噛みつき評論 ブログ版

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ゲルマニウムの危険性 健康食品信仰について

2007-06-18 11:55:12 | Weblog
 故松岡元農水相の光熱費騒ぎのおかげでゲルマニウム水がすっかり有名になった。ゲルマニウム調べてみた。

 グーグルで「ゲルマニウム」を検索すると約198000件ヒットした。500番目まで眺めたがゲルマニウム入り健康食品、ゲルマニウム温浴、ゲルマニウム装身具と、ほとんどは関連商品の販売サイトだ。ゲルマニウムと名がつけば売れると云わんばかりの有様である。

 一方、国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報によるとゲルマニウムの安全性の総合評価は次のとおりである。

・食品としての経口摂取はおそらく危険と思われる。
・経口摂取により末梢神経や尿路系の障害が起こり、死に至ることがある。
・日本では1988年10月、厚生省が動物試験の結果から、酸化ゲルマニウムを含有させた食品を継続的に摂取することを避けるよう注意喚起を行った。また、ゲルマニウムを食品の原料として使用する場合は、予めその長期健康影響などの安全性を確認して使用することとされている。

 またwikiによると、ゲルマニウムは貧血や疲れ、癌などによいとされているが、そのような効能、効果は医学的に証明されていない。ゲルマニウムを含む健康食品を摂取して死亡した例もあるそうだ。

 ゲルマニウム関連商品の販売資料は無数と言ってよいほどある。一部を調べた限りではその記述は化学や薬学の知識に裏付けられた信用できるものとは思えない。ただうちの商品はこの病気に有効である、と云うような薬事法に触れる記述は見あたらなかった。

 彼らは商品より、法律の勉強に熱心なのだろう。ゲルマニウムが実に広範な病気に有効であると"間接的"に思わせる記述は巧みである。業者は無害な有機ゲルマニウムであることを強調している例が多くあったが、その化学式を示したものは見あたらなかった。また説明の一部がステレオタイプなのは共通の原典の存在を窺わせる。

 他方、国立健康・栄養研究所の記述やwikiの記述は地味であるが、相応の知識を持った人が書いているのが分かる。文章を見ればその人の知識レベルは大体見当がつく。

 何故、多くの人が公的な機関よりも怪しい業者の説明の方を信用するのだろう。よく似た例にアガリクスがある。癌に効くということで藁をもつかむ人々の思いを食いものにしてきた業者の稼いだ金額は膨大である。

 アガリクスは国の研究による発がん性を示す決定的な資料の発表によって落ち目になった。これでも遅きに失した感がある。ゲルマニウムを長期摂取することが安全かどうか、確認されているのだろうか。効果も確認されず、危険性も分からないのであれば摂取は実に馬鹿げたことである。一方の、食品に対する極端な安全志向との矛盾をどう理解すればよいのだろうか。凡人には理解に苦しむことである。

 医薬品の場合は効果と長期も含めた安全性が厳しく求められるが、食品にはそのような規制はない。効果を直接うたわなくても、健康上の効能を示唆して販売する業者はやりたい放題である。業者に云われて効能を信じてしまった場合、少なくとも長期の安全性を確認してから購入すべきだ。

 コペンハーゲン大などのグループによる最近の23万人対象の調査によると、ビタミンA、同E、ベータカロテンを摂取していた人は、摂取していない人と比べ死亡率が約5%高かったという(2007年03月01日00時22分 朝日コム)。

 余分な出費が、少なくとも役に立っていなかったことは間違いなさそうだ。これらの成分は安全性が比較的確認されているものであるから、予想外の結果である。

 上記の国立健康・栄養研究所の発表はほとんど知られていない。メディアの無関心のためであろう。有用な情報を提供するのが寡占を許されているメディアの使命の筈だ。スキャンダルや殺人事件に血道をあげ、こちらは「鈍感力」では困る。不二家の10%でも取り上げれば、社会は効果の真偽や危険性の程度を検証する方向に動き、インチキ商売は淘汰されることになるだろう。