Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

バックコーラスの歌姫たち

2014年01月12日 | ロック映画、映像

バックコーラスの歌姫たち(原題:20 Feet from Stardom)

2013年 アメリカ
監督:モーガン・ネビル
製作:ギル・フリーゼン、ケイトリン・ロジャース
出演:ダーレン・ラブ、メリー・クレイトン、ジュディス・ヒル、リサ・フィッシャー、クラウディア・リニア、タタ・ヴェガ

冒頭で、ブルース・スプリングスティーンが言う。
「メインシンガーとバックコーラスとの距離は短いようだけど、長い。
それを縮めるのは、数歩の距離だけど難しい。」
そこから、つけられたであろうタイトルは「20 Feet from Stardom」
名だたるロックスター達のバックコーラスを務めてきた女性達のインタビュー&過去映像のドキュメンタリー。

ミック・ジャガー、スティング、シェリル・クロウ、ベット・ミドラー等、といったトップミュージシャン達から見た
バックシンガーへのコメントも寄せられ、レコーディング風景や往年の秘蔵画像などもあり、わくわくしながら見た。

エルビス・プレスリー、フランク・シナトラ、サム・クックらのバックコーラスを務めた大ベテラン、
ダーレン・ラヴは、別の歌手がリリースする歌をスタジオで録音させられる不当な扱いが続き、
一時は音楽の世界を諦めて、ハウスキーパーとして働いていたことも。
掃除中にラジオから流れてきた自分の曲「クリスマス」を耳にして「世界は私を待ってるんだわ」と復帰を決める!

レイ・チャールズのバックコーラス隊として活躍したメリー・クレイトンは、その孤高の存在感で、
キャロル・キングのアルバム「つづれおり」、レーナード・スキナードの「スウィート・ホーム・アラバマ」等
名作を彩ってきた。
なかでもローリング・ストーンズ「ギミー・シェルター」でのコーラスパートが印象的。
録音当時は、真夜中に急に呼び出されて、パジャマ姿にコート羽織って、カーラー巻いた頭をスカーフで
隠して向かったらしい。
スタジオで手渡されたのは「強姦、殺人、目の前で始ろうとしている」という扇情的な歌詞。
何よ、コレ! こんなのワンオクターブ高い声で唄ってやるわよ、とブッ放った歌声が、
現在の彼女のインタビューにかぶって、「どう?」というメリー・クレイトンの満足げな表情といったら。

80年代からずっと、今も第一線で活躍し続けるリサ・フィッシャーは、充分な実力を持ち
91年にはソロとしてグラミー賞に輝き、どの道でも選べるとされながらも、バックシンガーとして生きることを選んだ。
確かにリサ・フィッシャーの技量は、素晴らしい以外無い。
ただ「メインステージに立てるかどうかは、技術じゃなく、強さだ」と言うブルースの言葉は
彼女にピッタリじゃないかと思う。
ずっとソロでやっていくには、彼女は優しすぎる、でもだからこそ、人と寄り添えるのだ。

マイケル・ジャクソン追悼式典で「ヒール・ザ・ワールド」を唄い、一躍世界から注目を集めた
ジュディス・ヒルは、バックシンガーからソロ歌手へと変貌を遂げる。
しかしそれ以降に、カイリー・ミノーグやスティーヴィー・ワンダーのバックコーラスを務めたところ、
ファンの一部から非難されるも「ばれちゃった?」とツイート。
バックコーラスは今の副業と言いきる彼女のしたたかさは見事。

これほどにバックシンガー達がメイン歌手との差を感じ、辛酸をなめてきたなんて、意外だった。
今まであえてフューチャーはされてこなかったけど、光の当たらない道だなんて。
同性の私からしたら、特に感受性の強い中高生の頃には
大好きなバンドの曲に、女の人の声が絡んでくると、それはジェラシーの対象だった。
コーラス部分はとにかく妬ましくて、痛いくらいの想いで、全身を耳にして聞いていた。

メインステージから約6mの距離、そこからの物語の数々を感じることができた。
ラストに、ダーレン・ラヴがメインヴォーカルで、リサ・フィッシャーやジュディス・ヒル、ジョー・ローリーが
バックコーラスを入れる「リーン・オン・ミー」のスタジオライブが流れ、胸が熱くなる。
見て良かったぁと思ってると・・・
エンドロールで、ブルース・スプリングスティーンがバックコーラスにまわってるのがまた、かっこいい!
最後に持ってくんだもんなあ。

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