日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

IGZOのヒットは、ドコモの非iPhone路線に端を発する日本再生への種となるか

2013-02-05 | 経営
シャープが5四半期ぶりの期間営業黒字を確保したとのニュースは、低迷久しい国内家電産業にわずかながら明るい兆しを感じさせるニュースでした。市場では再建への期待感を込めてか、株価も敏感に反応しているようです。

シャープの黒字化要因として、大幅なリストラの断行による支出削減と急激な円安傾向による収支の改善があったことは否めませんが、私は今回の四半期決算発表における同社の新型液晶パネル「IGZO(イグゾー)」を採用したスマートフォンの販売が好調だったという話に大きな関心を持ちました。

「IGZO(イグゾー)」はバッテリーの持ちが悪いというスマホの弱点を補おうという観点から開発され、通常の2倍程度の“電池モチ”を実現したという省消費電力の画期的製品です。「IGZO(イグゾー)」を搭載した同社のドコモ向け「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」はボーナス商戦を前にした昨年11月にリリースされ、BCNデーダによればiPhone5を抑えて6週連続販売首位を記録しているという、久々のヒット商品となりました。

これは大変なことなのです。少なくともこれまでなすすべなく連戦連敗で来たiPhoneに対して、価格面ではなく機能面での魅力で顧客を引き戻したということに大いなる意義を感じるところであります。このスマホ事業での好調を機に復活機運がうまく運ぶなら、シャープにとっても企業としての再生のキッカケをつかむ大きな種になるのではないかと思うのです。

そのためにまず今必要になるのはNTTドコモの協力体制でもあります。すなわち、ドコモが金輪際iPhoneを扱わないという決断をし、韓国製品のシェアも落としながら二人三脚で来た国内家電メーカー製品販売の後押しを強力に実行する必要があるでしょう。せっかく芽吹いた復活の種は、ドコモがiPhoneを扱うことでiPhoneのシェアが拡大し摘み取ってしまうことになりかねず、現状でドコモがiPhoneを扱うことは絶対にしてはならないのです。

シャープ関連のニュースでは他方で、この3月期の液晶事業の売上高を従前の予想比500億円減の8300億円、営業損益を同120億円悪化の1440億円の赤字にそれぞれ下方修正したという話も報じられています。これは、米アップル向けと見られる中小型液晶パネルの受注が1~3月期に想定を大きく下回ることを受けてのものであると。これをバッド・ニュースととるかグッド・ニュースととるかですが、私は国内家電メーカーの脱アップル路線化につなげられるならグッド・ニュースではないかと思っています。

“強い日本”の復権に向けては利益を一する国内企業、彼らの連携は基本です。円安化、脱デフレ、景気回復が期待される今、家電メーカー各社の再生は日本経済の回復に向けて必須のファクターであり、NTTドコモのような関連大手企業はもとより消費者も含め、国内景気回復という同一利益を共有するオールジャパン体制で国内家電メーカーを盛り上げていくことが重要なのです。予断ではありますが、この観点からは同じ家電大手のパナソニックはGE、IBMとの提携などすぐに破棄して、トヨタ、日産、ホンダ、富士通、NECらとの提携を検討するべきであると思います。

ようやく回復の兆しを見せてきた国内景気。これを本物にしていくことが我々の生活を安定させる大きな道筋でもあります。必要以上にナショナリズムの高揚を謳うつもりはありませんが、企業も消費者もオールジャパンの意識をもって動き始めた景気回復にできる限り前向きに協力していくことが必要なのではないかと思う次第です。

ちなみに私は昨年シャープ製の携帯電話に買い替え、これを愛用しております。