日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

消費増税報道で忘れてはならない大切なこと

2014-04-01 | ニュース雑感
本日より消費税が8%に引き上げられました。

昨夜からこの関連のテレビのニュースは、なんとも違和感あるものでした。夜のNHKニュースでは、まずは駆け込み需要報道。スーパーの売り場で家庭用品品薄の状況レポです。それに続いては、レポーターによる居酒屋突撃レポート。「あとわずかで消費税が上がりますが、今の気分はいかがですか?」って妙な質問に、答える方が窮して「いや別に取り立ててないです…。今までどおり飲むと思います」。取材記者氏曰く「飲み屋街への影響は少ないようです」との結び。消費税がらみは以上で終了。いずれにしましても、増税に際しての公共メディアの報道姿勢としては首をかしげたくなるものでした。

消費税が上がるというと、世間はどうしても価格上昇の現象面にばかり目を奪われがちです。もちろん、国民一人ひとりの立場で生活に直結する値上げの話が気になるのはやむを得ないことではありますが、ワイドショーならともかく公共メディアのニュースまでが一緒になって、今回の消費増税の本質的な部分を忘れた報道ばかりに走ってしはいけません。増税の本質をしっかりと見る者に意識させる報道が必要だと思うのです。

では増税の本質とは何でしょう。それはすなわち増税の目的です。今回の消費増税の目的説明につながる記述が、財務省のホームページにあります。

Q なぜ所得税や法人税ではなく、消費税の引上げを行うのでしょうか?
A 今後、少子高齢化により、現役世代が急なスピードで減っていく一方で、高齢者は増えていきます。社会保険料など、現役世代の負担が既に年々高まりつつある中で、社会保障財源のために所得税や法人税の引上げを行えば、一層現役世代に負担が集中することとなります。特定の者に負担が集中せず、高齢者を含めて国民 全体で広く負担する消費税が、高齢化社会における社会保障の財源にふさわしいと考えられます。
(財務省ホームページ https://www.mof.go.jp/faq/seimu/04.htm より)

ここにもあるように、今回の消費増税の直接的な目的は、直間比率の調整であるとか、国家財政の立て直しだとか、ではなく、ズバリ「福祉財源の確保」なのです。そしてこのことは安倍政権が掲げる「社会保障と税の一体改革」のまさに肝部分であり、消費増税による「福祉財源の確保」がはかれないなら、増税はまやかしの国民相手のかっぱらいにすぎなかったいうことになるのです。

となると重要なことは、おカネに色をつけて、消費増税で確保された財源が福祉予算に対してどのような使われ方をするのかについて、国民はしっかりと監視する目と意識を持たなくてはいけないということ。そのためにはメディアは、「消費税が上がった⇒景気への影響はどうだ⇒10%への第二弾上げはどうする」という増税前と変わらぬ論理展開だけでは困るのです。「消費税は上がった⇒福祉財源はこうなった⇒福祉関連収支はどうか」という論理展開で、消費税上げが福祉財源として予定通り活用され、その流れの中で来年秋の第二弾10%上げの正当性を判断する必要があるのです。

つまりこうです。もし消費増税1年後に政府財務省が予定した福祉予算収支が未達であるとするなら、その理由はどこにあるのか。他予算への流用なのか、予想外の低い税収であったのか、それに対して慎重な検証が必要になるでしょう。そういった問題がもし発生するなら、来年10月の第二弾増税は景気動向に関係なく、当初の予定を一旦棚上げしないといけません。さもなくば、今回の増税が目的から考えて無意味な増税となり、この先政府の無策による「福祉財源確保」名目での当初目的達成のための再増税にもつながりかねないからです。

増税における消費動向を中心とした景気注視的視点と福祉財源における財務的視点は、コンサルティング手法的に言うところのいわゆる「虫の目」「鳥の目」というものの見方の話です。私は増税という国民生活にとって大変重要なテーマについて、導入前夜の公共メディアが消費現場レポートという「虫の目」という偏ったものの見方でネタを追いかけていることに非常に不満を感じた次第です。今回のような目的がはっきりした増税スタートのタイミングでは、少なくとも国民の立場からの増税に関する目的達否判断に向けどういう「鳥の目」的な視点が必要であるのか、報道の皮をかぶった民法ワイドショーはさておくとしても、せめて公共放送のNHKぐらいはその視点での報道を盛り込むことを忘れて欲しくなかったのです。

「虫の目」ばかりに流されてしまえば、増税の景気への影響は少ないかったから10%への増税問題なし、と短絡的な結論に導かれかねないリスクを負うことになります。「鳥の目」として、増税の結果として福祉財源はどうなったのか、その点こそが来年秋の第二弾増税に向けた重要な判断材料であることを忘れてはならないのです。