日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

各党政策委員様、マニフェストはロジカルにお願いします

2012-11-20 | その他あれこれ
衆議院が解散し、二大大手政党の民主党、自民党が国民的支持の決め手を欠くなかで、“第三極”をキーワードとした空前の新党ブームが巻き起こっています。現在各政党とも12月16日の投票日に向けマニフェスト(=選挙公約、みんなの党はアジェンダ)のとりまとめにおおわらわといった様子ですが、どうも巷では前回選挙ほどマニフェストに注目が集まらなくなっているムードがあるように思われます。

もちろんその最大の原因および責任は、政権を奪取しながら前回選挙時のマニフェストをほとんど守らなかった民主党にあるわけで、どうせ守られもしないものを一生懸命聞いてもしょうがないといったシラケムードが漂っているのではないかと思うのです。ならば、いっそマニフェストなんてやめてしまったらどうだ、と言いたくもなるところです。

前回の民主党のマニフェストにおける最大の公約違反は、「この先任期の4年間は、消費税増税はいたしません」であるでしょう。消費税の増税が正しいか間違っているかは別問題として、マニフェスト上説明がつかない増税を決めたわけで、結局のところマニフェストは「できるかどうか詳しいことは分からないけど、とりあえず耳障りの良いアメ玉を紙に書いて並べてみました」的な作文であったということが、もろくも明らかになってしまったのです。

消費税に関して言うなら、将来のビジョンなく状況把握すらできていない下で作られた民主党のマニフェストは認識が甘かった。甘すぎです。結局政権をとってみて、財政再建、福祉財源の確保という観点から消費増税は必要との判断に至って、簡単に公約は破棄されてしまったということです。消費税以外の問題でも同じこと。国家公務員の総人件費2割カットも、年間31万円の子供手当も、年金制度の一元化と最低月7万円の確保も、終わってみれば公約はみな絵に描いた餅でした。結局何も変わらなかった。

なぜこんなことが起きるのか。それは、民主党のマニフェストがビジョン設計に基づきしっかりと練られた戦略の下生み出されたマニフェストではなかったからに他なりません。一言で申し上げるなら、まったくもってロジカルでなかった。思いつきのアメ玉の寄せ集めに過ぎなかったのです。

マニフェストにビジョンが明示されているのなら(ミッションではなく近未来に向けたビジョンです)、震災等の予想不可能な環境の変化を理由に、ビジョン実現に向けた施策の変更・追加はあってしかるべきですが、結局出たとこ勝負のマニフェストではそんな説明すらできないのです。前回の失敗を繰り返さないために、各党にお願いしたいのはビジョンレスに「マニフェストを一人歩きはさせるな」と言うことです。そのためには、4年間と言う衆議院議員の任期の中で、日本をどう変え国民生活をどうするのかという明確なビジョンをまず掲げることが肝心です。

具体的な例をあげるなら、「10年後に○○になるために、この4年間は××は努力しますが△△はこの4年で基礎を作った上で次の中期計画に引き継ぎます。この間GDPは何パーセント増をめざし、国民一人あたりの所得は○パーセント増加を実現します。そのためには①○○②××③△△という政策を実行し、□□はやめさせます」といった具合に、ビジョンを明示しつつそこから導き出される形で納得性をもって個々の施策は明示されるべきだと思うのです。

このようなビジョンに裏打ちされロジカルに施策展開をするなら、仮に今回の消費税増税のような施策の一部変更があろうとも、ビジョン実現を動かさないために施策の見直しが必要なのだと言う説明がつくのなら、嘘つき呼ばわりをされることもなく国民の理解を得た上での柔軟な施策の見直しも可能になると思うのです。少なくとも、前回の民主党のようなビジョンレスな相互になんの脈絡もない単発的な、耳障りがいいだけのアメ玉マニフェストはもう金輪際お断りです。

まとめます。前回マニフェスト選挙の大失敗を受けて、政治が国民を同じようにだまし討ちにすることがないよう、各党はビジョンを明確にしロジカルに施策とのつながりを持たせた上でマニフェストを国民の前に提示すべきであると思います。