日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

シャケ弁がニジマス弁に?“ごった煮”食品表示ガイドラインの不可解

2014-02-04 | ニュース雑感
すいません、私事でガタガタしてしまい、更新がしばらくお留守になってしましました。書きたいネタもいろいろ溜まっているのですが、まずは食品表示ガイドラインがらみのお話を少々いたします。

消費者庁が昨年12月に公表したメニュー表示のガイドライン案について、外食業者や消費者団体などとの意見交換会が開かれたそうで、席上様々な要望が出されたそうです。細かい内容はどうでもいいのですが、要は消費者庁と言えどもやはりお役人さんの仕事はいわゆる“お役所仕事”に尽きるようです。意見交換会で話題に上った代表的な例である、シャケ弁当やすしネタのサーモンなどに使われることが多い「サーモントラウト」を「シャケ」ではなく「ニジマス」と表示せよ、のガイドにいきなり外食関係者が面食らったように、このガイドラインの目的がどこにあるのかの認識不足を感じさせられます。

そもそも今回の食品表示の問題は何が発端で何が問題視されているのか、その点をしっかりと認識する必要があるのではないでしょうか。目的は大きく分けて2点あります。ひとつは、高価なブランド食材を低価格の類似食材で代用することの非にスポットが当てられてられ、メニュー偽装として騒がれた高級食材の表示ルール化。黒豚とか、伊勢海老とか、但馬牛とかそういったブランド食材はどこまでその表示をすることが許されるのか、そこのガイドラインをしっかり作ることがポイントになります。

いまひとつは、昨今急速にクローズアップされてきた食の安全性の観点からの食材表示の厳正化です。これは言ってみれば、表示と違うものを食べさせられるリスク回避の問題です。例えば巷でよく言われている、「回転寿司のネタって、表示通りのものなんてほとんどない」などという話。「鯛」と言われて出されているネタが、確かに鯛の仲間ではあるもののその魚の顔を見たら誰も鯛だとは思わないものだったりというのが、本当にそれでいいのかという問題です。

少なくともこの2つのポイントについては、別々の議論によってガイドラインが設けられるべきものであろうと思われます。前者について言うなら、例えばメニュー偽装の定義をまずはしっかりおこない、その上で例えば「高価な食材を故意に安価なもので代用すること」とでも定義されるとするなら、「高価なもの=ブランド食材」を一覧にした上で個々の表示ルールをまず明確化するとか、あるいは新規ブランド食材の登録制度を設け登録をされた食材は定められた種類、あるいは産地や製法によるものに限定するなどの取り決めをおこなうなど、の制度整備がガイドラインの前に必要になるのではないでしょうか。

後者に関しては、まずは守るべき「安全性」の定義が明確になされる必要があり、例えば鯛の仲間をすべて「鯛」と表示することがその定義に照らして問題があるのかないのかその点をまずは明らかにすること。その上で表示ガイドラインが必要な食材は何であるのかを固め、食品素材安全表示ガイドラインを前述のブランド食材ガイドラインとは別に、作成する必要があるのではないかと思うのです。

「シャケ」と「ニジマス」の表記問題は、どの観点からその表示が必要なのかそれすら明らかにされずに、いきなり「サーモントラウト」は「ニジマス」と表示すべしと言われたも同然で、外食関係者が面食らうのも無理のない話なのです。九条ネギもシャケも成型肉もごった煮状態でガイドラインを作って、「思いつくのはこんなところです。こちらからは以上です」みたいな提示では、言われたからとりあえずガイドライン作りました状態のお役所仕事そのものであり、消費者に向くべき消費者庁のあるべき仕事とは到底思えない気がしております。

消費者庁様、そのあたりを今一度自己の使命に照らし考え直されてみてはいかがでしょうか。