噛みつき評論 ブログ版

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二大政党制とポピュリズム

2010-01-11 09:56:01 | Weblog
 二大政党制は政党政治のひとつの理想とされてきました。二大政党制の下では政権交代が可能であり、そのため国民は政権選択の自由を手にすることができます。このこと自体は望ましいことであり、少なくとも一党独裁よりずっとましです。

 一方、民主政治はポピュリズム(衆愚政治)の影響を免れることができません。ポピュリズムと隣り合わせと言ってよいでしょう。しかし二大政党制はポピュリズムの影響をさらに強めることになると思われます。

 小選挙区制と二大政党制の下では政権獲得競争が激しくなる結果、選挙に勝つことが最大の目標になります。小沢幹事長の方針はそれを裏付けるものに見えます。有権者に訴えるものは目先の利益を実現するものが主になり、増税などの痛みを伴うものは忌避されます。昨年の民主党のマニフェストが好例です。長期的には重大な政府債務問題などは取り上げられません。

 外交や防衛など政治には長期的な視点が必要ですが、目先のものに引きずられやすくなります。選挙に勝つことと良い政治を行うことは決してイコールではありません。膨大な政府債務は長期的な政策が争点にならなかった結果であり、この傾向はさらに強くなそうです。マスコミと有権者は朝三暮四の故事に例えられます(帳尻を将来世代に頼るところがより無責任ですが)。

 選挙における競争が激しくなるほど有権者の歓心を買う政策が多くなり、長期的な政策は軽視される傾向が生まれるでしょう。これは目先の利益に釣られる有権者の問題でもあります。投票行動は報道の反映ですからマスコミの問題でもあります。二大政党制がうまく機能するためには両者の政治的成熟が条件となるでしょう。

 競争が必ずしも良い結果をもたらさなかった例として放送業界が挙げられます。ここでの競争の対象は視聴率です。視聴率を稼ぐには最大公約数の視聴者が面白おかしく見てもらえる番組を作るのが基本です。視聴率が優先されるほど他のものは犠牲になります。

 民放が邦楽やクラシックを放送することはまずありません。様々な文化を伝えることは大切なのですが、視聴者が少なければ、つまり「ゼニ」にならなければ彼らは取り上げません。少数の視聴者でも放送できる、また、見るのに少々しんどくても重要なことを報道できるところにNHKの存在理由があります。視聴率競争は迎合と番組の質を落とす方向により強く働くと思われます。海外に長く住んだ人が帰国して、日本のテレビの質の低さに驚いたという話はよく耳にします。

 自由競争は一般的に創意工夫を生み、生産性を向上させで社会を豊かにするものとされてきました。しかし政治と放送の世界では、激しい競争はポピュリズムへの傾斜をいっそう強めることになりかねません。

 そして政治と放送(マスコミ)は関連しています。マスコミが政治のポピュリズムを助長するという関係です。もしマスコミが読者・視聴者に迎合せず、目先の人気取り政策などを厳しく批判するならば、政治のポピュリズムは後退するでしょう。二大政党制がうまく機能するためにはマスコミの成熟、つまり外交や防衛、経済などに関する十分な見識が必須の条件となるでしょう。