噛みつき評論 ブログ版

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柔らかい頭

2018-04-01 22:29:15 | マスメディア
 ポエニ戦役は紀元前219年から紀元前201年にかけてローマとカルタゴとの間で戦われた戦争である。カルタゴの名将ハンニバルによってローマは敗戦を繰り返すが、最後にローマの名将スキピオ・アフリカヌスによってカルタゴは敗れ、ローマは国家的危機から脱する。このスキピオは25歳のときに2個軍団、2万5千から3万の軍の指揮を任される。当時2個軍団を指揮するのは執政官か法務官で資格年齢は40歳以上とされた。15歳も足りないのに例外的に認められたとされる(塩野七生 ローマ人の物語より)

 紀元前に法治国家を確立したローマであるが、法に対しては比較的柔軟な考えを持っていたように見える。ローマ人は法を絶対的なものと考えなかったのではないか。興味深い問題だが、その背景には、私の想像だが、法の不完全性を理解していたのではないかと思う。法を曲げた方が国の利益になる場合は曲げると。

 このような態度は憲法や法を金科玉条のように考える硬直的な態度とは大きく異なる。むろん法は尊重されなければならないことはわかる。けれど何が何でもというわけではない。法にも矛盾があり、法より優先されるべきものもある。違法の方がすべてうまく行く、という場合もある。国破れて憲法あり、では困るのである。

 森友問題は違法行為ですらなく、忖度があったかどうかの問題に過ぎないが、メディアのおかげで内閣支持率にも強い影響を与えるほどになっている。証人喚問された佐川氏は政府側からの働きかけはないと証言したが、野党は納得しない。事実はどうであれ、佐川氏の証言はこれでよかったと思う。もし政府からの働きかけがあったと証言すれば内閣が倒れる可能性さえあっただろう。

 もし佐川氏が嘘をつけない正直な人物で、仮に政府から働きかけがあったとした場合、その通りに証言すれば、国益を損なう可能性が高い。北朝鮮問題など、国難ともいえるこの時期にそんなことになれば大混乱になりかねない。佐川氏が自らを犠牲にして問題の波及を食い止めたならば、少し大袈裟だが、佐川氏は公益を優先した救国の英雄となるかもしれない。まあ、こんな見方も可能である。

 一般論として、事実を隠蔽して混乱を防ぐのがよいか、それともすべて話して混乱を仕方のないものとするか、政治哲学に出てきそうな問題であるが、明確な解はないと思う。ただ一国民としては、今回のような場合、バカ正直に話すことが善であると思うような単純な人物でないことを願う。「嘘も方便」である。利己的な目的のために相手を騙すウソとは区別すべきであろう。