噛みつき評論 ブログ版

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死人に口なし

2016-02-22 09:19:32 | マスメディア
 長野県軽井沢町のスキーバス事故は原因が未解明のまま、マスコミは関心を失ったように見えます。事故に関する報道によって、原因が運転操作にあるかのように思っている人も少なくないと思います。一連の報道を聞いて、ニュートラルであればフットブレーキも効かなくなると理解していた人がいるほど、警察の発表は誤解を生みやすいものでした。

 2月15日に報道された運行記録計(タコグラフ)の解析結果は事故から約1ヵ月も経っていました。以下はNHKで報道された内容です。

『警察が運行記録計の解析を進めた結果、バスのスピードは、転落直前、制限速度のおよそ2倍の時速96キロに達していたということです。さらに運行記録計を詳しく調べたところ、バスは事故現場のおよそ1キロ手前で下り坂が始まってから転落するまで一度もスピードを落とさずに加速し続けていたとみられることが、警察への取材で分かりました。
警察は、運転手がギヤを低速にするなどの適切な操作をしなかったために加速しすぎて制御を失ったとみて、さらに分析を進めることにしています』

 事故原因の調査にきわめて重要な運行記録計の解析結果発表になぜ1カ月もかかったのか、腑に落ちませんが、下り坂が始まってから転落するまで一度もスピードを落とさずに加速し続けていたということは重要な事実です。すべてのブレーキが一度も作動しなかったと考えられるからです。

 低速ギヤのエンジンブレーキ使わなかったのは操作ミスである可能性が強いですが、だからといってフットブレーキをまったく使わないのは理解できません。後部を写した映像からはストップランプが点灯しているように見えます。またハンドル操作は適切に行われていたと考えられ、運転者が正常な状態であったことが推定できます。これらはフットブレーキがまったく効かなくなったことを示しているように思います。

 運転者の適性が低かったとか、大型になれていなかったなどと、原因は運転者の操作にあると思わせる報道がありますが、いくら下手でもフットブレーキくらいは踏めるはずです。「運転手がギヤを低速にするなど」としていますが、それ以前のニュートラルであったと断定していた発表からは後退した印象を受けます。また「一度もスピードを落とさずに加速し続けていた」という事実は原因が車体側にある疑いを強めますが、わざわざ「運転手がギヤを低速にするなどの適切な操作をしなかったために加速しすぎて制御を失った」と、原因を運転手側にあるかのように述べています。論理的にもおかしく、不自然な印象があります。

 そしてブレーキには目立った損傷は見つからなかったという当初の発表のままで、車体調査はその後どうなっているのかまったく報道されていません。事故直後、現場にはタイヤ痕がありましたが、警察は制動によって、つまりブレーキによってできた痕跡であると発表しましたが、これも怪しくなりました。横滑りによるものと見るのが自然です。

 航空機事故や鉄道事故に比べ、17人の死者を出してもバス事故は「格下」になるのか、事故調査には大きな差があるようです。「ブレーキには目立った損傷は見つからなかった」というだけでは納得できず、詳細な検証をすべきだと思います。まあ死人のせいにしておけば、誰も傷つかず、万事うまく収まる、ということなのでしょうか。