噛みつき評論 ブログ版

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トヨタ叩きへの疑問

2010-02-11 09:23:11 | Weblog
 トヨタがメディアの集中砲火を浴びているようです。トヨタの悪い面を取り上げるのが正義とばかりに、競い合って報道されている観があります。2月10日の朝日新聞朝刊の一面トップにも「プリウス 不具合認める」という見出しの批判記事が載っていますが、これはメディアの追求がとうとうトヨタに不具合を認めさせたという勝利宣言のようにも感じられます。

 その中に問題の核心部であるブレーキの不具合に対する具体的な説明があるのですが、それがどうも腑に落ちないのです。以下、引用します。

 『たとえば、時速20kmで走行中に減速を始めた場合、通常のABS装着車は氷盤などでタイヤが滑るABSが約0.4秒作動する。だが、新型プリウスはさらに0.06秒長い0.46秒の「空走感」を感じ、その分、制動距離も0.7m長くなるというデータがある』

 ここには二つの疑問点があります。まず時速20kmで0.06秒間走ればその距離は0.33mと小学生でもすぐ計算できます。なぜ0.7mとなるのか理解できません。もうひとつは通常のABSの作動時間である約0.4秒とプリウスの0.46秒の差が体感できるのかという問題です。0.06秒の差が、ブレーキで感じとることができるのでしょうか。また、通常のABSは「約」0.4秒と書かれていますが、「約」の範囲は0.06秒が含まれる程度のものかも検討する必要があると思います。

 通常のABS装着車で雪道を走行中、ブレーキをかけたときに一瞬減速感がなくなる経験は私にもあります。空走感を感じたという報告がいくつかあるそうですが、プリウスとの差が0.06秒だけなら、「空走感」は主として(約87%の時間を占める)ABSによるものという可能性を否定できません。

 これらのことは記事から感じた疑問を述べただけで、それ以上の根拠はありません。ただ記者は0.7mと書くとき、他の数値との整合性について注意を払わなかったのかという疑いが残ります。もし0.7mが正しくて、そこに記者の優れた頭脳だけが理解できるような難解な理由があるならば、凡人でも納得できるような説明を加えるべきでしょう

 「空走感」は問題の中心であり、0.7mか0.33mなのかは問題の本質にかかわることで、トップ報道するには新聞社自体が十分理解していることが重要です。十分な裏づけが求められる部分だと思います。極めて重要かつ微妙な部分であるということを理解していたのでしょうか。

 トヨタはフィーリングの問題だと釈明していましたが、それが適切かどうか、私にはわかりません。ただトヨタが不具合を認めたのは、マスコミの集中的批判に対し、これ以上弁解をすればさらに攻撃を招き、ブランドイメージを低下させると判断した可能性がないと言えるでしょうか。

 過去には雪印や不二家の事件など、マスコミへの対応の拙さのために理不尽とも言えるバッシングを受けたことがありました。不二家事件では床に落ちたチョコレートを再使用したと、でっちあげまで行われました。これらの事件から、泣く子とマスコミには勝てないという教訓が得られたことでしょう。

 プリウスのブレーキの問題はトヨタ一社だけでなく、日本の自動車産業の信頼性にもかかわる問題です。0.06秒を評価するという大変微妙な問題だけに、マスコミがよく理解もせずにトヨタを追い詰めたのであれば、これは重大な問題だと思います。

 メディアの報道はトヨタの対応の甘さや驕りを非難するものがほとんどのため(もっともらしい後講釈が続々と出てきますね)、トヨタ側に非があるように感じている人が多いと思います。それに対して、こういう可能性もあるのではないか、ということを示しただけであり、本当のところは知る由もありません。

 ただ記事内容に対する朝日新聞の理解能力と報道に対する責任感には強い疑いが残ります。理解する努力を十分せず、意味がよくわからないまま重大な問題を報道した可能性はないのでしょうか。

 (私は記事の数値をいつも検算しているわけではありません。たまたま0.06秒で0.7mではちょっとおかしいと感じただけです)