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No955ホセ・ルイス・ゲリン監督、京都に来る!~トークのご紹介(前半)~

『シルビアのいる街で』(2007)で、
路面電車の音、足音、雑踏の音、カップを倒す音と、見事な音の世界、
言葉少なく、観る者の想像力をかきたてる脚本と、
光と影をとらえた美しい映像とで、
日本の映画ファンを魅了したスペインのホセ・ルイス・ゲリン監督。
今日、同志社大学に来られて、トークが行われました。
早速、その概要をご紹介したいと思います。

◆映画との出会いについて

 「シネフィル」に限らず、人生で最初に観た映画の体験はトラウマになります。
それは、「傷」となって残る、おそろしいもので、
その「傷」は、ほかの映画を観ることによってしか、癒されません。
つまり、最初に観た映画は、さして重要ではない、ということ。
私の場合は、『白雪姫』でした。

子ども時代に観て恐ろしさを体験するのに最適な作品をあげるとしたら、
『狩人の夜』』(原題:The Night of the Hunter
1955年製作 チャールズ・ロートン監督 ロバート・ミッチャム主演)です。

◆小津監督作品とはどのようにして出会ったのですか?

「ここ京都であれば、溝口監督についてお話したほうがいいのでは?」と
微笑みながら、最初にユーモアを織り交ぜたゲリン監督。

小津監督の映画を観るまでは、日本のイメージは、芸者とサムライでした。
小津映画に出会って、原節子が自分の姉のように、笠智衆が自分の父のように思え、
家族のように感じ始めました。

小津作品に出てくる俳優たちが、作品の中で年をとっていくのを観ることで、
家族のように思えたのです。
そう思わせてくれたのは、小津監督作品だけです。

小津の作品すべてにそれぞれ意味があるので、どれかひとつを選ぶことは難しい。
スペインで最初に上映された小津作品は『東京物語』だと思います。
『生れてはみたけれど』、『秋刀魚の味』、『晩春』、『秋日和』…、
(といくつか作品名をあげられました)

小津監督以外では、
明日、鴨長明の足跡をたどろうと思っています。(と、にっこり嬉しそうに話す監督)
「方丈記」は重要な作品です。
俳句を読むことも発見に満ちています。
蕪村、芭蕉、子規、良寛も重要。

質問者が次の質問を言いかけたところで
監督は「山頭火」と、いきなり思い出したかのように、口に出して、
「さえぎって、ごめんなさい」と質問者に謝られたのが、印象的でした。

◆『ベルタのモチーフ』(1983年。監督22歳の時の作品で長編第1作)の製作動機は?

製作当時、ベルタより少し年上なだけで、
40歳の苦悩なんて描けませんし、
(22歳なりに)知ってる範囲のことしか描けませんでした。

ベルタと違って、私は、田舎に遊びに行くことはありましたが、
子ども時代は街で過ごしました。
これは、自分の子ども時代を直接的に反映したものではありません。

閉ざされたところに住む女の子を描きたいと思い、
その女の子がファンタジーやロマンチシズムと、現実との間の葛藤を体験し、
それをどう受け止めるのかを描きました。
そうして、ラストシーンの二つの道に分かれているところで、
少女は、ファンタジーではなく、現実、論理的な方につづく道を選びました。

文学のうち、日記を読むのが好きです。
子どもの日記は、誠実で、思ったまま正直に書かれているので好きです。
特に、子どもが孤立している時のが興味深いです。

 ◆ベルタを演じた少女はどうやって見つけたのですか?
フランスの女優アリエル・ドンバール出演のいきさつは?

ベルタを演じた少女は、村で見つけた少女で、まなざしが好きでした。
今でも友人であり、ベルタよりも年上の娘がいます。

アリエル・ドンバールは、ロメールの映画で何度か観ていて、
お金はないですが、ぜひ映画に出てほしいと手紙を書きました。
そしたら、やさしい人で、承諾してくれたのです。
劇中で用いたシューベルトの歌「さすらい」も歌ってもらいました。
とても「寛容な人」でした。

(以下後半へ続く)

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