日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

マック、ベネッセ、大塚家具…。GWはざまの同日掲載記事から読みとるべきこと

2015-05-08 | 経営
例年よりも長めのゴールデンウィークも終わりました。連休中に引き続きややニュース報道にはキレがなく、連休と土日のはざま特有のまったり感を実感する昨日今日あたりであります。

そんな中、GW中の新聞記事で個人的におもしろかったものがありました。2日土曜日の日経新聞紙面で、世間を騒がせた3つの企業の赤字報道が偶然か意図的か、揃って掲載されていたことです。具体的には、11面一般記事の「マクドナルド赤字145億円」「大塚家具最終赤字に」、13面トップのビジネスTODAY「ベネッセ上場来初の赤字」の3本。

同じ日に、しかも連休はざまの金曜組み誌面ですから時期的なものを勘案すれば、個人的には偶然と見るよりは意図的と考えた方がいいように思っています。編集サイドが今年の企業経営のテーマとして問題意識を感じているのは「信用」である、と訴えかけていると読みとれそうな紙面作りでありました。

皆さんご存じのように3社それぞれに「信用」失墜の原因は異なります。しかしながら、誌面に踊る「業績赤字」の文字の裏に共通してあるのは、間違いなく「信用」失墜ではあるのです。そして、その回復の難しさと、回復に向けた各社が描いている道筋は本当にそれでいいのかと、紙面は訴えか掛けているように私には思えました。

各社が不祥事発生で突きつけられたそれぞれのマネジメント・テーマは、マクドナルドは「食の安全」、ベネッセは「情報管理」、大塚家具は「ガバナンス」です。しかし、赤字解消への道筋は険しいというのが、この日の3社の記事に共通したテーマでもあります。

そして記事の言外に込められたものは、「顧客目線の欠如」でしょう。信用失墜からの回復のカギを握るものは顧客目線であり、3社は揃ってそれを欠如したが故の苦境に陥っているというのが、この日の3本ネタの真意であると私は受け取りました。

考えてみましょう。マクドナルドが中国での偽装鶏肉事件を起こした後にとった策は、タイへの工場移転。消費者が考えるマクドナルドの食の安全性への不安に対して、果たしてこの対応策がその答えになったでしょうか。消費者の答えがNOであるから、異物混入がことさらに問題視され、いまだに出口の見つからない業績下降が続いているのです。

そもそも論になりますが、マクドナルドは顧客目線で食の安全欠如により失われた信用をいかにして取り戻すべきなのかを正面から捉えて対応策を明示する必要があるということを、今の厳しい状況は物語っています。ビジネスモデルの大転換も視野に入れ、中国からタイへの工場移転では取り戻せなかった信用力をいかにして取り戻すのか、その抜本的対応策の明示が急がれるところであると思います。

ベネッセの対応での問題点は、利用者へのお詫び還元です。同社は不祥事発覚後おわびとして500円の割引チケットを利用者に配布しました。このやり方自体が利用者の求めているものと合致するのか、いささか疑問でありました。割引券と言うのは、利用があってはじめて利用者に得のあるもの。引き続きの利用を前提にお詫びをすると言うのは、利用者からすれば上から目線にしか映らないのです。さらに問題は、私の周辺でも多発した配布のダブり、しかも時期が大きくずれての二重配布。情報管理の甘さをさらに露呈してしまったかのような対応の甘さは、明らかなマイナス効果であったと言わざるを得ないでしkょう。

その後「脱DM」を宣言した同社ですが、これに至ってはまったく逃げの戦略にしか写りません。DMから一時期一歩引いて、ほとぼりが冷めればやおら再開する、そんな目論見が透けて見えるようですが、今の消費者はそんなに甘くないでしょう。正々堂々と消費者と相対して、どこをどう改めて安心感を増したのかを明確にしながら、企業スタンスを盛り込んだDMで理解の浸透をはかるぐらいの気持ちがなければ、行動で示さなければ、消費者の信用は戻ってこないと思うのです。

大塚家具の親子喧嘩は、露呈してしまったものは仕方がないかもしれません。しかし決着が着いたのなら、利用者目線での対応を急ぐべきではないのでしょうか。久美子社長は株主総会で株主の支持を得て経営権を確定したのであれば、御自身が口にしていた「これでノーサイド」を、一刻も早く形に示すべきなのです。利用者の多くが口にしているのは、「経営がもめている会社で家を形づくる家具など買いたくない」ということ。経営権を確保した上で、和解に動くことが今は何より大切なはずです。

真偽のほどは確かではありませんが一部報道では、前社長派の店長を左遷させ恐怖政治を始めたなどと書かれてしまっていますが、これとて前社長との和解姿勢が見えないからに他ならないのです。“おわびセール”で久美子をもじって935,000円の家具を販売して自己の勝利を顕示するのではなく、父である前社長を相談役に据える等して対話による和解への道を歩んでいる姿勢を広く外に示すことが、信頼回復への近道なのではないでしょうか。

不祥事発生による信用失墜問題の先にあるものは、すべて顧客目線の有無に帰結すると思うのです。日経新聞がGWのはざまに“たまたま”同じ日に取り上げた3つの赤字記事は、そんなことを強く物語っていると受け止めました。