日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

AKBと連合赤軍、許されない組織管理とは

2013-02-04 | 経営
ネタがあまりに下世話なので悩みましたが、組織管理という専門領域からも問題を感じるのでやっぱり書いておきます、AKB丸坊主動画問題。

仮にすべて秋元康氏の仕掛けた茶番であったとしても、事務所のプロモーションの一環であったとしても、メディア露出度が高い人気アイドルを使ったこのような演出は見ている者に対して非常に不快感を与えるものであり、責任者たる秋元氏は今回の一連の騒ぎに対して何らかの謝罪をすべきではないのだろうかと思っています。

私の最大の不快感は、一連の騒ぎがあの連合赤軍を連想させる実にいやらしいねじまがった組織管理を感じさせるということにあります。昭和の犯罪史に残る大事件である連合赤軍事件は、革命戦士という名目の下、恋愛行為が発覚した者は使命に対する気持ちが甘いとして「総括」という名の自己批判を求められ、強制自虐行為を含むリンチによって死に至らしめたという実におぞましい出来事でありました。

AKBの恋愛禁止がこれと同じであると言うつもりはないのですが、あの動画における「AKBを辞めたくないからこれで許してください」的なことを発言するくだりは、実話に基づいて制作された映画「実録連合赤軍」で見た、恋愛発覚で「総括」を求められ自虐行為をもって命乞いをする女性兵士の姿とダブるものがあったのです。

要するに、相手が「失いたくないもの」を知った上でそれを奪うぞという脅しを暗黙のうちにチラつかせながら独裁的体制を構築すると言う組織管理。これは企業でも間々ある話で、景気悪化局面などで転職が難しくなっていることを背景に、「言うことを聞かないとクビ」という前例を見せることで残った従業員に無理難題を押し付け、企業経営が次第にブラック化していくというケースがそれにあたります。これはあってはいけないこと、組織が誤った方向に進んでしまうのです。

管理される側が「失いたくないもの」は、連合赤軍の場合は「命」であり、企業組織の場合は「職」であり、AKBの場合は「メンバー資格」なわけで、そのレベルの違いはあれど全く同じ「恐怖政治」というやってはいけない組織管理であるのです。「恐怖政治」は「失いたくないもの」を失う恐怖心と引き換えに組織への忠誠を誓わせる組織管理であり、前時代的な封建的コンプライアンス違反であると言っていいでしょう。

本人が言うとおり、今回のAKBの一件が本人の自発的な行為であるとしても、それを事務所のオフィシャルな媒体にのせて公表することはコンプライアンス違反の「恐怖政治」を「是」とする行為であり、あってはならないことでしょう。

また、仮に今回の件がすべて茶番であったとするなら、それこそグレーバックに白装束で坊主頭のメンバーが涙ながらに許しを乞う完璧な「恐怖政治」の演出を組織ぐるみでしていることであり、それを世間的に「是」とすることの悪影響を考えれば、許すことはできないと思うのです。

はじめから誰もがジョークであると分かるパロディは別です。例えば、北朝鮮の独裁制をパロディ化するのは許されても、それと同じような組織管理の実行やそれを世間一般に「是」と公言するような非パロディの演出はコンプライアンス違反であり、非難を受けてしかるべきものであると思うのです。

各国のニュースでなぜこの映像が取り上げられ、話題になっているのか、よく考えてみてください。彼らの目にこの映像が、「日本人はやはりおかしい。戦前の侵略戦争を企てたファシズム思想が国民の根底にあるのだ」と写ってもなんらおかしくないからではないのでしょうか。注目されているのは彼女の坊主姿ではなく、日本人の管理思想だと思うのです。そうやって考えると、場合によっては、日本の外交上にも悪影響を及ぼしかねない重大な問題でもあるのです。

茶番であってもコンプライアンス違反はコンプライアンス違反であり、茶番であろうとなかろうと、私は非常に不愉快です。秋元氏もしくは今回の件に係る責任者は、速やかに事の経緯を説明し謝罪する必要があるのではないでしょうか。