噛みつき評論 ブログ版

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対立の構造

2015-06-15 08:55:50 | マスメディア
 犯罪者達が奪った金の分け前をめぐって相争う、というのは映画によくあります。見苦しいですが、分かりやすい話です。互いに利益を最大化しようとする争いだからです。それに対してイラクやシリアの内戦のようにスンニ派とシーア派というイスラム教の宗派対立を主な理由とする争いは理解が困難です。これは人々を助ける筈の宗教が人々にひどい苦難をもたらすという皮肉な現象でもあります。

 敵対する当事者にとっては互いに譲れない切実な理由があるのでしょうが、外部の第三者から見ると理解できません。宗派の違いごときでなぜ戦争までするのか、まったく理不尽な行為と映ります。しかもどの宗教・宗派を信じるかはたいてい住む地域などの偶然性に左右されます。偶然によって敵味方に分かれるわけです。

 宗教は特定の世界観や価値観を持つよう信者に要求するので、宗教・宗派が違えば世界観や価値観も異なります。このことが相互の理解を妨げます。また地域的な分離も対立を継続させる要因となるでしょう。まことに厄介な状態です。

 日本では幸いにして戦乱に及ぶような激しい対立はありません。しかし政治的な左右の対立はずっと続いています。左と右では世界観や価値観の違いが大きく、相互理解が進まない点は上記の宗派対立と似ています。

 宗派対立では地域の違いが対立構造を維持する大きな要素ですが、日本の政治的な対立では地域的な差はあまり見られません。それに代わるものは強力な「機関紙」の存在でしょう。政治的な色のついた新聞などのマスメディアです。

 意外と思われるでしょうが、戦後しばらくの間、読売や産経は今よりもずっと左よりでした。安保改定には反対の立場であり、北朝鮮を楽園だとし、在日朝鮮人とその日本人妻の北朝鮮帰国事業を進めたとされます。しかし現在は左翼から離れています。

 一方、朝日や毎日は左翼思想の影響を残したままです。最近はさすがに言われなくなりましたが非武装中立論はその特徴のひとつです。理想主義ですが現実性が乏しいため、安全保障問題では右派と話が噛み合いません。他の問題でも世界観や価値観が大きく異なるため噛み合わず、議論が意味をなさないことがしばしばです。もしこの対立を宇宙人(鳩山元首相ではない)が見れば、つまらないことでいつまで争っているのだろう、と思うことでしょう。

 純粋な若者にとって左翼思想は確かに魅力的です。しかし多くの賢明な人は現実の社会を理解するにつれ左翼思想から離れていきます。「25歳のとき左翼にならない人には心がない。35歳になってもまだ左翼のままの人には頭がない」(*1)とはこのことを表した言葉です。

 朝日や毎日は会社の年齢も、また幹部社員の年齢も35歳以上ですね。ま、それはともかく、左派メディアが「価値観を共有」しないため相互理解が困難な大集団を育てあげ、無用の対立を生みだしたことは、無意味な宗派対立にも似た困った問題です。そのために社会が支払った代償は莫大なものになるでしょう。

(*1)(チャーチルの言葉として紹介されますが、異論もあるようです)