日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

東電の腐った組織風土は“稲盛式”に委ねるしかない

2013-07-30 | 経営
東京電力福島第一原発から汚染水が漏れ出していたことを、同社が即日公表せずに3日間隠していたことがまたまた世間で問題視されています。

これは今始まった問題ではなくて、東電を巡って様々な問題が起きるたびに問題視され続けているあまりに自分勝手な組織風土の問題なのですが、それが一向に改まっていないということなのでしょう。

汚染水流出の公表が遅れたことに関する会見で広瀬社長は、同社の福島第一事故以降の「安全文化」の浸透に対して問われ、それが「進んでいない」ことを認めるという辱しめを受けています。前経営陣が激しい批判にさらされた企業体質の改善を問われ続けてきた経営者として、これまで一体何を手掛けてきていたのでしょう。

気になるのは汚染水流失を知った19日という日付です。この日、東京電力は広瀬社長自らが会見で、「管理職に対して一律10万円の一時金支給」を発表しています。このことの是非はともかく私が感じたのは、もし同じ会見で汚染水流失の事実を公表したなら、一時金支給の話は見送るかあるいは潰されると思ったのではないかということです。

私は恐らく広瀬社長の判断材料としてこの問題は確実に絡んでいたと思います。このことは、完全な組織優先、利用者の安全二の次という企業文化が今も厳然と存在するという事実以外の何ものでなく、広瀬社長においては経営者としてあまりに情けない限りであると思わざるを得ないのです。

日航の再建を託された稲盛和夫氏は、何よりもまずはじめに「幹部社員を集め、1カ月間にわたり人間としての生き方や哲学を説いた」と言います。そして「あまりに基本的なことと反発も受けたが、それすら身についてなかった結果の倒産だと説き続け、次第に受け入れられた」ことで、一度死んだ日航は“親方日の丸”的企業文化を一掃することで、驚異の復活を遂げたのです。

もちろん、東電と日航を完全並列で比較することはできませんが、広瀬社長は経営者として組織風土の改変に対して一体何をやってきたのでしょうか。新潟県知事に柏崎刈羽原発の再稼働に向け協力を懇願した面談でも、「我々は利益なくしては存続できない民間企業であり」と前置きして理解を求めていましたが、そもそも東電は「利用者なくして、安全なくして存続できない企業」という理解が先立つべきではないのでしょうか。

今回分かったことは、広瀬社長ご自身が結局のところ東電文化ドップリの体質であり、今の考え方のままでは組織の先頭に立って企業風土を立て直していくことなど到底できないと思わざるを得ないということ。私は事故直後から東電の早期破綻処理の必要性を訴え続けていますが、結局は強制的に経営そのものを外部の手に委ねないことには東電の再生など到底あり得ないということ。今回の一件は改めてそのことを世間に示す形になったと思います。

破綻処理の問題はさておくとしても、東電は第三者の手を借りて稲盛氏が手掛けた日航再建の例を手本にしたフィロソフィーの徹底による“企業精神改革”による腐った組織風土の一掃に、早期に着手すべきことだけは確かであるでしょう。