噛みつき評論 ブログ版

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現代の精神論

2015-06-01 08:49:57 | マスメディア
 国会で審議中の安全保障法制改定法案を与党は平和安全法制整備法案と呼び、社民党や共産党は逆に戦争するための戦争法案と呼んで反対しています。同じ日本人であり同じような教育を受けながら、なぜこれほど認識が極端に分かれるのか、実に興味ある問題です。

 予想通り、朝日など左派メディアはこの法案に反対しています。しかしその反対論の中心は憲法解釈に加え、法案と戦争を直結させ、戦争の恐ろしさを盛んに強調するという旧来の方法です。もっぱら戦争の怖さを感情に訴える方法であり、近隣諸国の軍事的膨張などを前提とした防衛議論など見たことがありません。

 簡単に言えば、戦争には攻撃する場合と攻撃される場合があります。朝日や一部の野党などは戦争とは日本が攻撃することだけで起きると考えているようです。しかし現在の脅威は他国からの侵攻の方である以上、国際関係や軍事バランス、相手国政府の将来の変化などを分析・検討した上で議論すべきでしょう・・・かなり複雑な問題ですが、難しいからといって放っておいてよい問題ではありません。

「9条があれば平和が保たれる」といった意見は非常に単純でわかりやすいのですが、これはもう無責任な精神論だと言っても差し支えないと思われます。かつての「日本は神の国だから決して負けない」「精神力で勝つ」と同レベルです。どれも現実性のない夢想に過ぎません。

 世論を構成するのは国民ですが、多くの国民は専門知識をもっていないので、複雑な問題を正しく判断するのは困難です。安全保障法制改定法案は11もあり、その分量だけでも大変です。したがって理解はメディアに頼らざるを得ません。ところが左派メディアは「海外で戦争ができる国になる」といった感情論が中心です。

 広く情報を伝えるメディアがこんな調子ならば、民主主義は複雑な問題に関しては有効に機能しないでしょう。

 世論を動かすのは数行のスローガンだ、といわれます。内容を表すのに数百行、数千行を要する課題もありますが、それが世論を動かすのは極めて難しいと思われます。本来それを補うのはメディアによる中立的な解説ですが、最初から賛否を決めた上での恣意的な「解説」では国民のまともな判断など期待しようもありません。

 ましてその解説が「精神論」に基くものであれば極端な認識の違い、無益な対立を招くだけでありましょう。誰しも戦争は避けたいものであり、そのためには現実の世界に立脚したまともな議論が必要です。情報の仲介者が政治的な意思を持ち、曲げて伝えることの危険性を改めて感じます。

 戦時中、朝日は国民を鼓舞し戦争へと向かわせました。そのとき大きな役割を果たしたのは単純な精神論であったと思われます。それが世論に対して有効であることを朝日は承知しているようです。世を動かすには冷静な議論より単純な感情論・精神論が有効であることを戦前からご存知のようです。さすが伝統ある朝日新聞です。