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無党派層の支持率は先行指標?

2010-02-08 09:44:17 | Weblog
無党派層の支持率は先行指標?

 2月7日、朝日と読売の世論調査の結果が発表され、いずれも内閣不支持率は支持率を上回りました。不支持率が支持率を上回ったことについて読売の解説は「不支持率が女性で50%(前回43%)、支持政党のない無党派層で61%(同55%)に上昇したことが主な要因だ」としています(女心と秋の空ですね)。逆に言うと男性の民主支持層の支持があまり変化ないことを示しています。

 一方、今夏の参院比例選での投票先では、読売調査は民主27%・自民22%(朝日は民主34%、自民27%)となっています。しかし無党派層では読売は民主7%に対し自民12%(朝日は民主16%、自民22%)と民主党への支持が大きく減少し、自民党より低くなっています。昨年の総選挙では無党派層が民主党に流れたことが勝敗を決めたといわれているくらいですから、この変化の大きさは注目に値すると思います。

 無党派層とは特定の政党に対する思い入れの感情が比較的少ない層と解釈できますから、その判断にはバイアス(偏向)が少ないと思われます。つまり冷静な観察者と見ることができます。少なくとも情緒的な観察者より信頼性が高いと思います。

 たいていの人は一度好きになると、その感情はしばらく持続して、その間は欠点が見えにくくなるという傾向があります(逆も真なりですが)。そうであるからこそ結婚に踏み切れるわけであり、また失敗もするのでしょう。政党に対する好みも例外ではないと思います。

 無党派層が短時間の観察で不支持にまわった後も、支持層が支持を続けるのはこのような感情的な理由があるものと思われます。一種の硬直性であり、自由な判断を妨げると共に鈍感さを与えるものと言えるでしょう。とすると無党派層の支持率は敏感な先行指標としての意味を持つ可能性があります。指標としての価値があるかは過去のデータを調べなければ分かりませんが、バイアスのない評価としてもっと注目されてもよいと思います。

 個人が好悪の情により判断が振れるのは仕方ないことですが、メディアがそうであってはいささか問題です。朝日の夕刊には「検証 昭和報道」が連載されていますが、2月5日の中国報道についての記事は、新聞社の「好み」が報道に影響を与えた例として、興味深いものです。

 1971年、朝日新聞は「日中復興」キャンペーンの一環として日本メディア初の周恩来首相との単独会見実現のため、林彪事件など微妙な情報の掲載にはブレーキがかけられたようだと記されています。また、当時の朝日社内には、中国に批判的な報道に対し「社論」を楯に露骨に圧力をかけたり、「親中派」「親米派」のレッテルを貼ったりする動きがあった、と書かれています。

 当時の朝日の「社論」は親中であり、これは文化大革命期に他紙やNHKが次々と中国から追放される中、朝日新聞ひとり中国に残り得たこととも符合します。他紙は中国の気に障ることも報道したのに対し、朝日だけは中国の指導に忠実であったわけです。日本の読者の購読料によって成り立つ新聞が、読者に事実を知らせるという本来の役割より外国の利益を重視するという奇妙なことが起きたわけです。

 会社には長く続いていく社風があります。朝日に限らず、メディアにも思想的な好みを含む社風が継続的に存在します。類は友を呼ぶということもあるでしょうが、古い社員から新しい社員へと受け継がれる部分が大きいと思われます。それは宗教が親から子に受け継がれていくのにも似て、そこに合理的な理由を見出すことは困難です。

 メディアも「好み」を持てば、冷静な判断が難しくなります。そして「好み」に沿って恣意的な報道を行えば判断の歪みは読者全体に広がります。メディアが強い「好み」を持つことは民主主義の基盤を崩すといっても過言ではないでしょう。

 (テーマから少々外れてしまいました。ご容赦を)