映画の感想をざっくばらんに、パラパラ読めるよう綴っています。最近は映画だけでなく音楽などなど、心に印象に残ったことも。
パラパラ映画手帖
No1353『日本侠花伝』『宮本武蔵』~加藤泰特集、いよいよ大詰め~
ついに観ました。『日本侠花伝』1973年。
真木洋子さん、めちゃいいです。
冒頭、列車の中で、乗客相手に本を売るところから始まる。
そういえば、渥美清さん演じる寅さんが縁日で売ってる口上に似ている。
真木さんが、声に張りがあって、懸命に売る姿を長回しでとらえ、すばらしいファーストシーン。
実は宇和島の問屋の息子と駆け落ちしていて、
真木演じるミネは生活費を稼ごうとしている。
その列車で渡哲也演じる清次郎と運命の出会い。
視線がばちばち合うところもいい。
渡哲也は眼力といい、立ち姿から、孤独がたちのぼっているようで、
しゃべらなくても、あたたかさが伝わる。
不器用な愛が伝わる。
前半は、駆け落ちで添い遂げようとするものの、結局、息子は、
実家の母親たちに連れ戻されてしまう。
別れるくらいなら死ぬと言っていたミネが、
青年ともみあって、二人とも崖から海に落ちる。
それを、近くで釣りをしていた、曽我廻家明蝶さん演じる金造親分が助ける。
ふんどし一枚になって、ざぶんと飛び込むと、
船頭が「もっと静かに飛び込みなはれ」という。
金造親分をめぐって、ユーモラスなやりとりが続き、微笑ましい。
神戸の荷役を扱う、かたぎの金造親分の仕事を、
安部徹演じるやくざが奪おうとして、次々と卑怯な手や暴力を使って、
嫌がらせをしかけてくる。
省略の美学で、
金造親分に助けられて傷だらけで横たわっているミネは、
次のシーンで、金造親分と結婚式をあげている。
指輪をはめる時、
どの指にはめたらいいのかわからず、
親指にはめたら、加藤剛演じる神父に「違う」と言われ、
「どの指にするかくらい自分で決めたい」と言うと、神父に「ルールです」と言われる。
聖書に手を置いて誓うように言われ、金造は、照れるからええわと、嫌がると、
「これもルールです」と連発。
怖いのは、わかっていても怖い。
闇の中、渡哲也が不穏な気配で、家に忍び込む。
安部徹が、金造を疎ましがっていることはわかっているから、察しはつく。
いきなり、闇からすっと刀が出てきて、ブスリといく。
わかっていても、思わず「あ!」と驚いて、声が出てしまう。(修行が足りなくてすみません)
そこから米騒動と、時代背景、社会的な動きを巻き込んで、映画は疾走していく。
ミネと清次郎の再会は、愛へとつながる。
ミネが米騒動の騒ぎをおさえるために、長屋の連中を前に自分の考えを言うるときの声もいい。
150分近い長いドラマも、見せ場は、終盤の男と女。
金造と結婚はしていても、
ミネが恋に落ちたのは、清次郎で、二人の恋路がいい。
酒を持って、渡が隠れている艀にいくシーンのなんてきれいなこと。
二人で並んで、果物を食べる。
光が水面に反射して、ゆらゆら揺れている。
魅せられました。
『宮本武蔵』は1973年で、これまた2時間半近く。
宮本武蔵の映画自体、観るのが初めてだったので、
案外、残酷で、びっくりした。
武蔵を演じる高橋英樹が、自分の中にもやもやを、わりきれないものを抱えながらも、
一度選んでしまった以上、剣の道を走り続けるしかない苦悩を感じさせて、
なかなかよかった。
佐々木小次郎との巌流島に向かう、小舟を漕ぐシーンが好きだ。
フランキー堺と倍賞美津子がよかった。
加藤泰監督の映画では、男と女が出会うのは、いつも橋で、
本作でも、橋を渡る男が、橋のたもとにいる女に気付く。
水面ぎりぎりというより、もう水面に潜りそうに低いカメラ位置には驚嘆。
おばばを演じる仁田順好が怖いくらいにリアルで
最後、鳥小屋を前にはりついた死に顔が忘れられない。
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