噛みつき評論 ブログ版

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有名人の納税倫理観

2007-06-02 22:35:23 | Weblog
 5月28日に武富士元会長の贈与税に関する文章を書いた。社会的な影響の大きい著名人の納税態度は社会に大きな影響を与える。彼らが税を逃れようとする行為は納税者の倫理観に悪影響をもたらし、税逃れを当然のことと思わせる。

 少し古いが「ハリー・ポッター」翻訳者松岡佑子氏の申告漏れ事件について述べる。

 報道によると、世界的ベストセラー「ハリー・ポッター」シリーズの日本語訳を手掛けた翻訳家、松岡祐子さん(62)が東京国税局の税務調査を受け、04年までの3年間に約35億円の申告漏れを指摘されていた。
 松岡さんはスイスに居住しているとして、日本での確定申告をしていなかったが、国税局から実質的に国内居住者と認定された。追徴税額は過少申告加算税を含め約7億円に上るという。

 わたしは松岡氏の見識を疑う。スイスでの納税を選択したのは恐らく節税のためであろう。日本の親たちから得た利益をわざわざスイスで納税するのに他に理由があるだろうか。この点に関して和田秀樹氏は売国奴と呼んでおられるのは納得がいく。

 静山社は「ハリー・ポッター」シリーズの人気に乗じ、書店に対して返品を認めない買取販売をやった。つまり在庫のリスクをすべて書店側に押付けた。なかなかの商売人である。会社も松岡氏個人も十分儲かったわけだ。そこに持ち上がったのがこの申告漏れである。

「ハリー・ポッター」は子供向きのベストセラーであり、作者と翻訳者は世間の注目を集めている。つまりその振る舞いは社会に影響がある公人に近いということだ。松岡氏の巨額の所得の多くは「ハリー・ポッター」シリーズがヒットしたこと、その翻訳権を幸運にも手に入れたことによるのであって、彼女自身が所得に見合うだけのすばらしい働きをした結果とは云えないだろう。その幸運なあり余るほどの所得から税の支払いを惜しむのは理解に苦しむ。
 数十億円を得ておきながら、なおも税という義務を少しでも免れようとする「志」はまるでシャイロックのようで、通帳残高の増加を人生最大の目的と心得ているかのようだ。

 このような申告漏れが、例えばシンガポールへの移住を図っていた村上世彰氏であったとすれば驚かない。しかしインテリで、さらに子供向けの本の翻訳者の行為であったことに驚いている。決してお若くはないし、世の中のことは概ねわかっている筈の年齢だけに深刻 だ。

 税金を日本に払うという「愛国心」を少しもお持ちでないようだ。ご自身を世界市民と思っておられるのかも知れないが、こんな事例をいくつも見せられると愛国教育なるものが必要だと主張する連中は勢いづくことになるだろう。しかし、そんなことをしなくとも、日本の社会から得た金に基づく税を外国に払うことが適切な行為かどうかは普通のモラルを持っているれば判断がつくことだ。税は国から受けるサービスの対価だ。5年間の 半端なスイス滞在で日本以上のサービスを受けていることはないだろう。

 童話の翻訳者として子供に見られて恥ずかしくない振舞いをしていただきたいものだ。