噛みつき評論 ブログ版

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事故米転用事件で自殺者・・不安を広げる歪曲報道の犠牲者

2008-09-19 09:30:01 | Weblog
 農水省は事故米の流通先の375社の地域と社名を発表しましたが、そのうちの奈良県の米穀販売会社社長の自殺が報じられました。この事件は健康被害を全く出していないのに、ひとりの命を奪いました。まことに理不尽で、痛ましい出来事です。

 トマト(メタミドホスの基準値2ppm)や白菜(2ppm)ブロッコリー(1ppm)など、ふだん食べている食品による摂取が認められているメタミドホスの量に比べて事故米(0.05ppm)による摂取可能量が圧倒的に少ないことを報道せず、危険を針小棒大に報道したメディア各社は責任を免れるものではありません。

 マスコミ報道により広まった不安に対して、農水省はこれをしずめるためとして流通先375社を発表しましたが、これもまた到底理解できません。逆に不安をより具現化する効果があり、これはさらに風評被害を生み出すのではないでしょうか。農水省が不安を取り除くために何よりもすべきことは、健康には全く影響がないということを説明することでしょう。ポジティブリスト制度(*1)による暫定基準値0.01ppmの意味を詳しく説明すれば、十分可能だと思います。また、O157汚染事件のとき大臣が貝割れ大根を食べてみせましたが、事故米を食べる実演をされては如何でしょうか。

 9月17日の朝日新聞大阪版「声」には「事故米の焼酎、夫婦で飲んだ」という題で気持を綴っています。「今のところ体調に変化はないが心配だ」「どれだけの会社や人が経済的窮地に追い込まれ、健康被害の不安にさいなまれるのだろうか」。

 散々不安を煽っておいてその「成果」を声欄に出し、さらにその効果を増幅するのが朝日新聞の手口です。朝日の論調と反対のものはまず掲載されません。声欄は読者の声ではなく朝日の声だと思った方がよいでしょう。以前、文章の約40%を担当者の作文で書き換えられ、主題も変えられた経験をしました(詳細)。話がそれましたが、メディアの努力のおかげで、深刻な不安が広がっているのは事実だと思います。

 一方、鹿児島県酒造組合は風評被害を受けたとして国に損害賠償を求める訴訟を起こす方針を決めたそうです。安全な酒100万本を廃棄する方針とも言われていますが、もったいない話です。流通先の375社の発表で風評被害はさらに拡大すると思われます。

 国民の不安と経済的損失を招いたものが、日常摂取しているより少ない量のメタミドホスであったなら、実に愚かなことです。健康被害など起こるわけがありません。三笠フーズなどの違法行為と危険性の多少は別の問題であり、行為が悪質だからと言って危険性を誇張して報道するのは筋違いです。あるいはメディアも農水省も危険性の意味がよくわかっていないのでしょうか。どちらも当事者能力が強く疑われます。

(*1)ポジティブリスト制度(前コラムと一部重複します)
06年から実施された制度で米、麦、馬鈴薯、トマトなど食品ごとに、適用される農薬の残留基準を定め、それ以外の農薬については一律に0.01ppmという基準を適用するものです。メタミドホスは米の栽培に適用されないので一律基準の0.01ppm(暫定値)となります。従ってトマトでは2.0ppmでも安全とされるのに米では40分の1の0.05ppmで危険とされる不合理なことが生じます。

 つまり基準の5倍のメタミドホスを含む米を食べても、同じ量のトマト(基準値を含む)を食べた場合の40分の1のメタミドホスしか摂取したことになりません。各食品におけるメタミドホスの基準値は日本食品化学研究振興財団の(農薬等の基準値表)をご覧下さい。