加賀藩主 前田斉泰(まえだ なりやす)の母、真龍院のために造営された奥方御殿、成巽閣(せいそんかく)。
前田家に伝わる名品の数々や、贅を凝らした建築や意匠など、たいへん見どころが多い由緒ある建物です。
中でも最も驚かされたのがこのつくしの縁。
美しい庭園を前にしてしつらえられた長さ20mの縁側。よく見れば、その軒下にこの大きなひさし屋根を支えるべき柱がどこにも存在しないのです。
説明されて初めて気が付きましたが、改めて見るとそれはマジカルな空間。
桔木(はねぎ)と呼ばれる建築工法で、10mほどの材木をの中央部を、写真左のちょうど障子の上あたりを支点に備え付け、梃子(てこ)の原理で屋根を支えるといったもの。
非常に工夫を凝らした工法で作られているのですが、全くそれと感じさせない職人の技。
「視界が開けてなんと気持ちのいい空間なんだろう…」と思わせるその裏には、日本建築の技術の粋を合わせた匠が隠されていました。