞に持たせると、B細胞は同一のウイルス(「抗原」)の再侵入に対して、一次応答よりも大量の抗体を産生し、再侵入した抗原をすばやく体内から除去できるようにします(二次応答)。

 「ウイルス抗体検査」というものがあります。抗体は免疫グロブリン(Ig)というタンパク質で、そのうち感染の防御に関係しているのはIgMとIgGです。H鎖(重鎖)の種類で、γ(ガンマ)、α(アルファ)、μ(ミュー)、δ(デルタ)、ε(イプシロン)により、それぞれIgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5クラスに分けられています。

 ウイルス抗体検査の1つ、「IgM抗体検査」は、IgMはウイルスが体内に入ってくると間もなく増え始め、約2週間でピークに達した後減少して、1~2ヶ月でほとんどなくなることから、ウイルス感染(例えば、麻疹(はしか))の確定診断に使われることがあります。

 ウイルス抗体検査を方法による分類をして、「酵素免疫測定法 (enzymeimmunoassay、EIA)法」の1つ、「ELISA法(エライザ法、emzyme-linked immunosorbent assay)」は、ウイルス抗原を吸着したプレートに患者の血清を反応させたあと、さらに反応した患者血清中のIgGに酵素標識した抗ヒトIgG抗体を反応させ、この酵素の発色の有無からウイルスの存在をみる方法です。HIV(エイズウイルス)やATLV(成人T細胞白血病ウイルス)などの確定診断に用いられるようです。
 
 IgGは、IgMに数日遅れて産出されますが、IgMが減少を始めても増加し続け、ウイルスが存在しなくなってもしばらくは高い値を維持します。IgGはその後少しずつ減少していきますが、同一のウイルスが再侵入すると、2~3日で急増します

 しかし、赤血球凝集能を持つインフルエンザウイルスのようなウイルスの抗体検査は、「赤血球凝集抑制試験(HI試験、Hemagglutinin Inhibition Test)によって測定します。抗体が存在すれば、抗体はウイルスの赤血球凝集素を攻撃し、赤血球が凝集しないようにします(凝集抑制)。赤血球の凝集で抗体の保有を判断するわけです。

 具体的には、段階的に希釈した血液(抗血清)をウイルス検体と反応させ、赤血球凝集反応がどれだけの希釈まで抑制されるかを観察します。血液の希釈倍率はHI価と呼ばれます。インフルエンザの感染予防や感染しても症状の軽減に期待できる40倍以上を抗体保有とし、より感染を防御できる十分な抗体価を160倍以上として評価します。

 国立感染症研究所感染症情報センターは、2010年7月~9月、全国の6,035人から血液を採取し、新型インフルエンザに対する抗体の有無を調査して、2010年12月7日に報告しています。その報告によれば、10歳~19歳(昨年、患者数が多く報告された)では、新型インフルエンザに対して免疫力があることの指標となる抗体保有率(HI価が40以上)は65%(3人に2人は抗体を保有)と高い一方で、0~4歳の乳幼児(20%台)や50歳代以上(10~20%台)では特に低い水準にとどまっていることがわかったようです。



 これは今年は、児童や学生の間では集団免疫がそれなりにでき上がっているので、学校から昨シーズンと同じ型の新型インフルエンザが広まるということは起りにくくなっていることを意味していると考えられます。しかし、5歳から24歳までの抗体保有率が他の年齢と比較して高いのは、例年みられる傾向であり、学校などでの集団生活によりインフルエンザウイルスに曝露される頻度が高いのを反映しています。



 学校は、インフルエンザのような感染症を拡散させる場となっているのです。今シーズンの亜型別分離状況は、2010年第36週から第48週において新型インフルエンザ(A/H1pdm亜型)が126例、A香港型(A/H3亜型)が321例と、新型インフルエンザとA香港型が混在し、現時点ではA香港型の方が分離報告数は多いようです。学校でのインフルエンザの集団発生は、A香港型で起りそうです。

 今シーズンは2010年12月7日時点ですでに、茨城県の小学校においてインフルエンザウイルスAH1pdm(A/H1N1 2009)による集団発生が報告されており、また、インフルエンザ様疾患発生報告(学校欠席者数)によると、2010年10月24日から11月27日のおおよそ1か月の期間に学級閉鎖を実施した学校数は82校、学年閉鎖を実施した学校数は25校、休校を実施した学校数は14校と報告されているようです。

           (この項 健人のパパ) 

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